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所在

2010-08-10 07:22:09 | Weblog
日を追うごとに、所在が確認できない高齢者の数が増えている。100歳以上に限ってこうなのだから、80代、90代まで調べたとしたら、どんな数になるのだろう。

それぞれの家庭で、外からうかがい知れない事情があるのだろう。が、面会を申し出ても家庭に拒否された、などと聞くと、心が沈む。

長寿国ニッポンが、暗く長い影も引きずっていることに思い至る。映画「男はつらいよ」の寅さんも、さしずめ「所在不明者」である。

旅から旅の浮草稼業で、たまたま電話を入れると、決まって「お兄ちゃん、どこにいるのよ」と妹にしかられる。お気楽な主人公である。

老いた寅さんが、旅先の寺の境内で昼寝をしている。そのうち、息が細くなり大往生。監督が思い描いた幸せな始末だそうだが、実際は違った。

寅さん役の渥美清さんの死で、シリーズは途切れた。映画と現実は違う。愚かな寅さんを、妹はけなげなに思いやる。

電話口で必ず説教が始まり、観客の失笑を誘う。「どこにいるの、みんな心配しているのよ。待ってるのよ」。

作り話の映画に出てくるせりふだが、昨今は心にずしんと響く。

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