「大企業の支援やベイエリア開発には熱心でも、住民の暮らしや経済の困難、自治体の格差是正には責任を持たないのが知事の本質だ」
日本共産党の宮原たけし大阪府議団長は知事の姿勢をこう指摘します。
橋下知事が就任したのは2008年2月。4ヶ月後の6月には、府民施策を切り捨て、大阪府解体、関西州実現を掲げる「大阪維新プログラム案」を策定し、その後もつぎつぎとビジョンを打ち出しています。
非正規教員
府民施策は「聖域なし」に見直し、福祉・障害者団体の運営補助金や府独自の高齢者住宅改造事業も廃止、介護予防を目的とする「街かどデイハウス」への補助金を3分の1に削減。クラス担任を持つ1年契約の常勤講師が知事の就任前の2007年度に比べて1574人増え、5780人、教員定数の12.7%になります。非常勤講師3095人と合わせると非正規教員は8875人にものぼります。
府立高校では、教務事務補助員等350人の首切りを強行。中小企業のものづくり支援予算は07年度比44%、商業振興費は5分の1に激減しました。
それにとどまらず、今年8月に発表した「財政構造改革プラン」では、府営住宅の半減、障害者作業所や救命救急センターへの府の補助、福祉4医療費助成制度の見直し、中小企業への融資撤退など、命にかかわるものまで切り捨てようとしています。
一方、不要不急の大型開発は継続し、さらに強化・特化しようとしています。
大阪府が8月に発表した「大阪の成長戦略」は、大阪湾ベイエリア開発に焦点をおき、「関西空港ハブ空港化」、スーパー中枢港湾に指定された阪神港の二つをインフラ拠点に、新エネルギーなどの先端産業を集積させ、アジアと日本各地を結ぶ物流・人流の拠点にするとしています。
そのためのインフラ整備として、関空と大阪市中心部を結ぶリニア新幹線、地下鉄なにわ筋線、採算面で凍結されている阪神高速淀川左岸線延伸部の建設を主張しています。
これらは関西財界が要求しているもので、交通インフラだけで事業費は1兆円を超えると見られます。
借金の原因
しかし、このような「呼び込み」型開発は、大阪経済の成長に役立たないだけでなく、大阪府の5兆2000億円、大阪市の5兆1000億円(いずれも2010年度予算)という巨額の借金の大きな原因となり、すでに失敗が明らかです。
関西空港をインパクトに先端企業集積をめざした大阪府「りんくうタウン」開発(総事業費5700億円)や大阪市のベイエリア開発「テクノポート大阪」計画(総事業費2兆2000億円、うち2008年度末の公共投資額7100億円)などはその典型です。
「大阪都構想」は、こうした財界が求めて失敗した開発を「成長戦略」という新たな装いで、「橋下人気」ですすめようというものです。