牛たちが何やら、深刻な談義を始めた。
耳を潜めて聞き澄ましてみると、近々食い扶持桶が底を突くというのである。
昨日、京都で「畜産システム研究会」があり、飛び込みでその末席に加えて貰った。
北海道から九州までの50名足らずの参加者であったが、大学の研究者や独立行政法人中央農業総合研究センターの研究官、自治体の研究者、大型畜産経営者、複合産業経営者、中小規模の酪農及び肥育生産者、畜産コンサルタント、消費者サイドの関係者、畜産関連情報誌の記者など実にバラエティーに富んだ集まりであった。
同研究会は、今回で22回を数えるシンポジュームで主題は、最近の畜産情勢を反映したもので「自給飼料や地場資源を用いた乳肉生産の可能性」であったが、諸に輸入飼料が底を突きそうだということが、根底にあった。
5名のパネラーにより、主題に関連の研究や経営内容の紹介があった。
現実的な話題としては、飼料稲の栽培とその活用法や産業副産物などの飼料化による乳肉生産経営等が紹介された。
ユニークな経営としては、京都府京丹後市で土木建設業の傍ら牧草生産と放牧を取り入れた肉用牛の繁殖60頭と肥育70頭、クルマエビの養殖、塩の精製と販売を手掛けた複合経営があった。
この経営には、それぞれが大規模ではないが、その労力は、同じメンバーが当たっているため、それぞれの経営間に血脈が通っているようで、将来性や夢が持てるような経営内容であった。
この肉用牛の飼養はJAS認定を受けており、ユニークと言えば、10頭足らずの日本短角種を放牧で子牛を生産して、サシは入らないが美味しいというファンがいるので、肥育しているといい独特な畜産経営でもある。
この経営の形は既に60年代から継続され、土建屋さんが牛が好きで牛飼いになり、牛には塩が不可欠と知るや塩田を作り、山を生かせるのに放牧に強い牛はいないかと東北岩手に出掛け、ダニに強く山で肥る日本短角種と出合い、冬場の草作りに土建業の技術で草地を開くという、つまり経営者のロマンが脈々と息づいた複合経営なのだそうである。