川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

孤独なボウリングと、アメリカのPTA事情少し

2008-05-25 18:39:39 | ひとが書いたもの
孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生
価格:¥ 7,140(税込)
発売日:2006-04
前から気になっていてやっと読めた。さすがにこれだけ大部になると、斜め読みのところも多いのだけれど、自分がやっていることについての背景情報として、押さえとかなきゃという部分はある。実はPTAについても、かなり言及がある本。


アメリカの社会でここ数十年、一貫して「市民参加」が減っているという。社会関係資本という、日本語としていまひとつピンとしない言葉で語られるのだけれど、この言葉をはじめて見る人は検索してみてください。結構ヒットします。ポイントは、我々の生活を支えるハードとしてのインフラ(電気、水道、ガスといったたぐい)ではなくて、人間関係、ゆるいつながりの集団、互助的な社会的なつながりを維持できる基盤をさす。ハードではなく、むしろソフト面。

英語でjoinerという言葉があるのだけれど、「参加したがり」である。このジョイナーが減っているということ。
ジョイナーは、職場でなにかインフォーマルな集まりがあると顔を出したがるし、地域でもそう。いろいろなところに顔を出して、「つながる」「参加する」ことを好む。PTAなんぞも、アメリカではそういうものとして捉えられている(日本の場合は「強制」の色があるから、どうかなあ)。

で、その原因として、非常に注意深く議論をしていて、たぶん背後には疫学っぽい発想もあって、因果パイのごときものを呈示する。
米国で社会関係資本が脆弱になってきた背景には、いろいろな要素があるけれど、そのうち、「時間、金銭面でプレッシャー」はそんなに効いておらず、居住環境(郊外化、スプロール現象)も、ちょぼちょぼ影響。
電子的な娯楽、特にテレビが娯楽を私事化したということはわりと重要で、しかし、それよりも最も重要なのは「世代変化」だそうだ。

実、米国の社会関係資本がもっと充実したのは、二度の大戦とその後の時代だそうな。
外敵があり、市民としての意識を養った世代が、今どんどん失われている、と。
とはいえ、社会関係資本のために、戦争しろ、とはいえないよね。

こういう話を聞いていると、日本でも同じ?
と思わなくはない。最近の若者が「公」に対する意識が低いと言われても(この場合、ぼくも「若者」の側)、そのような世代ではない。

そして、著者が言うように、時代はめぐり、社会関係資本資本が充実したり、それできつくなりすぎて、ほどけいったりする時期が交互にやってきて、今はまた、編み直す時期、というのも、同じなのかなあ、と。

PTAについての情報が、ところどころにあるので、まとめておく。
○20世紀の中盤、PTAはもっとも広まったコミュニティ組織だった。1960年代の初頭の調査で、非宗教的な組織の中で最大の会員数をほっこいてた。1960年前後には、子を持つ家庭の半分ほどが全国PTAに参加していた(アメリカのPTAはまず全国組織がある)。ところが、それをピークに激減し、1980年には二割くらいに落ち込んだ。
○組織率の低下は、全国組織に属さないPTO(Oは、オーガニゼーション)が各地に出来たことも多少は影響あるが、とういてこの落ち込みを説明できない。また、PTOの組織も脆弱化している。
○PTAのような教師と保護者が一緒に議論する組織が組織がある地域では、教育効果についてあきらかにメリットがある証拠がいくつもあがっている。

と書きかけて、まあ、こんなところかなあ、とやめておく。
PTAについて書かれた本ではないので、断片的な記述を拾って行ってもなんか散漫だ。

とにかく、強く興味をひかれたのは、アメリカのPTAの加入が二割程度で(90年代だけど)、むしろ、日本のPTAの方がはるかに加入が高いこと。
よく、子どもをアメリカの学校にかよわせた駐在員の話などを聞くと、PTA活動のことが出てくるけれど、それはむしろ全国組織としてのPTAではなくて、その学校固有の保護者組織であったり、学校支援組織であったり、PTOであったりすることの方が多いのだろう。

実際「PTAなんてなかったよ」なんて話はあまり聞かないので、PTAがなくても、保護者組織はあるところがほとんどなのだろうなあ、と想像しつつ、日本でよく誤解される「PTAがない=保護者組織がない」という「PTA=保護者組織の唯一無二のありよう」という幻想は、破ってほしいなあ。
って、もちろん、そういう主題の本ではないわけですが。

さらに逸脱するけれど、アメリカではPTA小説 やらコミック、少し書かれているみたいだ。「PTAランチ会殺人事件」とかおだやかじゃないなあ。ハーレクイン・ネクストってどんなレーベルなんでしょう。
Murder at the Pta LuncheonMurder at the Pta Luncheon
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Secret Confessions of the Applewood PTASecret Confessions of the Applewood PTA
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True Confessions of the Stratford Park Pta (Harlequin Next)True Confessions of the Stratford Park Pta (Harlequin Next)
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発売日:2006-10




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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
PutnamのBowling Aloneが訳されていたのですね。こ... (yutakashino)
2008-05-25 19:50:01
でも、子供の教育に関してSocial Capital(社会関係資本ですか訳は?)の重要性を述べた、以下のくだりには今も唸らせられます。

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Child development is powerfully shaped by social capital. Trust, networks, and norms of reciprocity within a child’s family, school, peer group, and larger community have far reaching effects on their opportunities and choices, educational achievement, and hence on their behaviour and development.
-----------------
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ありがとうございます。 (カワバタヒロト)
2008-05-25 21:24:14
引用部分は、邦訳の362ページ。参考までに。

こういう研究って、社会疫学と密接に関係しているものでもあって、ぼくはいまだ定見を持たず、です。
中心的興味とは言いがたいのですが、とはいえ、周辺に常にほの見えているテーマでもあって、また、カワグチとか読んでみるかもしれません。気分転換が必要な時に。

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こんにちは!初めて投稿しちゃいます。 (Rika Chan)
2008-05-26 14:23:11
うちは去年までスコットランドの現地校でしたが、PTAのゆる~い感じがよかったな、と特に懐かしく思う今日この頃ですよ(苦笑)活動といえば制服のリサイクルをスポーツ・ディにすることと、年に数回学校でディスコ(!)パーティーをやったり、不要物を集めてリサイクルをしてお金を集めて、年度末に子どもたちに必要なものを買ってあげる、といういたってSimpleなもの。そのせいかパーティーの時は「もういらないよ!」っていうくらいボランティアが自らケーキとか焼いて集まってくる。ようわからん地域がらみの行事もないしねー本当に善意の集まりって言う感じでした。それがいかに素敵なPTAか、今になってわかったわ~
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活動とその目的がしっかりと見えているわけですね。 (カワバタヒロト)
2008-05-26 20:28:41
そういうシンプルなのがいいですね。

スコットランドといえば、俊輔(というか、セッティック)ことしもやりましたねー。
ああいうところでローカルヒーローになっるのって、いいかもって思います。
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