西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

2007-06-21 09:19:28 | オペラ
今日は、ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」が初演された日です(1868年、ミュンヘン)。
私は、数多くある音楽史上のオペラの中で、一つだけ選ぶとしたら、この作品を選ぶでしょう。ここには、人間・人生を肯定的に取らえる明るさが充満しているからです。華やかさでは「薔薇の騎士」が、神秘性では「パルジファル」が、悲劇性では「オテロ」が、などと確かにこれを越える作品があるという評者もいるでしょう。しかし、ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」には、それらよりもはるかに大事な私たちにとって必要不可欠なものがあると思います。私はそれを「ユーモア」と言っていいかと思っています。手元の英和辞典にはhumorの説明に「健全な人がもっている人間味あふれたおかしさ」(ジーニアス英和辞典)と出ていて、これは上手にこの言葉を解説していると思います。
人間肯定的なハ長調の全合奏で、この第1幕の前奏曲は始まりますが、1幕中のワルターの「冬の日の静かな炉端で」の歌唱、第2幕の前奏曲から「ヨハネスターク」と歌い始める個所、第3幕のワルターの「朝はばら色に輝いて」、「聖なる朝の夢解きの曲」の5重唱、入場曲「聖クリスパンを讃えよう」、最後のワルターの優勝歌など、このオペラ(楽劇)には魅力的な旋律が数多くあります。
カラヤンはこのオペラをバイロイトで録音した後、一度だけスタジオで全曲録音しました。1970年の12月に東ドイツにいき、ドレスデン・シュターツカペレを振ったときです。もちろんこれが私の第1の推薦版です。歌手の陣容も申し分なく、私はこの5枚10面からなるLPを愛聴しています。ベルリン・フィルとは録音しなかったので、もしあったらどのようなものだったかなどと思うこともありますが、カラヤン自身この録音を超えることはないと思ったのでしょうか。
ワーグナーはこの作品に多くのことを盛り込んだように思います。私はまだその一部しか知らないようにも思います。この作品は優に何度も聴くに値する作品です。これからもこの作品全曲を聴き、ワーグナーの意図したことを探って行きたいと思っています。