無人島に生きる十六人 (新潮文庫) 価格:¥ 420(税込) 発売日:2003-06 |
北海道に旅行中の読書。椎名誠さんの「十六中年漂流記」という表現がぴったりくる「実話」なのだが、のっけから、北海道で読む必然性もあるのだと知った。
そのことは後においておいて……とにかく、すっごく面白かった!
書かれた時代背景を考えると、ひじょうにポップな文体で、ぐいぐい「実話」を引っ張ってくれる。
南太平洋での漁業調査に出た帆船がイカリを失って危険に陥り、なんとかホノルルにまでたどり着いて大補修。
しかし、またまた、航海中に暗礁にぶつかり、イカリを失い、全員脱出して、近くの無人島で漂着生活を始める、というもの。
水の確保、食料の確保などから始まって、無人島での救助待ちを「無駄時間」にしないため、若い船員に対して様々な「講義」を始めたり、ウミガメ牧場を作ってみたり、様々な面で、「15少年漂流記」を地でいくような物語。
「十五少年」が好きな息子に読ませたら、やはり旅行の間に読み終えて、やつにとって「文庫デビュー」になったのだった。
彼の感想。「島での生活がよくなってきて、さあ、これからってとこで、救助されちゃう」。まあ、それは史実だから仕方がないのだった。
で、これが北海道と関係していたというのは、実は、難破した船、龍睡丸は北千島開拓に乗り出した報效義会の船だったのだ。
「占守島と内地との連絡船として、島の人たちに、糧食その他、必要品を送り、島でとれた産物を、内地に運びだす任務の船であった」といきなり書いてある。
しかし、これが夏の間の任務なので、冬の間、船を遊ばせるのももったいない。
ということで、南太平洋の漁業調査に出かけたおりの遭難だったというわけ。
ちなみに、龍睡丸の船長で、本書の「語り手」となっている中川倉吉は、占守島開拓の第二次組。
いったん内地に戻ってから、占守島との連絡船の船長となった人物。
第一次開拓は、白瀬矗も参加して、ほとんどが命を落とす悲惨なものだったが、第二次はかなり軌道に乗っていたらしい。
ちなみに、ぼくはテレビ局員時代、ロシアの学術船で北千島からカムチャツカへの旅をしたことがあり、占守島には上陸てきなかったものの、遠巻きに眺めた思い出があって、なつかしい。
ずいぶん「上陸させろー」と交渉したものだが、ロシア人のコーディネーターは「オーケイ、問題ない」と請け合っておいて、直前に「許可が出ない」とダメだしをするのだった。(今思い出しても、疲れる交渉たった。)
で、今、非常に気になっているのは、龍睡丸を失って、占守の生活はだいじょうぶだったのか、ということ。
第二次世界大戦の終戦まで、「別所一家」一家族だけが住み続けた有名な事実があるのだが(ぼくの中ではすごく有有名ってだけなのだが)、来るはずの補給船が来ずにずいぶん困ったのではないか。
今、別所+北千島で検索すると、ふたつ本が出てくる。
1977年のものは、昔読んだ。
非常に優れた読み物だったと記憶する。
今は1999年のものが手に入りやすそうなので、読んでみるか。
別所二郎蔵は、占守で生まれ、終戦後もしばらく北千島に留まった、最後の「北千島の日本人」。
わが北千島記―占守島に生きた一庶民の記録 (1977年) 価格:¥ 1(税込) 発売日:1977-08 |
回想の北千島―別所二郎蔵随想録 価格:¥ 1,470(税込) 発売日:1999-09 |
そういう意味では隔てる海が意味をなさないのかもしれません、北千島と南洋。
内地のヒトが地面に縛り付けられているだけともいう。
千島探検録/龍睡丸漂流記 横田順彌・會津信吾監 ゆまに書房 シリーズ 出にっぽん記