川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

「12月の夏休み」をあらためて紹介します。

2012-06-10 19:23:29 | 自分の書いたもの
12月の夏休み12月の夏休み
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2012-06-08
これは個人的な思い入れがとても強い物語です。
1994年にはじめて、フィヨルドランドペンギンの取材をするためにニュージーランドに行ったのですが、それを皮切りに、たぶんこれまで10回くらいは渡航していると思います。

2006年には、子どもたちを二人ともつれて、南島を縦断して亜南極の島々にまで旅をしました。
2009-2010には、同じく子どもたちを二人つれて、半年間、クライストチャーチに住んでみました。子どもたちを小学校に放り込んで、ぼくは保護者のビザで入ったので、完全に子どもをダシに住ませてもらったかたちですね。

いつかニュージーランドを舞台に、小説を書きたいと思っていて、やっと形になったのが本書「12月の夏休み」です。装画は杉田比呂美さんですが、それだけではなく中にもたくさんのカットや、絵日記を描いてくださいました。感謝感謝。

章立ては、こんなかんじ。
*****
1.北の森で
2.丘から見おろす大きな町
3.辺銀博物館
4.南の森で
5.南端岬からさらに南へ

*****

10歳と7歳の兄妹が、アホウドリを追いかける自由奔放・身勝手な写真家の父親に頼まれた届け物をするために、南島を縦断し、はては亜南極の島にまで行ってしまう、ある意味、少年少女サバイバルもの(?)です。
そのあたり、小さな「15少年(実際には小さなきょうだいの)漂流記」にもなっています。
実体験というか、実踏(これ、先生用語。遠足とかの下見なんかを意味する)した場所を使って、話をつなげた感覚。

一応高学年からという括りになっていますが、読書好きなら中学年から平気でしょう。主人公は10歳・7歳ですし感情移入しやすいと思います。
また、ニュージーランドに興味がある方、子どもの「小さな冒険もの」が好きな方、子どもの頃に「15少年漂流記」にはまった方、などでしたら誰なりと。

本当に、この作品、世に出てうれしいなあ。
なお、地味ーに売られているはずなので、児童書の充実している大きめの書店でないとなかなか置いていないかもしれません。
その点、あしからず。


おまけ情報
なお、ニュージーランドは、「15少年」の島だというのは、二重の意味で「本当」です。
ジュール・ベルヌの原作で、主人公たちがニュージーランド・オークランドにあるクイーン通りに面したチェアマン校(通りは実際にあるけれど、学校はない。行ってみた)の生徒であるというのがひとつめ。

それに加えて、実は作中の南米近くの島という設定とは裏腹に、地理的な面でニュージランドの東に浮かぶチャタム島(ニュージーランド・亜南極世界遺産のひとつ)をモデルにしていることが、最近、日本の研究者によって明らかにされているんですね。

後者については、椎名誠さんが本を書いています。
『十五少年漂流記』への旅 (新潮選書)『十五少年漂流記』への旅 (新潮選書)
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2008-05


ちなはに、ニュージーランド人で「15少年漂流記」「二年間の休暇」を知っていた人に、今のところ会ったことがないのも特筆すべき点ですね。
チャタム島のことを言うと、すごく興味を示してくれる人がいるんですが。
チャタム島は、ニュージーランドでも、ちょっと特別な意味がある島なので。