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雑録+/ 80年代、キュアーのレコード、メンバー写真等のビジュアルが醸し出す、陰鬱で耽美的なイメージは魅惑的だった。(当時みんなが聴いたはずの)ヒット曲「ラヴ・キャッツ」「キャタピラー」といったシングルも好きだった。
だが、自分にはJAPANという人生最大の最重要バンドが1981年にはすでにココロの中心に座していたので、キュアーに夢中になれるお金も、精神的余地や時間的余裕もなかった。自分の長い音楽体験のなかで、キュアーは早々から存在を知りながらタイミング悪く、40数年の中で何度もすれ違ってきた。
自分は、怒涛の80年代〜90年代前半の人生を駆け抜け、90年代後半になって東京に再復帰して、やっと正気を取り戻して・・それまで秘密のヴェールに包まれていたキュアーの音楽を一枚一枚振り返る形で聴いてきた。「フェイス」「ポルノグラフィー」etc。だが、神秘的だったはずのキュアーの音楽はさほど大した音楽には感じられなかった。それまでの自分は音楽ライターが書いた文章を読み続けていた。彼らライターたちが描いたキュアーの音楽の語り口は素晴らしく神秘的で、もし自分がキュアーを聴いたらどんなに陶酔できるだろうか・・とうっとりした。そのイメージに酔いまくっていたのだった。
しかし、現実に聴いたキュアーの音楽はもっとロック寄りのもので、期待している音ではなかった。
そのライターの表現によって私が育ててしまったイメージの方がはるかに素晴らしく、現実の音と乖離していた。
それから数十年。このあいだには不定期、何年に一回かずつ「キュアー克服月間」を設けて、猛特訓でキュアーを聴いてきた。その分好きな曲はいくつも出来たが、通して聴けるほど好きなアルバムは無かった。ある意味強要されてるみたいで苦行だったこともある。どうもしっくりこないまま、私は50代の坂をくだり、人生の終盤にまで来てしまった。ああ、もうこの世でロバート・スミスと『スミスさん、やっとわかりましたよ!あなたの音楽が!』と泣きながら抱擁し合うことが出来ぬまま、『Let'sGoTo来世!』という流れなんだろうか?・・と諦め出した最近だった。
キュアーが昨年に新譜を出したことを知ったのは、この2025年4月のこと。
新譜はどうやら2024年11月に発表されたようで、それは2008年の「4:13 Dream」というアルバムから16年目のことらしい。
(「4:13 Dream」ってやつも自分のi-tunesに確か入っていたな、と思うが、ろくに聴いてこれなかった1枚だな。。。)
この最新作「Songs of a Lost World」を知ったきっかけは、新譜に収録された「アローン」というシングル。アルバムトップの曲、かつシングルカットされたこの曲。ロバート・スミスいわく、この一曲がアルバムにしてみようと決意した曲だという。
自分が聴いたのはフォーテットがリミックスしたバージョンだった。キュアーとすれ違ってきた数十年後の今、何かやっとうまく歯車が合いそうな気配、接触がもてそうなまえぶれを感じた。それは別シングル「ア・フラジール・スィング」のリミックスにも共通するニュアンス。シングル「ア・フラジール・スィング」には「 RS24 Remix」というヴァージョンが収録されている。RS、つまりロバート・スミス自身が関与した2024年リミックスが入っている。これもフォーテットのリミックスと並び、一聴してすぐ好きになった。
そこで勢い付いた私は、原曲へ行ってみよう!と8曲入り最新作「Songs of a Lost World」へ挑戦。←ココにたどり着いたのが数日前(4月26日)のこと。
しかし、リミックスではない原曲はやはりロック色が強く、ロック嫌いな私にはなかなかてごわい。『・・男は最後になって、やっと今世でロバート・スミスと抱擁し合うこととなりました。おしまい。』といううまくハッピーなエンディングに早々はならなかった。
ただ、このヤマに登り出したのは数日前だからはっきりしたことは言えないが、それでも今までより強い手ごたえを感じている。
半世紀近く断続的につづいてきたキュアーのバンド活動も、これで終わりではないかと言われている。実に息の長いことだが、そんな長く音楽活動を生きながえられたのはロバート・スミス氏そのもののチカラが第一だろう。だが、別側面では、こうしたリミックス等ダンス/ハウス/アンビエントへのアプローチがあったり、振れ幅の広さや介入の余地あったのも一因と思える。活動期間が長いことが決して良いわけじゃないが、例えばこれがJAPANやバウハウスだったらこんなワザは不可能だろう。
お前はキュアーをわかっていない、お前にキュアーは理解できない。ロック寄りの人にはよくこういう論調の人が多い。
たしかに、私にはキュアーの深い知識がない。だが、そもそも知識で音楽を聴くつもりはない。そんな私が今フラフラしたフィーリングで「アローン」「ア・フラジール・スィング」等のリミックスに出会った。知識はないが、今「Songs of a Lost World」にビビッと来ている。
■The Cure「A Fragile Thing (RS24 Remix)」 2024■
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