認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症のチェックリスト(中ボケ)Q/A Room(A-50)

2012-07-12 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q:私は、「軽度認知障害」と診断されている73歳になる義父と同居しています。食事の準備は私がしてあげますが、食事を摂ること自体は自分で出来るし、衣服も自分で身に着けられるし、入浴や排泄も自分で出来るので、セルフケアは一応出来るレベルなのです。但し、どれもまるで5~6歳の幼児がする程度にしかできません。

義父は、この頃「物忘れ」がひどく、日にちが分からないどころか、今が何月なのかも分からないことが多いのです。私自身は、義父が何時「アルツハイマー型認知症」を発病するか、とても不安な毎日を過ごしているのですが、肝心の義父は、「私は、なんともないよ」といたって平気で、認知症のことなど全く心配している様子がないのです。

        

A:前回のQ/Aでも説明しましたが、「軽度認知障害」の概念はとても幅広く、基準となる定義自体があいまいです。更に、アルツハイマー型認知症を発病する可能性について専門家が提起している%自体も、因果関係が極めてあいまいなのです。特別意味がある数値とは考えられません。

私達独自の区分であるアルツハイマー型認知症の最初の段階の「軽度認知症」(「小ボケ」)の段階に見られる症状は、「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)の三本柱である意欲、注意の集中力及び注意の分配力が異常なレベルに衰えていることのアウトプットです。そのため、「前頭葉」の機能の衰えの程度に無関心な専門家達からは、何事にも意欲を示さない症状を特徴とする「不活発病」というレッテルを冠せられるだけの程度にしか見られていないのです。それが、「アルツハイマー型認知症」の最初の段階とは考えられてもいないのです。もちろん本人も、家族も同様です。しかも、意欲をなくしてただ「ぼんやりと過ごすだけの毎日」に陥っていくだけの確かな「キッカケ」がどのケースでも必ずあるので、余計に納得してしまうのです。あんなことが(あれだけのことが)あったのだから、意欲をなくしてしまうのも当たり前だよなと皆が考え納得してしまうのです。(「キッカケ」については、ここをクリックしてください)。

       

明確な「キッカケ」があるがために、本人も周りの家族もみんな納得して、「ぼんやりと暮らすだけの毎日」に対して、何の疑いも抱かずにそのまま見過ごしてしまうのです。生き甲斐もこれといった目標もなく、何かに感動したり、喜びを覚える出来事もなく、そのうえ、趣味も交友も楽しめず、運動もしない、ナイナイ尽くしの「単調な毎日」を過ごしていると、「脳の老化」が更に加速度的に進んでいき、私達の区分である次の段階の「中等度認知症」(「中ボケ」)の段階がやってくるのです。

軽度認知症(「小ボケ」)の次の段階を私たちは、「中等度認知症」(「中ボケ」)と呼んで、末期段階の「重度認知症」(「大ボケ」)の段階と区別しています。認知症の専門家たちは、末期段階の「重度認知症」(「大ボケ」)の段階にならないと認知症とは認めていません。ところが、「軽度認知症」の段階なら「回復が容易」で、「中等度認知症」の段階なら「回復が可能」であるのに対し、「重度認知症」の段階になると「回復は困難」になるのです。回復困難な末期段階(私たちの区分で言う「重度認知症」の段階)でアルツハイマー型認知症を見つけることに何の意味があるのか、医師としての社会的使命は放棄されてしまっているのではないかと言いたいのです。

        

この「中等度認知症」(「中ボケ」)の段階は、脳の司令塔の「前頭葉」の働きが「小ボケ」のときより更に異常なレベルに衰えてきています。その上、「小ボケ」のときは未だ正常だった「左脳」と「右脳」の働きも異常なレベルに衰えてきているのです。「中ボケ」の段階になると、脳全体の働きが異常なレベルに衰えてきて、状況や物ごとの理解や判断が幼稚で、「社会生活」面だけでなく「家庭生活」面でもトラブルが起きてくるようになります。但し、「セルフケア」自体には未だ支障が起きてきていません。従って、認知症の専門家たちは、この段階を「認知症」のレベルとは考えていないのです。単なる「老化現象」としか捉えていないのです。症状は、脳の働き具合(機能レベル)のアウトプットなのだから、症状と脳の機能レベルとをリンクさせた診断が不可欠になるのです。脳の働きのレベルが良いのに、重い症状が出てくることはないのです。

「中ボケ」の段階になると、食器の片付けや、洗濯物の取り込み、庭の草むしりといった、「家庭内の簡単な用事」程度のこともちゃんとできなくなります。「4~6歳の幼児」がやる程度にしかできないのです。せっかく洗ってくれたお茶碗はもう一度洗いなおさないといけないし、庭の草取りをしてもらうと花の苗まで抜いてしまいます。家庭内の簡単な用事程度のこともちゃんとできないのに口だけは一人前、「言い訳の上手い幼稚園児」が「中ボケ」の特徴です。

       

下図の横軸は、前頭葉の三本柱である意欲、注意の集中力及び注意の分配力の働き具合を示しています。縦軸が左脳と右脳の働き具合を示しています。前頭葉を中心とした脳の働きのレベル(働き具合)のアウトプットが、症状として現れる(症状の程度:脳の働きのレベルが低くなるほど、症状が重いものとなる)ことに専門家は早く気づいて欲しいのです。

      

「中ボケ」レベルでの「中核的な症状」の特徴を挙げると、次の4つです。

他人との関わりのある社会生活は送れていないので、「何度教えても、日付けがあやふや」になります。

服用の指定のある薬を指定通りに飲めなくなるので、家族が服用の管理を注意してあげる必要があります。

身だしなみに気をつける必要性や状況を理解できないので、身だしなみにむとんちゃくになります。

今が昼なのか夜なのかはまだ理解できても、今の季節が何時なのかを理解する時の見当識が揺らいできていて、季節や目的に沿った服が選べなくなります。

        

以下に、「二段階方式」の判定基準である「中ボケ」に特有の症状を列記しておきます。義父の日々の生活実態に常態として見られる症状が、いくつ当てはまるかチェックしてみてください。基本的に軽いものから重いものへと順番に並べてあるので、この先出てくる症状が分かるはずです。

 【中ボケのチェックリスト】

(4つ以上に該当していると、「中ボケ」のレベルであることが疑われます)。

□ 何度教えても日付けがあいまいになる(注1)

□ 簡単な計算ができない(お札ばかりで買い物をし、やたらと小銭がたまる)

□ 電気やガスの消し忘れ、水道の蛇口の閉め忘れなどが目立つ

□ 家庭内の簡単な用事程度のこともきちんとできない(部屋や洗濯物の

整理、食後の片付け、畑や庭仕事などがきちんとできなくなる)

□ お金や持ち物のしまい場所をすっかり忘れてしまい、一日中探している

□ 自分が飲む2~3種類の服薬管理ができない

□ 服の着方に無頓着で、重ね着が目立つ(セーターの上からシャツを着

る。裏表や前後ろに着る。入浴後、着ていた下着の上に新しい下着を着

る)

□ 入浴時の温度管理が出来ず、体を洗わないとか石鹸がついたままとかする

□ 周りを汚したり流してないなど、トイレの後始末がきちんとできない

□ 料理の味付けが変になる(特に、塩加減が極端に変になる。塩辛す

ぎて、周りが食べられないようなものを作り、本人だけが平気で食べる)

□ 行き慣れている所に行くのに、スムーズに行けない(行き先の違う乗

り物に乗ったり、行き道を間違えたりする)(注2)

□ 自分の子供の数、生まれ順、居住場所の説明がきちんとできない

□ 季節が分からなくなる(夏にセーターなど、季節違いの服を平気で着

る)

□ 昨日の出来事をすっかり忘れてしまう

□ 物盗られ妄想(物の置き場所を忘れて、相手が隠したとか盗んだとか

言う)とか、世話をしてくれる人に対して口汚くののしる行為とかがある

        

(コーヒー・ブレイク) 「時の見当識」は、日、年、月、季節、昼夜の順に衰えていきます。  何度教えても日付けがあやふやになるのが中ボケの始まりで、何月なのかがあやふやになると中ボケの中期、季節があやふやになると中ボケの末期です。

注1)     「見当識」が低下していく順番は、「時の見当識」→「所の見当識」→「人の見当識」となります。「小ボケ」では、「時の見当識」にも「所の見当識」にも未だ問題は起きてきません。「中ボケ」になると、「時の見当識」は、上述の通り。「所の見当識」にも、前述のチェックリストに見るような問題(注2)が起きてきます。  

 注)本著作物(このブログA-50に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。 

エイジングライフ研究所のHP(ここをクリックしてください)

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