染織工房豆ブログ

染織工房「豆」の日々の記録

皮革製品のメンテナンス

2012年09月20日 06時27分15秒 | 布メンテナンス
皮革製品は昔から水にぬれちゃいけないと言われていますが,毎日持ち歩く様な鞄でそれは無理でしょうと思う人は多いはずです。
気を付けていても。知らぬ間に水のシミがあったり擦ったりしてしまう物。
そんな事は当たり前なので,気にしない方もおられますが,長く使うためには見た目もなんとかして,おきたい物です。まともな鞄屋さん等では、水等によるシミ落しは無理ですよって普通言われてしまいます。当然です。

そこで,染織家による、いい加減の鞄のメンテナンス。
画像みたいにくたびれつつある鞄の水垢落としです。実際にはシミです。水が付いて、そのまま乾いてリング上に染み付いてしまった物です。これを落としたいと思います。革の素材はタンニンなめしです。要するに表面のコーティングがされていないものになります。

 

写真が奇麗に撮れてあまりシミが無い様ですが,結構あるんです。
これを全体に水拭きします。水拭きした時にはっきりと解るシミは、ほぼ取れないと理解して構いません。



痛んでいる所はすぐに水がしみ込みます。
何故全体を濡らすかと言うと,水じみは水滴の大きさだけぬれています。水は乾く時に乾いている方に向かって行く性質があるので,水滴の外側へ向かって乾きます。そうすると中の色素等も一緒に持って行くので,リング状にしみが出来るわけです。
これをまた全体を濡らす事で,均一に色素を行き渡らせようとしている訳です。

余談ですが,この素材に染色をしようとすると痛んでる所がかなり濃く染まります。するとものすごく斑になります。それはそれで面白いのだけれど,布と同じく痛んでいる物の染めは難しいんですね。



このまま陰干しして,一晩置いときます。

乾きましたら,オイルを塗ります。
僕はオイルに蜜蝋が入った物を塗ります。色がついていない皮革専用オイルを使いましょう。オイルを塗らないと革が固くなってバキバキになります。そうなると製品としての死を意味します。交換が必要になる訳です。





正直申し上げて,これはオイル塗って色が濃くなったからシミが消えたように見えるんじゃないのって言われれば,そうかもしれません。
ただ、色を染めてある物は,多少色が復活するので,水の表面張力により,中の色素を表に出しているんじゃないかとも思われます。色あせた感じが無くなりますので色が復活したようにも見えます。

しかしながら,これくらいになるとシミも消えません。

 


それでも細かな傷は見えなくなるので,全体が落ちついた感じになります。
表面の銀面が取れたり削られたりしていなければ、オイルを塗るだけで解らなくなります。気がついたらオイルを塗るようにするだけでもいいのですが,水垢なんかは水拭きしないと取れないので,時々はこういう事をした方がいいかと思います。

ちなみにこの鞄 15年程前に購入した物で,染めていないまっさらな鞄でした。よく使い出してからは7年くらい経ちます。

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