ふた鉢の「丁字草」が揃って咲いた。
この丁字草は富山に住む義姉から頂いてから、「うつろ庵」の庭でかれこれ二十年ちかくにもなろうか。ご無沙汰に打ちすぎているが、ご一家の皆さんも元気に過ごしているようなので、「便りの無いのが良い便り」と勝手な解釈をしているが、丁字草は毎年決まった時節になれば花を咲かせて、ご挨拶を欠かさぬ律儀者だ。時には電話やお手紙を出しなさいと、無言の訓えを頂く虚庵夫妻である。
横須賀から車を走らせて富山までドライブを楽しんだのも、懐かしい思い出だ。 ご夫妻に案内されて
五箇山の合掌造集落まで足を延し、初めて熊汁をご馳走になり、岩魚の鰭酒を酌んだのが、つい昨日の
ように想いだされる。あの時ドライバーをかって出てくれた長男は、小学生の息子の写真を添えた年賀状を下さるので、その成長ぶりが年月の推移をしる「よすが」でもある。
庭先の「丁字草」を株分けして下さったお土産を、新聞紙に包んで頂いて帰った。
丁字草の花が風に揺れれば、話しながら頻りに頷く義姉の仕草が偲ばれる。「うつろ庵」のいろいろな
草花の中でも、大切なふた鉢である。
花咲けば義姉(あね)おもほゆる朝(あした)かな
丁字草の株根分けする手を
ふた鉢の丁字草の花風にゆれて
義姉の仕草をおもふ今日かな
気がつけば永のご無沙汰いやさむと
手紙に添えにし丁字草かな
熊汁と岩魚のひれ酒恋しけれ
丁字草咲き城端しのびぬ
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