牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

繁殖雌牛の育成(16)

2009-04-19 16:43:57 | 雌牛

⑦引き運動をする。
引き運動については、繁殖で多産させるためには、足腰を鍛えておく必要がある。
そのためには、引き運動や強制的な歩行装置を利用して歩かせる工夫が必要である。
多頭化により飼養頭数が増加したり、道路事情が車社会になったことで、引き運動の実施には厳しい条件下にある。
以前は、数頭飼いが大多数の頃は、夕方になると大人や子供たちが牛に牽かれながら、引き運動をする光景が多々見られたものである。
引き運動の途中で、行き付けの川があり、綺麗な川面に牛を入れると、流れの水を心ゆくまで飲んで、暫くはゆったりとして佇み素晴らしい光景であった。
その他にも川では、牛を洗ってやったり、削蹄の前日には、少しばかり長めに入川させて、蹄を柔らかくしておくなどもあった。
引き運動が日課となることで、人にも牛にも足腰の鍛錬やコミュニケーションの場となり、引き運動が、牛飼いの基本的な効果をもたらしていた。
現在のような多頭化による群飼いでは、その様な風情はなかなか見られなくなった。
引き運動が、物理的に不可能となったことで、牛の運動量を増やすために、飼育場に広めの運動スペースを設けて、餌場と給水場を最も距離のある位置に設置することで、広い運動スペースをフルに生かすことで、可能な限り歩数を増やすことに繋がる。
足腰を鍛えさせるために、牛に鞍を背負わせて、丸太などを牽引させているケースもあると聞く。
引き運動ならぬ牽き運動である。

写真は、昔懐かしい牛の引き出し風景(全国和牛登録協会編和牛百科図説;'70より)

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3 コメント

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放牧の利点 (Piyo)
2009-04-19 19:30:20
(・ω・)/

このブログで勉強させてもらう様になって随分と経ちますが、
母牛を放牧地で飼養する事が出来るのはかなり恵まれた環境だと考える様になりました。

今日も走り回る子牛につられて若い母牛が一緒に後を追いかけています。
削蹄や引き運動もした事がありませんが、
放牧地にいる母牛達は呼べば走って来るし、
鼻環の落ちた牛も何頭かいますが特に不便も感じない今の状況は、
なかなか良い牛飼い人生を送れている気がしています。

離島というハンデは抱えているものの、
放牧というメリットを生かしたやり方で今後もがんばっていきたいです。

(´∀`)/
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piyoさんへ (kuroiusi)
2009-04-20 07:14:26
和牛繁殖経営者は、出来ることなら放牧管理したいと思っている畜主は少なくないと思います。
本州などでは、牧野の面積や、牧野の造成や管理にかなりの経費と技術が伴うために、なかなか普及していません。
放牧による繁殖牛の管理は、世界的な食糧難時代が到来するならば、和牛が将来生き残るための大きなポイントになると考えられています。
牛は、本来牧野がフランチャイズであったワケです。
牛が健康的に生息する諸々の条件を整えています。
piyoさんが当然のように自覚されているように、先ず牛たちにとっては、何ら不自由を感じていないのではないでしょうか。
これまでにも常に素晴らしい牛飼いをされていると思っていました。
近くであれば、拝見させて頂き勉強させて頂きたいと思っていますが、なかなか実現しそうにありません。
これからは、放牧管理の長所について、機会を捉えて随時教えて頂けることを切にお願いします。
全国に和牛繁殖放牧友の会成るを結成して、管理のノウハウの情報交換をされればさらに実益が得られるのではないでしょうか。
このシリーズでの子牛管理なども放牧下では、大部不要な管理となります。

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んー (牧草)
2009-04-21 04:27:59
いつも拝見させて勉強させて頂いております。自分は牛がとても大好きです。繁殖ですが、エサを食べ終え座るとまず大きく鼻息を吐きます。その瞬間が自分にはたまりません。ん~食った、感が。そして反芻。頭数は少ないですが、毎日ブラッシングをして気持ち良ければしっぽを上げ、顎を上げて掻いてくれと言われれば気持ちいいかぁとばかりに掻いてやります。人間と牛と、コミニュケーションは大事だと思っています。引き運動、自分はとても大事だと思います。産業動物ですが元を辿れば野生ですよね。自分の牛しかわかりませんが、本能で生きている動物には叶わず、日々勉強させてもらっています。所で、度々コメントを拝見させて頂いていますが、コメント書いてる方は牛飼いの神様のような気がします。
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