男鹿半島には、八俣の大蛇(やまたのおろち)や八郎太郎とは別に、
水神としての龍が棲んでいる。
「八郎潟」の北方2kmほどのところに蓮沼がある。
菅江真澄「男鹿の春風」には、正体不明のものが一夜にして、
この沼に橋を架けたから、橋沼とよばれていると書かれているから、
以前は橋沼だったのだろう。 この沼のほとりに蓮沼神社がある。
この神社の主祭神を八龍大神(八郎太郎)と天神様(菅原道真)と
ほとんどの人が思っているようであるが、しかし、「湖岸神祇信仰と祭礼」には
次のようなことが述べられている。
『八龍大神』を祀っているのは日蓮宗関係のグループで、
潟の干拓で棲家を失う『八龍大神』のために適地を求めて
この沼に白羽の矢を立てたものであることが分かった。
もともとこの神社にはこの沼の主の『竜神』が祀られていたが、
明治頃になって八郎潟の潟畔近くに鎮座(ちんざ)していた『天神様』を
その堂守がこゝに合祀したものである。
もともとは、竜神の神道名化した『アメノミクマリの神(天水分神)』が祀られていたという。
アメノミクマリの神は、イザナギとイザナミの孫にあたる。
日本の宗教の歴史そのもののように、
庇(ひさし)を貸して、母屋を取られた形である。
日本古来の蛇信仰
↓
八俣の大蛇(やまたのおろち)。神道系
↓
八龍大神(八郎太郎)。仏教系
水神にかぎらず、このような流れに、流行の神様・仏様が加わって、
複雑に絡み合った現在の形ができあがっている。
蓮沼にかぎらず、古来からの水神は、
上書きされているために明瞭な形をとってはいないけれど、
男鹿半島のなかにたくさんあるといえる。
参考:
湖岸神祇信仰と祭礼
新野直吉
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