⑦引き運動をする。
引き運動については、繁殖で多産させるためには、足腰を鍛えておく必要がある。
そのためには、引き運動や強制的な歩行装置を利用して歩かせる工夫が必要である。
多頭化により飼養頭数が増加したり、道路事情が車社会になったことで、引き運動の実施には厳しい条件下にある。
以前は、数頭飼いが大多数の頃は、夕方になると大人や子供たちが牛に牽かれながら、引き運動をする光景が多々見られたものである。
引き運動の途中で、行き付けの川があり、綺麗な川面に牛を入れると、流れの水を心ゆくまで飲んで、暫くはゆったりとして佇み素晴らしい光景であった。
その他にも川では、牛を洗ってやったり、削蹄の前日には、少しばかり長めに入川させて、蹄を柔らかくしておくなどもあった。
引き運動が日課となることで、人にも牛にも足腰の鍛錬やコミュニケーションの場となり、引き運動が、牛飼いの基本的な効果をもたらしていた。
現在のような多頭化による群飼いでは、その様な風情はなかなか見られなくなった。
引き運動が、物理的に不可能となったことで、牛の運動量を増やすために、飼育場に広めの運動スペースを設けて、餌場と給水場を最も距離のある位置に設置することで、広い運動スペースをフルに生かすことで、可能な限り歩数を増やすことに繋がる。
足腰を鍛えさせるために、牛に鞍を背負わせて、丸太などを牽引させているケースもあると聞く。
引き運動ならぬ牽き運動である。
写真は、昔懐かしい牛の引き出し風景(全国和牛登録協会編和牛百科図説;'70より)