えっ負担率同じ!?
年収1億の役員も平均的な社員も
セブン&アイ・ホールディングス(HD)の鈴木敏文会長やトヨタ自動車の豊田章男社長など年間1億円以上の報酬を得ている経営者は、税と社会保険料を平均的勤労者並みにしか負担していないことが本紙の試算でわかりました。
税と社会保険料
高額所得者ほど有利
2011年度の有価証券報告書によると、大企業役員のうち約350人が1億円以上の役員報酬を受け取っています。これらの人々の中には税・社会保険料を年収の19・0%~20%台前半程度しか負担していない人がいます。
セブン&アイHDの鈴木会長は4億6191万円の年収ですが税・社会保険料負担は推計8787万円であり負担率は19・0%にしかすぎません。またトヨタの豊田社長も3億6505万円の年収に対し税・社会保険料負担は推計7654万円で21・0%の負担率です。
一方、11年の総務省「家計調査」によると平均的な勤労者世帯の世帯主の給与年収は492万円です。これに対して、所得税・住民税は38万円、社会保険料は61万円で合計99万円です。年収に対する負担率は20・1%で、高額の年収を得ている経営者とほとんど変わりません。世帯主の年収が800万円程度になると負担率は27・1%となり、多くの「1億円プレーヤー」と逆転してしまいます。
本来なら税などは高額所得者ほど多く負担する累進性を取らなければなりません。それなのに年収1億円を超える高額所得者と平均的な勤労者が同程度の負担しかしないのは、日本の税制が高額所得者ほど有利な仕組みになっているからです。
役員報酬のうち現金で支払われたものは「給与所得」として課税されます。役員の多くは保有する自社株式からの配当を得ています。保有比率3%以上の大口株主でない限り、配当にかかる税率はわずか10%です。
また、年金や健康保険、介護保険等の保険料は標準報酬の上限を超えるとどれだけ報酬額が増えても保険料は定額のままとなります。
日本共産党は応分負担主張
日本共産党は、所得1億円を超えると大金持ちほど税負担率が減少する「富裕層を甘やかす」税制を見直し、応分の負担を求めるべきだと主張。社会保険料についても高額所得者に適正な負担を求めることを提案しています。
※試算方法 年間収入は役員報酬総額から退職金を除いた額に、受け取り配当額を合わせた額。社会保険料は130万円(国税庁の民間給与所得者の統計データによる推計値)と仮置き。ストックオプションの権利を行使せず課税がなかったと仮定。役員はすべて日本の「居住者」として課税されるものとした。控除については本人の基礎控除のほか配偶者控除を適用し、その他の扶養親族はいないものとした。
“富裕層に増税を”
米の著名経済学者も提唱
「最上層には増税を、底辺層には税率の軽減を定めることが必要」―米コロンビア大学教授でノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・E・スティグリッツ氏が近著『世界の99%を貧困にする経済』で富裕層増税を提唱しています。
スティグリッツ氏は「不況が赤字を生み出したのであって、逆ではない」として、緊縮財政の推進は経済を悪化させるだけだと批判。税金を追加徴収する場合の簡単な法則は「お金のあるところへ行け」というものだと指摘。お金はどんどん最上層に集まり、上位1%の人々が国民所得の20%以上を得ているのだから、税率を少し上げただけでも多額の歳入をもたらすと述べています。また、投機による収入や配当への低い税率、法人税制などの抜け穴や特別優遇を排除することを提案しています。
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