かえるネット木津川南

大阪市南西部で活動する日本共産党の青年後援会のブログです。

TPPの本質 日本共産党の国会論戦

2010-12-15 22:26:38 | 経済

市場任せのTPPやめ農業・環境・雇用守るルールを

参院予算委 市田書記局長の質問


 日本共産党の市田忠義書記局長が、19日の参院予算委員会で行った質問の内容を紹介します。


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(写真)質問する市田忠義書記局長=19日、参院予算委

 市田書記局長 今月10日、東京では全国的規模の、そして12日には札幌市でTPP(環太平洋連携協定)参加反対の北海道民総決起集会が開かれました。日本各地で同様の集会が相次いで開かれています。

 いずれも、農林水産団体だけではなくて、経済団体、地方議会、消費者、市民など、多くの分野の人々が集まって、大変大規模な集会になっています。

 総理に聞きます。これほどの規模で、北海道をはじめ日本全体が立ち上がった、このことをどう受け止めておられるでしょうか。

 菅直人首相 私どもは、先の「(包括的経済連携に関する)基本方針」のなかで、経済連携、いわゆる「開国をする」という方向と、農業の再生を両立させると、そういう方針を明確にいたしました。

 しかし、もちろんこの経済連携、TPPについてはご承知のように、関係国との協議という段階でありますけれども、そういうことについて、農業に携わっておられる皆さんが、いろいろ心配をなさっているということは、そのとおりだと思います。

 ただ、あとの議論になるかもしれませんが、農業の現状というのは、必ずしもこの経済連携の問題を抜きにしても、たとえば非常に高齢化がすすんでいるとか、この間で全体の規模も小さくなっているとか、いろんな問題がありまして、私は、逆に農業再生のためには、もう待ったなしのところまできていると。ですから、この両立こそが日本の将来を開く道になると、このように考えております。

 市田 農業団体だけじゃないんです。市民も経済団体も消費者も立ち上がっている、それをどう受け止めているかと聞いたんです。国民の血の出るような叫びを、総理はわかっておられないと私は、思うんです。

市田氏 TPPは雇用も里山も破壊

首相 開国と農業を両立

市田 北海道でさえ壊滅的、両立は不可能

 市田 農水省に聞きます。TPPへの参加で北海道経済にどういう影響が出るか。北海道(庁)の行った試算を述べてください。

 鹿野道彦農水相 北海道農政部で行った試算は、道内農業生産や関連産業等への影響は2兆1千億円程度で、雇用は17万3000人程度減少、農家戸数は3万3000戸程度減少、こういうことであります。

北海道では農業生産半減、農家は7割減る  

 市田 農業生産額は実に半分以下であります。農家戸数は7割以上減ると。衝撃的な数字であります。

 では、日本全体の農水産物等への影響はどうなっていますか。

 農水相 多面的機能、農産物と水産物あわせまして4兆5000億円産出が減るというふうな試算を出させていただいております。

 市田 それ以外にもいろんな数字を今日お答えくださいと、きのういっておいたでしょう。

 農水相 国内の農産物の生産額は4兆5000億円程度減少、食料自給率は40%から13%に低下、農業の多面的機能は3兆7000億円程度喪失、関連産業への影響は国内総生産で8兆4000億円程度減少、350万人程度の就業機会の減少と、こういうふうな試算を出しているところです。

 市田 そういう数字はあんまりいいたくなかったんでしょう。TPPに参加することになれば、例外なく関税撤廃が求められて、アメリカ、オーストラリアからの農産物の大量輸入で、日本の農業は壊滅し、国内生産は崩壊する。自給率13%ということになれば、国民の胃袋のほとんどが外国にゆだねられる。関連産業も廃業に追い込まれるし、地方の雇用も失われる。里山荒廃どころか、日本の農山村地帯は見る影もなくなるでしょう。そういう事態になることを総理はどうお考えでしょうか。

 首相 まさにそうしてはならないわけです。いまのご質問のお答えは、何も対策を打たないで、たとえばすべての関税をゼロにしたという仮定のなかで、たしか出された数字でありまして、そうしてはならないからこそ先ほど申し上げたように(「開国」と農業再生が)両立するための対応をしようと。しかも、あえて先ほども申し上げましたけれども、それではいまの状態のままの形を継続したときに、現在農業に就業している方の平均年齢が65・8歳ということになりますと、もっともっと若い人が農業に参加し、そして食料を食品、あるいはレストランで出すといった「6次産業」化とか、そういうことをどんどん広げていかなければ、農業というものが地域の中で維持できなくなるという問題意識があって申し上げているわけで、何もやらないでいま出された数字のようになっていいとか、それを覚悟しているということでは全くありません。

 市田 何も手を打たなければ(というが)、手を打つのは当たり前であります。

 いろいろ国内対策をやるといわれた。では聞きましょう。壊滅的打撃を受けるという試算があった北海道農業の規模は、いったいどういうレベルか。1戸あたりの農地面積、酪農経営飼養頭数の北海道とEU(欧州連合)の比較、肉用牛飼養頭数の北海道とアメリカの対比はどうなっているか。

 農水相 EU、米国および北海道の酪農経営の1戸あたりの飼養頭数につきましては、EUは1戸あたり10頭、米国は138頭、北海道は64頭、こういうことであります。

 それから、肉用牛の経営の1戸あたりの飼養頭数につきましては、米国および北海道の比較でございますけれども、米国は84頭、北海道は178頭、こういうふうなことでございます。

 また、1戸あたりの経営の耕地面積につきましては、EUは13・9ヘクタール、米国は186・9ヘクタール、北海道は20・5ヘクタールと、こういうことです。

 市田 いま説明があったように、北海道農業はすでにEUレベルを超えて、肉用牛ではアメリカをも超えている。貿易の完全自由化・市場開放と、農業を「両立」させる対策を取るんだと菅総理はいわれた、(しかし)それは不可能なんです。世界的に見ても大規模化している北海道でさえ、壊滅的な打撃を受ける。

 総理は、「第三の開国」ということをいわれます。総理のいい方を聞いていると、日本の貿易は、農林水産物を中心に、まるで“鎖国”状態にあるかのように聞こえます。

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農産物の関税率は世界で2番目に低い

 市田 そこで農水省に聞きます。主要国の農産物の平均関税率はどうなっていますか。

 農水相 農産物の平均関税率は、インドが124・3%、韓国が62・2%、メキシコが42・9%、EUが19・5%、米国は5・5%、日本が11・7%。

 市田 いまお話があったように、日本は11・7%、アメリカに次いで世界で2番目に低い。日本は“鎖国”どころか十分すぎるほど国が開かれている。

 そして、この関税率の低さは、今日の日本農業の疲弊、困難の主要な原因だったんです。TPPへの参加は、それに追い打ちをかけて、いわば崖(がけ)っぷちに立っている人を――それを救うのが政治の責任なのに――崖っぷちに立っている人を、崖から突き落とすようなものなんです。(「そうだ」の声)

 国民はこうした現状を前にして、食料自給率についてどう考えているのか。この10月、政府が行った「特別世論調査」というのがあります。この「特別世論調査」で、食料自給率についてどういう答えがでていますか。

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 農水相 本年9月に、内閣府が実施した世論調査によりますと、「今後のわが国の食料自給率を高めるべきだ」と考えている国民の割合は「高めるべき」「どちらかというと高めるべき」をあわせて90・7%と、こういう数字です。

 市田 実に9割の人が、食料自給率を高めるべきだと(答えている)。では、同じ調査で「外国産のほうが安い場合は、輸入食料のほうがいい」と答えた人はどれぐらいいますか。

 農水相 これも、本年9月に内閣府が実施した世論調査によりますと、外国産のほうが安い食料について「輸入する方がよい」と考えている国民の割合は、5・4%という数字であります。

 市田 安ければ外国産の方がいいと考えている人はわずか5・4%なんです。政府が行った世論調査でこういう答えが出ている。こういう冷厳な数字を私はしっかり見つめるべきだと(思います)。要するに、圧倒的な国民が望んでいることは、これ以上輸入に頼ることではなくて、「安全で安心な食料は日本の大地から」ということなんです。

 その規模がヨーロッパ並みのレベルに達している北海道農業さえ壊滅的打撃を受けるということは、先ほどの北海道の試算の紹介で明らかになりました。そういう状況の下で、いくら自給率を向上させると口でいっても、それを信用する国民、とりわけ農業者はほとんど皆無に近いでしょう。


TPPの日本経済への影響

(農林水産省試算、即時関税撤廃の場合)

農業生産      4.5兆円減

食料自給率  40%→13%へ低下

農業の多面的機能 3.7兆円喪失

国内総生産     8.4兆円減

雇用        350万人減

TPPの北海道への影響

影響額合計 2兆1254億円減少

うち農業産出額       5563億円減少

うち生産条件不利補正交付金 617億円減少

うち関連産業        5215億円減少

うち地域経済        9859億円減少

◇雇用           17万3000人減少

◇農家戸数         3万3000戸減少


市田 TPPは米豪と輸出大企業の利益が目的

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 市田 もう一つお聞きします。TPPに現在参加している国はどこですか。

 前原誠司外相 参加をしている国は、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国でございまして、交渉中はその4カ国プラス、アメリカ、豪州、ペルー、ベトナム、マレーシアの合計9カ国でございます。

 市田 では、この9カ国のうち、わが国がすでにFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)を結んでいる国はどこでしょうか。

 外相 シンガポール、チリ、ブルネイ、ベトナム、マレーシア。ペルーは最終調整段階でございます。

参加・交渉中は9カ国。事実上の日米FTA

 市田 「バスに乗り遅れるな」とか「世界のすう勢だ」と(いわれる)。(しかし)交渉に参加している国を合わせても9カ国なんですよ。結局、2国間のFTAが進まないアメリカ、オーストラリアという農林水産物輸出大国に門戸を開いてやろうと、これが狙いなんです。(「そうだ」の声)

 日本にとってのTPP参加は事実上、日米FTAの締結と同じ意味を持つ。アメリカにとっては、アジアでの経済基盤を確保するためのもので、これは私がいっているだけじゃないんです。アメリカ政府の高官が、アメリカの議会で公然と語っていることであります。

 また、日本でTPPへの参加をもっとも強く求めているのは、どういう勢力か。日本経団連、なかでも自動車、電機などの輸出大企業であります。

 内閣府にお聞きいたします。TPPに参加した場合、GDP(国内総生産)を何パーセント押し上げるというふうに試算していますか。

 玄葉光一郎国家戦略担当相 いわゆるGTAPモデル、WTO(世界貿易機関)とか世銀などで広く用いられているモデルでありますけれども、その試算でいくと、TPPの参加で実質GDPで0・48から0・65(%)。ちなみにFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)全体が出来上がるという前提でいけば、1・36%で6・7兆円ということでございます。

 市田 結局、日本全体で見ると、GDPはほとんど増えないんですよ。はっきりしていることは、これまでも巨大な利益を上げてきた一部の輸出大企業の利益のために、農業も漁業も林業も、それにつながる地域社会もメチャクチャにする。私は、これらを守るルールをこそ、いま政治は考えるべきだと思うんです。

 農林水産業というのは、単なる数字だけで測ることはできません。国土の保全、環境・景観の保持、文化の継承、こういう多面的な機能を持っています。

 日本学術会議が農水省の諮問に答えて明らかにした農業、林業、漁業、これらの多面的機能の貨幣評価はそれぞれいくらですか。

洪水防止・水質浄化・生態系保全…多面的機能がある

 農水相 学術会議によりまして答申されたのが、農業では、その各分野の評価額でございますけれども、洪水防止機能、土砂崩壊防止機能で年間約8兆円、森林では表面浸食防止機能、水質浄化機能などで年間約70兆円、水産業・漁村では、物質循環の補完機能、生態系保全機能などで年間約11兆円と、こういう試算が出ておるところであります。

 市田 いまいわれたとおりで、農林水産業というのは、本当に単なる数字だけでは測れない、これだけの多面的機能をもっている。農業だけでおよそ8兆円、そして林業だけでおよそ70兆円、漁業でいまいわれたように11兆円です。

 農業でいうと、いまいわれたこの8兆円のうち、冒頭紹介されたように関税撤廃で3・7兆円が損なわれる。半減です。

 11月10日、日比谷の野外音楽堂で開かれたJAなどが主催した「TPP交渉への参加に反対し、日本の食を守る緊急全国集会」、ここでどういう決議がされたか。この文書には次のようなくだりがあります。「今、たしかに『歴史の分水嶺(れい)』に立っている。地球環境を破壊し、目先の経済的利益を追求し、格差を拡大し、世界中から食料を買いあさってきたこれまでの国の生き方を反省しなければならない」と。私、この指摘は大変重いと思うんです。(「そうだ」の声)

 これは、JAだけが主催した集会ではありません。JA以外にも、水産関係、あるいは林業、森林組合の関係も、さまざまな団体が参加した集会でした。


農林水産業の多面的機能の貨幣評価

農業 8兆円 洪水防止、河川流況安定、土壌浸食・土砂崩壊防止、保養など

森林 70兆円 表面侵食防止、表層崩壊防止、洪水緩和、水資源貯留、水質浄化、二酸化炭素吸収、レクリエーションなど

漁業 11兆円 物質循環の補完、環境保全、生態系保全、保養など

(日本学術会議、三菱総合研 究所の資料から)


市田 「食料主権」は世界の流れ

首相 望ましい考えだ

市田 世界に逆行する潮流に追随するな

 市田 いま世界では、食料を市場任せにすることによる害悪が明らかになって、各国の「食料主権」を保障するルールの確立、これを求める流れが大変広がってきています。

 総理にお聞きしたいんですが、こういう自国の食料は自国でまかなうことを基本にしよう、ただ海外に輸出したらそれでいいんだ、それではだめなんだという、この世界の流れについてどういう認識をお持ちでしょうか。

 首相 私にも、たくさんの消費者運動とかいろんな有機農業の運動をやっている昔からの仲間がおりまして、確かに多くのそういう関係者が心配をしておられます。

 同時に、私が最初から申し上げていますように、それではこれまでの形のままで、とくにその経済的な連携をやらないで、農業が自然に立ち直ってくるかといえば、決してそうではない状況にあることを、やはり一方で考えなければならないわけです。

 私も民主党のなかで、農業再生本部の本部長をやらされたこともありまして、そういう中から現在の戸別所得補償の考え方も、いろんな関係者のなかから出てきたわけであります。

 「食料主権」の考え方も、私はまさにそのとおりだと思っております。つまりは、地産地消、できるだけ自分たちの国、自分たちの地域でつくられたもので自分たちが生きていくことができる、そういう社会が望ましいと思っています。

 そういうことを両立させるというのは、もちろん単純に簡単だとは申し上げません。しかし、たとえばAPEC(アジア太平洋経済協力会議)でこられた皆さんが、日本の料理を食べてですね、大変おいしいということをいわれ、また日本産の野菜などでつくった精進料理などを食べられて、大変日本料理はすばらしいということを言っていただいています。つまりは、もっともっと日本の食料、あるいは食品、料理、力があると思うんです。そういうところに参入したい若い人も潜在的にはかなりおられるはずなんです。そういうことを生かして、結果としていま市田先生のいわれたような、「食料主権」を自分たちの力で確立できるような、そういう農業にしていきたいと、そのこととの両立を考えているわけです。

後継者が育たないのは市場任せにしたから

 市田 両立が困難だということも、菅総理はさきほどいわれました。どうして、後継者が育たないかといったら、農業だけで食べていけないからなんですよ(「そうだ」の声)。輸入自由化をやって、価格も流通も市場任せにしてきたから、農業所得が減って、後継ぎが減っているんです。なにか平均年齢が65歳とかそんなところに理由があるんじゃないんです。

 外務省に聞きます。2004年4月16日に、第60回国連人権委員会で、「各国政府に対し食料に対する権利を尊重し、保護し、履行するよう勧告する」。こういう内容の「食料に対する権利に関する特別報告書」が出され、この報告書に関する決議が、日本を含む圧倒的多数の国の賛成で、採択をされました。

 反対した国はどこか、棄権した国はどこか、挙げてください。

 外相 現在、人権理事会というものに改組されていますが、当時2004年は国連人権委員会というものでございまして、加盟国は53カ国でございました。反対をしたのはアメリカ、棄権票を投じたのはオーストラリアでございます。

労働者も低賃金競争にさらされる

 市田 圧倒的多数で、「食料主権」につながる考え方が採択されているんですよ。反対したのはアメリカ、棄権はオーストラリアだけ。

 結局、自国の農産物輸出拡大のためなら、こういう世界の流れに真っ向から反対して恥じない、ほかの国がどうなってもいい、こういうアメリカなどが進めている潮流に追随していっていいのか(「そうだ」「そのとおり」の声)。TPPは、農業だけにとどまりません。金融、保険、公共事業の入札、医師、看護師、あるいは介護士などの労働市場の開放まで含まれています。賃金も、アジア諸国の低賃金との競争にさらされて、大幅に引き下げられる危険があります。

 市場原理万能で、なんでもかんでも市場任せにしていくというやり方は、農業をみても、環境をみても、いまの日本の雇用をみても、破たんはすでに明らかであります。

 わが党は、世界経済が結びついて、貿易が拡大することそれ自体が悪いといっているわけではありません。そういうなかでも、たとえば「食料主権」のように、農業、食料、あるいは環境、労働などは、市場だけに任せていてはなりたたなくなるじゃないか。そこをはっきりさせて、それらを守るルールをつくることこそが、21世紀のまともな経済発展の方向だということを指摘して、私の質問を終わります。(拍手)

動画はこちらです・・・http://www.youtube.com/watch?v=Kl-szMQJqf0

アジア政党国際会議と日本共産党の貢献

2010-12-15 22:13:11 | 国際政治

アジア政党国際会議と日本共産党の貢献

志位委員長の演説から


 日本共産党の志位和夫委員長は、12月9日の横浜、12日の仙台、13日の山梨・昭和町の演説会のなかで、アジア政党国際会議における日本共産党代表団の活動についてのべました。その部分を加筆、補正をして紹介します。


アジアで活動する合法政党が与野党の別なく一堂に会するユニークな国際会議

 みなさん。いま日本共産党が訴えている平和の主張は、実はアジアと世界では当たり前の流れ、本流の流れになっているのです。

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(写真)演説する志位和夫委員長=9日、横浜市

 私は、12月1日から4日までカンボジアのプノンペンでおこなわれた第6回アジア政党国際会議というものに出席してまいりました。せっかくの機会ですので、若干の時間をいただいて、報告させていただきたいと思います。(大きな拍手)

 この国際会議は、ICAPP(アイカップ)と略称で呼ばれるのですが、アジアで活動するすべての合法政党が与野党の別なく一堂に会するという、たいへんユニークな国際会議なのです。

 2000年にフィリピンのマニラで第1回総会が開かれ、今回が第6回総会になるのですが、私たち日本共産党はこの会議をたいへん重視しまして、02年のタイ・バンコクの総会には緒方(靖夫国際局長=当時)さん、04年の中国・北京の総会には不破(哲三議長=当時)さん、06年の韓国・ソウルの総会、09年のカザフスタン・アスタナの総会、そして今回のカンボジア・プノンペンの会議には、私が団長として参加しました。

 プノンペンのICAPPの総会には、36カ国89政党が参加し、主催国カンボジア、マレーシア、ネパールからは現職首相、インドネシア、フィリピンの前・元大統領など首脳級の方々が参加し、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長がビデオ・メッセージを寄せるという会議となりました。

 総会では、各国政党代表が発言します。私は、「アジアと世界の平和と繁栄をめざして」と題して、東南アジアから北東アジアに平和の流れを押し広げること、貧困と気候変動の解決にむけた先進国の責任、核兵器禁止条約の締結をめざす国際交渉の開始をよびかける発言をおこないました。

 ICAPP総会は、「プノンペン宣言」という文書を全会一致で採択したのですけれども、日本共産党代表団は、大きくいってつぎの二つの問題で、総会が成功をおさめることに貢献することができたと思います。

「核兵器禁止条約の交渉を支持」――日本共産党の提案が実った

 一つは核兵器の問題です。「プノンペン宣言」には、「核兵器禁止条約の交渉を支持する」という一文が明記されました。

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(写真)アジア政党国際会議の閉幕総会終了後、壇上で「プノンペン宣言」の採択を祝福し手をとりあう志位和夫委員長(左)と鄭義溶(チョン・ウィヨン)常設委員会共同議長(韓国、右)。(左から)サイード宣言起草委員長(パキスタン)、カエウ・フンシンペック党首(カンボジア)=3日、プノンペン(面川誠撮影)

 この要求というのは、原水爆禁止世界大会や日本共産党が掲げてきた根本要求です。すなわち、「核兵器のない世界」を実現するためには、核兵器廃絶を正面から主題とした国際交渉――もっと具体的にいえば核兵器禁止条約の国際交渉を開始することが必要だということを、私たちは根本要求として掲げてきたわけですが、国際会議でこの旗印が全会一致で採択されたということは、世界でも初めての出来事だということを私は紹介したいと思うのであります。(大きな拍手)

 今年5月にニューヨークの国連本部で核不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれ、私たちも参加しました。

 そこでも私たちは、「核兵器廃絶を主題とした国際交渉の開始を」ということを会議主催者や各国政府に要請しました。NPT再検討会議で全会一致で採択された「最終文書」では、この方向に向けての重要な一歩前進が刻まれました。

 同時に、「最終文書」では、「核兵器禁止条約の交渉」の提案(潘基文国連事務総長の5項目提案)については、「注目する」という表現までは書いたんだけれども、「支持する」というところまではいかなかったんですね。一部の核兵器保有国の抵抗もあって、なかなか全会一致での合意にはならなかったのです。

 「注目」と「支持」は違うでしょう。「注目」というのは「よく見る」というところまでです(笑い)。「支持」というのは「一緒になってやりましょう」ということです。(拍手)

 ですから、こういう中身が与野党の別なく政党が参加したアジアの国際会議で全会一致で採択されたことは、私は画期的なことだといっていいと思うのであります。(大きな拍手)

 実は、これは日本共産党の提案が実ったものなのです。11月の中旬に私たちのもとに「プノンペン宣言」の原案の文書が届けられました。それは全体として、貧困の問題や地球温暖化の問題、平和の問題など良い内容だったのですけれども、残念なことに核兵器の問題が書かれていなかったんです。

 これはなんとかしなければならないと思っていたところに、ICAPPの事務局長(共同議長の一人)を務められている鄭義溶(チョン・ウィヨン)さんという方が私たちの党本部に来訪して懇談になりました。私が、「ぜひ『プノンペン宣言』に核兵器の問題を入れたいのです」といいますと、「それは大歓迎です」ということになったんです。

 そこで私は、鄭義溶事務局長と、ICAPPの「宣言」の起草委員長を務めているパキスタンのムシャヒド・フセイン・サイード・イスラム連盟幹事長に書簡を書き、つぎのような内容を「プノンペン宣言」に盛り込むことを提案しました。

 「われわれは、今年5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議で全会一致で採択された『最終宣言』に明記された『すべての国が核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを確立するために特別な取り組み』をおこなうという国際社会の合意、ならびに核兵器禁止条約の交渉を提案している国連事務総長の5項目提案を支持し、核兵器のない世界をめざす取り組みの発展を重ねてよびかける」

 その後、私たちが日本を出発する前の日の11月29日に、「プノンペン宣言」の最終案が、私たちのもとに送られてきました。それを見ますと、私たちの提案がほとんどそのまま最終案に取り入れられているではありませんか。(どよめきの声、拍手)

 私は、それを見て本当にうれしい思いでした。ですから私は、プノンペンでのICAPP総会での発言で、「プノンペン宣言」のこの部分について「心から歓迎します」という発言をいたしました。そして、全会一致での採択になったというのが経過であります。(大きな拍手)

 日本共産党の提案が実って、「プノンペン宣言」には、核兵器問題で、NPT再検討会議の到達点を上回る、世界で最も先進的な内容が盛り込まれることになりました(大きな拍手)。ICAPPは政党間の国際会議であり、政府間の国際会議とはもちろん性格が異なりますが、この「宣言」は、「核兵器のない世界」にむけた国際社会の努力、世界の平和運動を激励するものになると思います。(拍手)

朝鮮半島問題――「すべての当事国が直ちに対話と交渉を」とよびかけ

 いま一つ、このICAPPの総会で問題になったのは、朝鮮半島の問題でした。総会では、直前に起きた北朝鮮による砲撃事件も議論になり、この問題にどう対応するかが問われることになりました。

 この会議には、韓国の政党代表(ハンナラ党)、北朝鮮の政党代表(朝鮮労働党)、両国から政党代表が参加しています。いま南北両国の代表が同席する国際会議というのはなかなかないんですよ。そのもとで激しい議論がおこりました。

 韓国の政党代表は北朝鮮を厳しく非難する演説をおこないました。北朝鮮の政党代表はそれを激しく攻撃する演説をおこないました。総会は緊張状態になりました。韓国、北朝鮮と発言がつづいてその何人か後に、私の発言の順番が回ってきました。私は、つぎのようにこの問題について発言しました。

 「国連憲章に反する軍事的挑発行為は、もとより厳しく退けられなければなりません。同時に、紛争の外交的、平和的解決のために、6カ国の緊急会合をもつことが大切です」

 端的にこういいました。わが党は、北朝鮮による軍事的挑発行為を厳しく批判する声明を出しております。ただこのICAPPという会議は、政治的立場の違う政党が、互いに他を非難する会議でなく、一致点を見つけ出し協調・協力をはかるという性格の会議です。私は、会議のそうした性格を考えて、名指しの非難ではなく、「国連憲章に違反する軍事的挑発行為」を許さないという表現に、私たちの北朝鮮への批判の立場を込めました。こういえば、名指しをしなくても多くの参加者に私たちの立場が伝わるわけですね。同時に、解決方法としては、“緊急に対話のテーブルに着こうではないか”ということを呼びかけました。

 これが私の発言だったわけですが、翌日には、さらに韓国側から激しい北朝鮮非難の発言がおこなわれました。そういうもとで、この問題を「プノンペン宣言」でどう扱うかが、会議を運営する常設委員会でも議論になったということでした。

 そういうなかで、会議を運営している常設委員会の事務局から、私たちの代表団に対して、「事態打開には貴党の志位委員長の発言の線しかないですね」(拍手)といってくるんですね。私たちは「その通りです」(笑い)、「その線でまとめてください」(笑い、拍手)とのべ、この問題の定式化には日本共産党の発言でのべた内容しかないということを、重ねて議長団に具体的に提案しました。

 議長団もいろいろと知恵をしぼったようです。最終的には、「プノンペン宣言」にはつぎのような内容が盛り込まれました。

 「朝鮮半島における最近の挑発や軍事行動に関してICAPP総会は、すべての当事国が直ちに対話と交渉を通じて状況を鎮静化するようよびかける(拍手)。ICAPP総会は国際社会にたいし、この問題での国連事務総長の声明に沿って、武力行使の再発を防ぐよう強く促す」

 これは会議の知恵と忍耐による、困難を打開しての適切な定式化だと思います。ここには名指しはしていないものの軍事挑発への批判が込められています。そして、“すべての当事国が直ちに対話と交渉のテーブルに着こう”ということを、南北の政党代表が出ている総会で確認されたことの意義は大きいのではないでしょうか(大きな拍手)。会議がこうした適切な定式化をするうえで、日本共産党代表団の活動が一定の貢献をしたことは、うれしいことでありました。

 軍事挑発は許されないが、それに軍事的に対応することも良くない。戦争にしてはならない。直ちに対話と交渉のテーブルに着こう。これが確認された。ICAPPというのは政党間の会議ですけれども、こういうことが韓国と北朝鮮も含めて確認された国際会議というのは、この会議がはじめてであります。

 「もめ事は外交的・平和的に解決する」――これは決して理想論ではない。正面から取り組めば可能なのです。そして、ここにこそ世界とアジアの本流があるのです。

 こうして、私たち日本共産党代表団は、核兵器問題と朝鮮半島問題という二つの平和の大問題で国際政治に働きかけ、会議が前向きの成果を収めることに貢献したということをご報告したいと思います。(大きな拍手)

日本共産党の野党外交が、日本政府の外交になる日をめざして

 そのせいかどうかはわかりませんが、総会が終わった夜の晩さん会の時に、ICAPP創設10周年にさいして、それに貢献した各国の政治家を表彰するセレモニーがあったんです。ずらりと各国の首相や政権党の政党代表などが金色のメダルをもらうんです。(笑い)

 そうしたら突然、私の名前が呼ばれまして、「ICAPP10周年貢献賞」というメダルをいただきました(笑い、拍手)。生まれて初めて(笑い)もらったメダルですが、そういうふうに日本共産党の活動を会議の主催者も評価してくれたということだと思います。(拍手)

 私たちは、多くの友人を得ることもできました。総会が閉会した翌日、12月4日に、私たちはアンコール遺跡を訪問したわけですが、これはただ単に観光に行ったわけではないんですよ(笑い)。これは会議参加者がみんなで行くんです(笑い)。各国の首相や政党首脳などと一緒に歩きながら、歩く途中でも会談しながらアンコールの遺跡を見学する、いわばこれも「外交活動」なのです。

 私も、アンコールに行く飛行機のなかで、また遺跡のなかを歩きながら、各国政党代表とずいぶんと親しく話す機会がありました。これはASEAN(東南アジア諸国連合)流のやり方だと聞きました。

 ASEANでは、会議が終わった後、名跡を訪問したり、リゾートに行くなどの日程が通常組まれるといいます。それは、遊びではなく、会議の延長として、「グリーン・セッション」とさえいわれる。そこで、問題を解決したり、今後の問題を非公式に協議することが多いといいます。

 またそういう取り組みで親しくなれば、いざもめ事が起こっても戦争にはならない。話し合いで何でも解決することができるようになります。これがASEAN流の外交なんですね。私は、これはとてもいいなと思いました。(拍手)

 私は、私たちが取り組んでいるような野党外交が、早く日本政府の外交になる日を一緒につくろうではないかということを心から呼びかけたいと思います。(「そうだ」の声、大きな拍手)


 ()全会一致で採択された「プノンペン宣言」は、冒頭部分にのべられている「われわれが順守する原則」という項目で、「われわれは、……わがアジア大陸における平和、安全、安定、繁栄を、以下のような原則を順守することによって保障することを誓約する」とのべ、「すべての国の主権と領土保全」「自らの政治、経済、社会制度を決定するすべての国の権利」「不可侵および、互いの内部問題への不干渉」「領土紛争の平和解決および国際条約と国際法の尊重」などの原則を列挙し、それにつづけて、核兵器問題についてつぎのように明記しました。

 「われわれは、とりわけ、2010年NPT再検討会議の最終文書で述べられているように『すべての国が核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを確立するための特別な取り組みが必要である』との国際的合意、および核兵器禁止条約の交渉を含む国連事務総長の5項目提案を支持する」



民主 またまた公約破り

2010-12-15 21:29:14 | 政治

民主 またまた公約破り

「思いやり予算」維持


 後期高齢者医療制度の廃止見送りや障害者自立支援法の「延命」など、民主党政権による公約破りの歴史に、新たな1ページが刻まれました。

 民主党が野党時代、「国民の理解が得られない」などとして厳しく批判し、昨年の総選挙でも「見直し」を公約していた在日米軍「思いやり予算」の総額(今年度1881億円)を維持するとともに、来年3月末で期限が切れる特別協定の期間を現行の3年から5年に延長することで米側と意見の一致をみたと発表したのです。

 2008年4月25日。民主党や日本共産党など野党が多数を占めていた参院本会議で「思いやり予算」特別協定が否決されました。参院での条約・協定の否決は戦後初であり、日米両政府に大きな衝撃を与えました。

 結果的に自公が多数を占めていた衆院の議決が優先されましたが、民主党は、(1)厳しい財政事情のなか、安易に米軍駐留経費を負担することは国民の理解を得られない(2)他の米同盟国と比較しても、日本の駐留経費負担は突出している(3)米国の経費節減の取り組みについて、十分に説明していない(4)米兵による犯罪などで、米側に言うべきことを言えない政府の姿勢に問題がある―などを挙げて反対しました。(藤田幸久参院議員、同日の衆参両院協議会)

 これらは今日も「思いやり予算」への反対理由として有効であると同時に、自公前政権同様のアメリカいいなり路線に後退した菅民主党政権への批判として、そのまま適用可能な論理です。

 北沢俊美防衛相は14日の記者会見で、「今の段階で(思いやり予算の)総額を維持するのが妥当」と述べました。08年当時と根本的に矛盾する合意をしておきながら、なぜそう言えるのか。何の説明もありません。

 もともと「思いやり予算」は日米地位協定上、日本側に支払い義務はありません。日米安保条約を肯定する立場であっても、安易に支払うものではないのです。しかも、今は現行協定が批准された当時より、さらに財政は厳しい状況です。特別協定を審議する次期通常国会で、徹底的な説明責任が求められます。

 また、参院では08年当時と同様、野党が多数を占めています。すでに政府内では、「自民党は反対しない」などの観測が流れています。各党の姿勢が鋭く問われます。


法人税5%下げ決定

2010-12-15 12:23:30 | 税金

法人税5%下げ決定

財界歓迎 雇用増は約束せず

財源見通しなし 穴埋めへ消費増税狙う

証券優遇税制は2年延長


 政府税制調査会は14日開いた全体会合で現在約40%の法人実効税率(国、地方の合計)を5%引き下げることを決めました。13日夜に菅直人首相が法人実効税率を5%引き下げるよう指示したことを受けて決定したものです。日本経団連の米倉弘昌会長は14日、「菅総理の決断に敬意を表する」とコメントを発表しました。また、上場株式などの譲渡益や配当にかかる税金を軽減している証券優遇税制を13年末まで2年延長することを決めました。自見庄三郎金融担当相(国民新党副代表)と野田佳彦財務相が同日に協議を重ね、合意しました。


 財界の意向にそって法人実効税率の引き下げを打ち出した菅首相は、減税理由として企業による国内投資と雇用の拡大をあげています。

 ところが財界は、法人税減税による投資、雇用の拡大を約束することを正面から拒否しています。米倉会長は記者団に、「資本主義ではない考え方を導入されては困る」と表明しました。

 菅政権は、財界・大企業が大喜びする法人税実効税率5%引き下げを表明したものの、はしごをはずされた格好です。

 政府税調の議論でも、法人税率引き下げ効果に疑問が噴出。「投資・雇用の充当よりも、内部留保や借入金の返済に充当することを考えている企業が多い」(財務省提出の資料)との声も出ていました。

 さらに、法人実効税率引き下げは、その代替財源をめぐり政府税調の議論は混迷を極め、財源の手当ては一部分しかできていません。

 大企業には減税の恩恵を与える一方で、消費税増税によって、国民にそのツケをまわす道筋が見えてきました。

 米倉会長は、法人税減税を実行するための代替財源を単年度で確保するという考え方について「木を見て森を見ずだ」(6日の記者会見)と批判。中長期的な税制「改正」の必要性を強調しています。政府は11年度半ばに「消費税を含む税制抜本改革」を取りまとめる方針です。法人税減税を先行させて、後で消費税増税によって穴埋めをするというものです。

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