「2010年版 経済財政白書(内閣府)」は、日本経済の長期停滞の原因を国内需要にあると断定した。
内需の停滞が、長期停滞の原因の一つであるということに異議を唱えるものはいないであろう。だが、どうすれば内需を拡大し、停滞から抜け出せるかということになると、意見が大きく分かれ歯切れも悪くなる。
それには、内需の停滞原因についての認識の相違や分析の不十分さが影響しているように思われる。原因がわからなければ、対応策もおぼつかなくなる。そればかりか、的外れの対応によって、事態をいっそう悪化させかねない。
大事なことは、まず日本経済が長期の停滞に陥った原因を突き止めること。これが日本経済の活路を描くための大前提になる。そこで以後は、政府の経済政策と日本経済の実態を突き合わせ、それを踏まえて日本経済再生の方向を模索する。
以後、とくに念頭においているのは、八月以降、いわゆるデフレ下にもかかわらず円相場が急騰するという異常で深刻な状態や、そのような現状にありながら、金融政策、財政政策が無力感を漂わせていることである。
その根底には、日本経済の基盤の弱さと、それを誘導してきた政府の失敗が横たわっている。そこで、本稿はこのような深刻な事態からの脱却の道筋を模索すべく、これまでの経済政策の不適切さ、経済構造の転換の重要性を描き出す目的を併せ持っている。