○ 厚生労働省が発表した認知症患者の予測値等に関する問題点
私がフェースブック(及びもうひとつのブログである「脳機能から見た認知症」)に載せてあるように、5月末から6月の中旬までドイツに行ってきたのです。ドイツ南部のミュンヘンからピィディングを経てオーストリアのザルツブルク周辺を中心にして、高校の時の同級生を含む同期生達男女計7人で、大型のボックスワゴンを借りて周遊してきたのです。たまたま、「百年に一度」と言われる大洪水に遭遇はしたのですが、レンタカーでプライベートの旅だったおかげで、カーナビを頼りにルート検索して行程を様々に変更し、たまたま行き会ったレストランで旬で絶品のシュパーゲル(白アスパラガス)を食する等、それほどの支障もなく旅行を楽しめ、「前頭葉」機能が燃えたぎる程脳全体が活性化する濃密な時間を過ごすことが出来たのです。文章の合間に載せてある写真はその時に撮ったものの一部ですので、ブログを読んでくださっている皆さんも、雰囲気なりともお楽しみ下さい。
私たちが旅行を楽しんでいる間に、厚生労働省が発表した2つの「テーマ」(「認知症患者」の総数とその「予備軍」とされる人達の「判定基準」)の問題点について、ここで少し問題を指摘しておきたいと思うのです。権威ある研究機関が調査したものを厚生労働省が発表した数値や基準なのですから、誰もがその数値や基準(「軽度認知障害」の概念とその定義)をそのまま信じるだろうと思うからです。特に、認知症専門の医師達がその基準を鵜呑みにして診断に使用する可能性が高いと考えられるので、問題提起しておきたいと考えるのです。どちらの見解を信じるかは皆さんの選択なのですが、私達は名もなく、権威には乏しくても、内容については格別の自信と確信を持って、このブログを公開していることを蛇足ながら一言付け加えておきたいと思います。
最初に取り上げるのは、厚生労働省が発表した「認知症」の人達の総数に関わる問題です。昨年の8月に発表された時の数字が300万人でした(それまでは、200万人としていた数値を一気に100万人増やして300万人に修正したのです)。今年の6月に発表された数字は2012年基準で460万人でした(65歳以上の高齢者の15%に相当する人数)。この増え方の単位の大きさから考えるに、実態として毎年それだけの人数が増えているというのではなくて、推計値の出し方或いはその根拠となる算式又は考え方自体に欠陥があると私達は考えるのです(余りにも大雑把過ぎて信頼度が低い)。その根拠と問題点を、今回のブログで提起しておきたいと考え、予定していたテーマを急遽変更して、この問題を取り上げることにしたのです。私たちは、『アルツハイマー型認知症(以下、「AD型認知症」と略記する)」に特化して、その研究や市町村の「地域予防活動」の指導をしていますので、ここでも「AD型認知症」に関わる問題という視点からの指摘ということになります。
いろいろな種類が数多くある認知症の大多数、90%以上を占めるのが「AD型認知症」ですので、認知症の患者の総数が460万人いるということから計算すると、「AD型認知症」の患者数は約410万人ということになります。但し、認知症の専門の医師達は、米国精神医学会が定める「AD型認知症」の診断規定である「DSM-Ⅳ」を基準として、「AD型認知症」の診断をしているのが通常なので、その第二の要件に規定されている「失語や/失認や/失行(紛い)の症状」と言う極めて重度の症状が確認されないと、「AD型認知症」とは診断しないのです。従って410万人という人数は、「失語や失認や失行(紛い)の症状」と言う「極めて重度の症状」を呈しているとされる人達、言い換えると「AD型認知症」の末期段階の人達(私たち「二段階方式」の区分で言う「重度認知症(大ボケ)」の段階の人達だけの数ということになるのです。ところが、私たちが開発した「二段階方式」の手技を活用して、『脳の機能レベルとその直接のアウトプットとしての症状』を精緻に判定した実態としては、それよりも症状の程度が軽い「軽度認知症(小ボケ)」及び「中等度認知症(中ボケ)」の段階の症状が発現している/極めて多数の高齢者が存在しているのです。その人達は、上記の数字には、算入されていない(無知に因り、見落とされている)ということが、重大な問題なのです。
このブログで何度も指摘し説明しているように、「AD型認知症」の発病だとは気が付かないで、「脳のリハビリ」対策を施さないままに、2~3年の間放置していると、「小ボケ」は「中ボケ」の段階に進み、「中ボケ」は「大ボケ」の段階に進むのです。「小ボケ」は回復させることが可能であり、「中ボケ」は症状の重症化の進行の抑制が未だ可能、末期の段階である「大ボケ」になってしまう、為す術が何も残されていなくて/介護するだけとなるのです。
なお、医療機関で脳の機能レベルを判定する場合に神経心理機能テストであるMMSE等を使用しているところがたまにありますが、MMSEだけでは、肝心の「前頭葉」の機能レベルを判定することは出来ないのです。「AD型認知症」は、『人類最大の難問』と言われていて、未だに世界中の研究者たちが、姿が全く不明で/掴めないと嘆いている「意識」が関わるのです。その「意識」が覚醒した目的的な世界に於ける脳全体の司令塔の役割を担っているのが、『前頭葉』機能なのです。従い、脳機能のメカニズムからして、「前頭葉」機能の機能レベルを精緻に判定することなしには、「AD型認知症」発病の/本当の意味での早期の段階であり、私たち「二段階方式」の区分で言う「軽度認知症(小ボケ)」及び「中等度認知症(中ボケ)」の段階を見落としてしまうことになるのです。「軽度認知症(小ボケ)」及び「中等度認知症(中ボケ)」の段階を見落として、末期の段階であり、為す術が何も残されていなくて/「介護」する以外に他に途が無い「重度認知症(大ボケ)」の段階で/初めて発病と診断していたのでは、『発病のレッテル貼り』の診断でしかないのです。更に注意すべきなのは、発病が見落とされていて、厚労省が発表する「認知症の発病者、その大半は、ぼけ老人」の人数に算入されていない「小ボケ」と「中ボケ」の数を合算した人数は、発病者数とされている人数であり、実は、末期の段階である(大ボケ)の段階の人達の人数と(同等若しくは、それ以上の人数になる)というのが、私たち「二段階方式」の推計なのです。これが、厚生労働省が発表した数字の1つの問題なのです。
(コーヒー・ブレイク)「重度認知症(大ボケ)」の段階にまで脳の機能が衰えてくると、対応策としては「介護」しか残されていないのです。その上、「AD型認知症」の特徴として、身体がもつ限り、その間ずっと、症状は更に重くなって行くので(脳の機能の衰えに対応して、発現してくる症状が更に重いものになっていく)、「介護する側」の家族の精神的、肉体的および経済的な負担がとても大きくなっていくことが、大きな問題なのです。末期の段階である「重度認知症(大ボケ)」は、大河の川幅のように、幅がとても広くて、「重度認知症(大ボケ)」の高齢者を抱え/「介護」し/支える/周りの「家族の人生」をどのように考えるのかという問題を、ここで提起しておきたいのです。
「介護の問題」の極めて極めて有効で有益な解決策となるものでもあり、社会的にも極めて大きな問題があるのです。問題提起したいのは、「AD型認知症」は、①廃用症候群に属する/②老化・廃用型の/③単なる「生活習慣病」に過ぎないのであり、④ 早期発見(「小ボケ」の段階で見つけること)と早期治療(「前頭葉」機能が活性化する為の生活改善である「脳のリハビリ」の継続的な実践)により回復させることが出来るし、更に大きなテーマである、『発病自体を予防』することが出来る認知症だからなのです。「発病自体の予防」を国策化して、市町村の隅々まで行き渡らせることに因り、①新規発病を劇的に減少させて、②発病の最初の段階である「軽度認知症(小ボケ)」の段階で発病を見つけて、「脳のリハビリ」の継続的な実践の自助努力により、症状を回復させ及び回復が出来ないケースでも、症状の重症化の進行を抑制して、末期の段階である「重度認知症(大ボケ)」の段階にまで症状の重症化が進行して行くケースが大幅に減少して来ることとなれば、『発病のレッテル貼り』でしかない末期医療及び末期介護とに投入する『血税の額の規模』を、劇的な規模で、減少させることが出来るのです。族議員は、困るにしても、国も国民も、大助かりの筈なのです。
本題に帰って、認知症が専門の精神科医は、米国精神医学会が定める「DSMーⅣ」の規定に依拠した基準で「AD型認知症」の発病の有無の診断を行う為に、その第二の要件に規定されている「失語や/失認や/失行」(紛い)の症状といった「重度認知症(大ボケ)」の後期の段階(30点が満点のMMSEの得点が一桁、9点以下)にならないと発現することがない「極めて重度の症状」を確認出来ないと、「AD認知症」の発病とは診断しないのです。世界中の認知症専門の医師たちが診断の基準に採用するくらいだから、権威は世界一なのでしょうが、回復させることが困難な末期の段階で発病見つけているだけなのです。まさしくそのことが原因で、「AD型認知症」は、「治すことが出来ないし、予防することも出来ない」/原因不明の認知症にされてしまっているのです(そもそもこの見解自体が重大な誤りであって、見つけるのが、遅すぎるだけ/なのです)。失語や/失認や/失行(紛い)の症状という/「極めて重度の症状」だけを取り上げて、且つその症状に限定して、「AD型認知症」診断基準として重用されている「DSMーⅣ」の規定の誤りのせいで、「原因不明で/治らない病気」にされてしまっているのです。
世界的に高い権威(だけ)を誇る「DSMーⅣ」の規定が幅を利かせている結果として、「失語や/失認や/失行」(紛い)と言う極めて重度の症状だけが、「AD型認知症」の発病の症状とされてしまっているのが、現状なのです。
もっと軽い段階、私たち「二段階方式」の区分で言う「軽度認知症(小ボケ)」や「中等度認知症(中ボケ)」の段階で発現して来ている症状は、認知症としての症状ではなくて、不活発病や単なる老化現象だと考えられ、見過ごされているのです。もっと軽い段階を見つけることが出来る基準に変更すべきなのですが、それも、脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」機能の働きの仕組みや「正常老化」の性質、或いは、「意欲/と注意の集中力/と注意の分配力」という「前頭葉の三本柱」の機能等に対する理解がない現状では、どんなに高名な学者をどれだけ動員したところで無理なことと言わざるを得ないのです。
ところで、「若年性アルツハイマー型認知症」などという言葉が認知症の専門家達から提起され、「働き盛りの30~50歳代で、AD型認知症を発病する人達が増えてきている」などとして、NHKなどでも、しばしば取り上げられている、しばしば30~50歳代で「AD型認知症」を発病する人は、世界中探してみても、居ないことを指摘しておきたいのです。このブログの中で何度も言及してきたように(「症例を自らの手で多数診断している人なら分かるように)、「AD型認知症」の発病は、加齢(60歳を超える年齢)」という要件が、発病の第一要件になるからです。
「若年性認知症」とは、本来は、特定の遺伝子の異常が原因で/若年者を対象として発病するのが特徴である「アルツハイマー病」のことであって、その数は、認知症全体の1%程度を占めているに,s過ぎないのです。一部のマスコミ(学者)が騒いで取り上げていて、働き盛りの30~50歳代で発症するとされる所謂「若年性アルツハイマー型認知症」と言うのは、(認知症ではないが、認知症と紛らわしい病気である、側頭葉性健忘症)をよく知らない為に、誤診し或いは誤解している精神科医や学者の見解の受け売りに過ぎないのです。反響が大きいだけに極めて問題だと思うのです。
そもそも、「AD型認知症」(老年性アルツハイマー病とも呼称される)であれ、「アルツハイマー病」(若年性アルツハイマー病とも呼称される)であれ、認知症を発病している限りは「前頭葉」の働き具合(機能レベル)が、異常なレベルにあることが一番の特徴であり、真っ先に確認されるべき要件なのです。ところが、上述の「側頭葉性健忘症」は、重度の記銘障害(新しい情報が記銘出来ない)を特徴としながらも、「前頭葉」の働き具合が正常なのが特徴なのです。誤診や誤解をしている人達は、「前頭葉」のことを、知らないか、機能レベルを確認する手技を持ち合わせていないかの、いづれかなのです。
最後に、厚生労働省が発表した内容についてのもう1つの問題について、問題を指摘しておきたいと思います。それは、「AD型認知症」の「前駆的な段階」の判定(診断)基準として提唱されている、「MCI(軽度認知障害 )」という概念が抱えている問題です。厚労省を筆頭にして、権威ある機関や人達は、「MCI(軽度認知障害)」なる新規で、奇妙な概念を持ち出して、「AD型認知症」を一定の可能性としての割合で、発病する「MCI(軽度認知障害)」の基準に該当している高齢者も、約400万人いると推計しています。65歳以上の4人に1人が認知症の“予備軍”ということのようなのです。然も、認知症の予備軍とされる人達、「MCI(軽度認知障害)」の該当者と判定される高齢者達のうち、最終的に「AD型認知症」を発病するとされる人達は、その僅か10~15%程度だと予測されてもいるのです。
そもそも、「MCI(Mild Cognitive Impairment)」の概念は、「軽度認知障害」、或いは「軽度認知機能障害」と訳されていて、種々の認知症(特に、「AD型認知症」)に進行する可能性がある、認知症の前駆状態に関わる概念とされているのですが、これにも大きな問題があることを指摘せざるを得ないのです。『MCI』は、日常生活は送れるが、1日前の出来事を忘れることがあるなど「認知機能」が低下した状態を言い、「認知症ではないが、AD型認知症に進行する場合が相当程度考えられる」とされていて、正常加齢と認知症との間に位置する『知的グレイゾーンとしてクローズ・アップされてきた概念』なのです。
この『MCI』という概念も、それなりに権威があるとされているのだろうとは思いますが、脳の機能を取り上げながら、そもそも、「意識」が覚醒した目的的な世界に於ける脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」機能を/意識的に避けていて/「前頭葉」機能を含む/脳全体の機能レベルが取り上げられないで、且つそのアウト・プットである症状(然も、「記憶の障害」を中心とした極めて対象範囲が広くて、且つその程度及び態様が曖昧な症状)だけを選択的に取り上げて居て、「AD型認知症」の前駆的な状態を判定する基準としていること自体が、判定基準としては、適切な機能を発揮し得ないと考えるのです(取り扱う医師の考え方次第で、「AD型認知症」の前駆的なものでもないのに「前駆的症状」と診断してみたり、或いは「AD型認知症」の症状そのものであるのに「前駆的な症状」と診断されるというようなことが、しばしば起こりうると考えられるからです)。
「DSM-Ⅳ」の規定のように、末期の段階にならないと発現してくることがない(極めて重い症状)を「診断の要件」としているが為に、発病をせっかく見つけても手遅れ(為す術が何も残されていない)となっているのに対して、『MCI』の基準の場合は、もっと軽い段階をみつけようとする姿勢/或いは考え方自体は素晴らしいと思うのですが、「記憶を中心」とする主観的で外観的な症状に目が向きすぎていたり、相変わらず程度や態様についての/客観的な基準が無い(私たちが採用しているような「前頭葉」機能を含む/脳全体の機能レベルというような客観的な基準がない)ところに重大な問題があると言わざるを得ないのです。
「意識」が覚醒した/目的的な世界に於ける/脳全体の司令塔の役割/を担っている脳機能、「前頭葉」機能の働きが異常なレベルになってくると、左脳も右脳も運動の脳も正常な機能レベルにあろうとも、その条件下での脳全体としてのアウトプットは、異常なものとなり、「AD型認知症の発病としての症状を示す」のです。この段階が、私たちの区分で言う「軽度認知症(小ボケ)」の段階であり、「社会生活面」だけに、明確で/重大なな支障が出てくるのです。この段階を放置しておくと、「前頭葉」機能の廃用性の加速度的で異常な機能低下がさらに進行していく中で同時に、「軽度認知症」の段階では未だ正常な機能レベルにあった左脳、右脳及び運動の脳も異常なレベルに機能が低下していくのです。この段階を私たちは、「中等度認知症(中ボケ)」と定義しているのですが、この段階での/脳全体の機能レベルのアウトプットは、「家庭生活面」にも、明確で/重大な支障が出て来ることになるのです。
世間では、上述したように、米国精神医学会が策定した「DSMーⅣ」の診断基準に依拠した「AD型認知症」の発病の有無の診断を行う為に、失語や/失認や/失行(紛い)の症状、極めて重度の症状私たち「二段階方式」の区分で言うところの「重度認知症(大ボケ)」の段階でも後期にならないと発現してこない極めて重い症状が確認されないと「AD型認知症」の発病とは診断されないのです。その為、私たちの「二段階方式」のような神経心理機能テストを活用して判定すれば、「前頭葉」機能を含む/脳全体の異常な機能レベルとその直接のアウトプットである「AD型認知症」の症状が確認されるにも拘わらず、「AD型認知症」の発病そのものであり、①症状を回復させることが可能な「軽度認知症(小ボケ)」の段階も、症状の重症化の進行の抑制が未だ可能である「中等度認知症(中ボケ)」の段階も、「AD型認知症」の発病とはされないで、見落とされているのです。その問題を解決することを目的として考案されたのかどうかは知りませんが、「MCI(軽度認知障害)」などという、極めて曖昧な基準に頼っていたのでは、これまた見落とされてしまうことになるのではと危惧しているのです。
「認知機能」という表現を使用しながらも、認知機能の根幹をなす「前頭葉」機能の機能レベル及びその三本柱の機能である「意欲、注意の集中力及び注意の分配力」の機能の機能レベルを客観的に計測し判定することもしないで(その客観的な手技さえ持たないで)、更には、「DSM-Ⅳ」の改訂版である最新の診断基準「DSM-Ⅴ」では捨て去られた、「記憶の障害」という極めて曖昧な概念(「記憶の障害」の程度を規定する基準さえも持たない)を/未だに判定の重要な要素とする「MCI(軽度認知障害)」という概念/基準は、個別ケースでの医師による判定結果がそれぞれに異なる危険を内包していることを指摘し問題提起しておきたいのです。
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