アメリカで共和党のドナルド・トランプ氏が、民主党のヒラリー・クリントン氏を破り、大統領選挙を制しました。
これは、既存の政治へのアメリカ国民の強い怒りと不満の強さを表したものではないでしょうか。
予備選を含めた大統領選挙は「中間層の反乱」と評されたそうです。生活と国の将来に不安を募らせる多くの国民が、格差の拡大や地方経済の深刻な疲弊、テロと戦争の悪循環など、現実に対する不満と怒りの声を上げました。
既存の二大政党に強いノーのメッセージを発したことも特徴とされます。
トランプ氏が起こした「トランプ旋風」は、従来の共和党の枠を突き破るもの。
共和党で政治家の実績を積んできた訳ではなく、過激発言で注目を集めてきた実業家のトランプ氏。支持層には白人層が多く、所得があまり高くない層、大都市部以外に住んでいる層が多いと指摘されます。
従来からの米国の政治と、クリントン氏をはじめそれを進めてきた政治家を激しく攻撃。海外へ雇用が逃げると批判してTPPに反対し、ヘッジファンドの税逃れを批判するポーズも見せ、自身の政策を「アメリカ第一」と称し、支持を集めました。
一方、民主党側では「社会主義」の名のもとに格差是正を強く求めたバーニー・サンダース上院議員が多くの「ミレニアル世代」と呼ばれる30歳以下の若者たちの支持を引きつけ、旋風を巻き起こしました。
その風は、ウォール街との親密さを指摘されるクリントン陣営の政策にも影響を与え、富裕層優遇税制の是正、学費負担軽減など、経済の公正な運営のために政府の役割を求める方向が、民主党選挙政策の、基本的な考えになりました。
もともと無所属議員としての経歴が長いサンダース氏に支持が集まった背景には、民主党への有権者の強い批判がありました。
そういう二人が旋風をおこした大統領選挙でしたが、政策論戦では「歴史的な醜悪さ」と表さる非難合戦に終始。
とくに、移民やイスラム教徒を敵視し、女性や障害者など少数派をあざけるトランプ氏の選挙戦術は、アメリカ社会の深刻な分断をあおることにもなり、批判を受けています。
この深刻な分断を克服するために、次期大統領としてどのような姿勢を示すのかが問われます。