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家族

2014-02-06 08:54:17 | Weblog
今なら「家庭内暴力を容認している」と苦情が出るかもしれぬ。それほど向田邦子さん脚本のドラマ「寺内貫太郎一家」にはおやじがせがれを殴る場面がひんぱんに出てくる。

放送開始は1974年(昭和49年)年1月16日。東京・谷中の石材店の三世代同居家族を描いた。小林亜星さんが演じた無骨で口下手な貫太郎は向田さんの父親がモデルだという。

ホームドラマのコツとして向田さんは登場人物が集まる茶の間を「狭くて小汚い日本式の畳の部屋にする」と書いている。モダンな洋室では人物が泣いても笑っても絵空事になってしまうという。

貫太郎一家の茶の間も汚い。「ホームドラマ」を書きにくい時代になっている。大家族という設定自体、三世代世帯が一割もない現代では成立しにくい。ドラマから40年。

日本人は清潔で広めのリビングルームを手に入れたかもしれぬが、引き換え狭い茶の間にひしめく家族の「温かみ」を失いつつある。昔は良かったという気はない。

それでも独居世帯が三割という今の日本の家族の光景は寒い。うちは違うという人は恵まれている。「欠点はあるが、気のおけないだけいいや、と言った家族。
小汚い茶の間は気楽な人生の休息時として一番ふさわしい」。

向田さんはそう言ったが、そこにいるのは年老いた母親一人というのは珍しくないのだ。これでは喜劇は書けない。