かえるネット木津川南

大阪市南西部で活動する日本共産党の青年後援会のブログです。

日本経済の長期停滞・・・活路をどこに求めるか3

2010-12-23 07:29:50 | 論文紹介

2.長期経済停滞の実態

・GDP成長率にみる日本経済の動向

90年代以降の日本経済の長期停滞は、GDP(国内総生産)の推移に示される。GDP成長率は93年に名目、実質でそれぞれマイナス0.1%、マイナス0.5%と、74年以来のマイナスを記録する。その後、成長率は97~98年の金融恐慌、01年のITバブル崩壊などによって、たびたびマイナスを記録しながら長期的に低迷し、とくに08年度、09年度にはサブプライム金融危機の影響で名目、実質ともに大きく落ち込んでいる。途中、04年~07年にかけては、輸出の増大によってわずかにプラス成長を記録したが、その伸び率は名目でわずか1%前後でしかない。

 成長率の低迷は、直ちに経済の停滞や国民生活の悪化を示すとは限らない。逆に成長率が上昇しても、それが国民生活の向上を意味しないこともある。雇用なき景気拡大、好況感なき景気拡大と呼ばれるものがそれである。だが、90年代以降の20年にも及ぶ成長率の低迷は、失業率の上昇や所得の減少といった国民生活の悪化をともなうものであった。このことは、今日の日本経済の停滞を、単純にサブプライム金融危機によるものだと片付けるわけにはいかないことを意味する。

国民生活の悪化は、内需不足を引き起こし、日本経済を長期に停滞させてきた。需給動向を示すGDPギャップは、90年代を通じて徐々に需要不足を意味するマイナス傾向を示し始め、現在でも政府の統計では金額にして、約20兆円から30兆円の需要不足状態にあるとされている。

・日本経済の地殻変動

また停滞は、単に内需の不足だけではなく、成長構造の変容をともなっている。すなわち、輸出の拡大が国内の設備投資を拡大し、それが雇用と所得の増大、消費の拡大を促すといった成長構造が崩れ始め、輸出の増大が必ずしも投資、雇用に直結しない構造に変容し始めているということである。

 90年代になると輸出が93年度、98年度をのぞいて前年比で高い伸びを示す一方で、同じ時期に設備投資は95~97年度にかけて増大しただけで、あとはすべてマイナスを記録している。このように、停滞は海外市場の急変による突発的要素や循環的な要素を持ちながらも、慢性的な需要不足と成長構造の変容という日本の経済構造の地殻変動をともなっていると考えられる。

設備投資は、90年代を通じて停滞した後、03年~07年度にかけて輸出が毎年10%前後で増大したことをうけてプラスを記録したが、08年度にはマイナス6.8%、09年度にはマイナス15.3%と激しく落ち込んでいる。設備投資の停滞は、雇用に影響を与える。

完全失業率は、94年に統計開始以来はじめての3%を超え、98年には4%を超え、01年夏には5%を超え、09年7月には統計開始以来最悪の5.7%を記録している(総務省「労働力調査」)。また先の『産業構造ビジョン2010』でも、現在の潜在的な失業者数を905万人(潜在失業率13.7%)と推計している。このように雇用環境は90年代に入って短期間に急激に悪化している。

失業率は04年の人手不足から一旦4%台に下落する。だが、これは04年に解禁された製造業の派遣労働を契機にした、非正規労働者の雇用増大によるものであって、正規労働者は逆に減少している。また08年以降は、派遣労働者も削減され、それとともに失業率は再び上昇傾向をしめし、有効求人倍率も長期にわたって低迷し続けている。

失業率の上昇は企業倒産の増大をも反映している。企業倒産件数は01年の1万9164件をピークに05年の1万2998件まで減少傾向を示したが、その後再び増大し08年には1万5646件に上っている(東京商工リサーチ『2009年企業倒産白書』)。

 また失業率の上昇とともに、生活保護世帯も増大し、95年度を底に生活保護受給世帯、受給者数ともに増大し続けている。その数は、09年度ではそれぞれ約127万世帯、約176万人に達している。

雇用環境の悪化とともに、雇用者報酬も減少し続けている。雇用者報酬の伸び率は、94年頃から急激に低下し始め、98年以降はほぼ慢性的にマイナスを記録している。つまり企業の設備投資が増大しても、雇用者報酬が伸びないどころか、減少しているということである。そしてこのような長期にわたる雇用環境の悪化、個人所得の減少が、家計の消費を冷え込ませ、内需の深刻な悪化を招いているのである。

家計の消費支出は、95年頃から今日に至るまではほぼ一貫して減少し続けている(総務省「家計調査報告」)。また消費支出と並んで家計の貯蓄率も低下し続けている。貯蓄率は76年の23.2%をピークに低下し続け、00年にはついに10%を割り込み、08年には2.3%にまで低下している。これは消費が増大したからではなく、可処分所得の減少によって貯蓄に回す分が減少していることによる。

消費が停滞している以上、当然ながら諸物価も下落する。消費者物価は95年を起点に、企業物価は92年を起点に下落し始め、現在も下落し続けている。また、このようなデフレと呼ばれるような長期の物価下落のために、実質成長率が名目成長率を上回るという名実逆転現象が長期にわたって続いている。

以上のような内需の停滞は、企業の内需離れをもたらす。それは、いっそうの輸出強化と生産現場の海外移転といった動きとなって現れる。とくに2000年代に入ってから、日本企業の中国での現地法人設立が急増し、08年度現在で日本企業の現地法人全体に占める中国での比率は29.1%に達している(経済産業省「平成21年度海外事業活動基本調査」)。また生産現場の海外移転は、国内工場の閉鎖による地方経済の衰退や生産現場の海外移転成功した企業とそれ以外の企業の収益格差など、国内経済の停滞や歪みを拡大する。

さらに内需の停滞は税収の減収をもたらし、無駄遣いなどの失政とあいまって国家財政の悪化をもたらしている。国の税収は90年度に戦後最高の約60.1兆円に達した後減少し始め、04年度から07年度にかけて増大傾向を示したが、08年度からは再び大幅な減少に転じている。地方税収もほぼ同じような傾向を示している。このような税収減とともに、国債発行残高も増大し続け、その額は09年度末には約600兆円に達し、その対GDP比率も122.2%と過去最高を記録している。国の債務の増大とともに、所得に占める租税と社会保険料などの負担割合を示す国民負担率も上昇し続け、80年代に30%台に達した後、08年には40%台に達している。

このように、国民生活はもとより、経済も財政も窮地に陥っているのだが、その原因はどこにあるのだろうか。次に、経済の停滞を生みだした基本構造についてみる。


公契約法・条例

2010-12-23 07:13:47 | 労働・雇用

公契約法・条例

貧困なくす地方からのうねり


 いま、国や地方自治体が発注する事業で働く労働者に人間らしく働くことができる賃金を保障するための「公契約法・条例」をめざす動きが全国に広がっています。

 川崎市では15日、政令市では初、全国では2番目の公契約条例が全会一致で可決されました。全国初となった条例が2月に施行された千葉県野田市では市庁舎清掃委託事業で働く人の賃金改善など効果をあげています。北海道函館市、東京都国分寺市、日野市などでも、さまざまな取り組みがすすんでいます。

「安かろう、悪かろう」

 「公契約」とは、国や地方自治体など公の機関が公共工事や印刷などの発注、物品の調達、さらに施設管理の委託にあたって民間業者と結ぶ契約のことです。現場では、深刻な実態があります。談合問題からはじまった「入札改革」で、競争入札でのダンピング(極端な安値)での入札が横行し、そこで働く労働者の賃金にしわ寄せされています。

 公共工事では、建設労働者の賃金の平均日額が民間工事を下回る場合が多く、しかも年々引き下げられています。民営化された保育所や民間に委託された清掃など、自治体が発注する委託・契約では、年間の所得が200万円にも及ばない不安定な労働が広がっています。国や自治体が、そこで働く労働者の賃金を考慮せず、コスト削減一辺倒で発注することが、「官製ワーキングプア(働く貧困層)」を大量に生んでいるのです。

 各地の自治体で、安値で受注した民間業者が立ち行かなくなって事業を続けられなくなり、ゴミ収集事業が大混乱になるといったことも起きています。埼玉県ふじみ野市で2006年に起きたプール事故は、そうした「安上がり行政」の最悪のケースです。「安かろう、悪かろう」の公共サービスが、質の確保を難しくし、住民の利益を大きく損なっています。

 多くの自治体で、労働組合や中小企業団体、住民が力を合わせ、受託業者で働く労働者の適正な賃金を確保できる仕組みをつくる公契約条例の実現をめざす運動が広がっています。日本共産党は各地で、住民と協力して議会で積極的な提案を重ねています。国会でも、国の公契約法の実現をねばりづよく求め、経済産業省や総務省に前向きな検討を約束させました。

 昨年7月に施行された「公共サービス基本法」は「公共サービスの実施に従事する者の適正な労働条件の確保その他の労働環境の整備に関し必要な施策を講ずるよう務めるものとする」としましたが、あくまで努力義務にすぎません。真に役立つ公契約法・条例の実現を国や自治体に求める意見書などを採択した議会は33都府県803区市町村にまで広がっています(6月1日現在)。

地域経済の活性化も

 中央段階では、公明党も「公契約法の早期制定」(10月、全国建設労働組合総連合大会)を表明するなど、国民、住民の大きな運動が変化を作り出しています。

 国や自治体が、生活できる賃金など人間らしく働くことのできる労働条件を定めることは、公共サービスの質を向上させ、賃金を底上げして、地域経済の活性化にもつながります。貧困をなくす地域からのうねりを広げることが、いま強く求められています。

しんぶん赤旗より

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