西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

再び、兄弟たち

2008-04-29 21:46:56 | 音楽一般
私は、ベートーヴェンについて深く知りたいと思い、これまで目にしたいくつかの伝記本などを買い求め読んできました。
「ベートーヴェン」(大音楽家・人と作品4)(大築邦雄著)(音楽之友社)
「ベートーヴェン」(カラー版 作曲家の生涯)(平野昭著)(新潮文庫)
「ベートーヴェン」(長谷川千秋著)(岩波新書)
「ベートーヴェン」(音楽写真文庫Ⅱ)(属啓成著)(音楽之友社)
「ベートーヴェンの言葉 愛と苦悩の人間像」(津守健二著)(朝日新聞社)
「ベートーベン ―不滅の芸術と楽聖の生涯―」(諸井三郎著)(旺文社文庫)
「ベートーヴェン」(不滅の大作曲家)(ジャン・ヴィトルト著 店村新次訳)(音楽之友社)
「ベートーヴェン」(永遠の音楽家)(アンドレ・ブークーレシュリエフ著 西本晃二訳)(白水社)
「ベートーヴェン研究」(音楽之友社)
「不滅の楽聖 大ベートーヴェン展」
などです。今手元になくて、タイトルを正確に思い出せないものなどまだ他にもあります。
以上の中にはしっかりすべて読んだものもあれば、まだ途中のものもあります。もちろん他にもまだ沢山の本が刊行されているでしょうし、本格的に勉強したいならば、セイヤーなど外国で出された本も読むべきでしょう。しかしとりあえず、身近にあるものでも教えられることは多いと思い、上にあげた本などを読んできたというわけです。
伝記の類を読むと、著者の考え方もそこには反映されるようで、生涯の前半をしっかり書き、後半がやや簡潔な書き方をしていたり、その逆のものもあったりといった感じです。私は兎に角いろいろな著者の書いた人物像を読み、その中で知らず知らず自分なりのベートーヴェン像を築いているように思っています。

その中で、ベートーヴェンの兄弟たちを調べてみました。2人の弟を取り上げればそれで十分かも知れず、多くの伝記はそれ以外に兄弟を取り上げていなかったりもしますが、私は知りたいと思い、その結果は次のようになります。実は一つの本で、兄弟すべての名前を出しているものはありません。またお互いに合わない記述があることも発見し、どちらが正しいのかと迷うこともありましたが、今の時点で知りうることを書いて見ます。

ベートーヴェンは、父ヨハン・ヴァン・ベートーヴェンと母マリア・マグダレーナの間に生まれた7人兄弟の2番目にあたります。男5人と女2人の兄弟です。
第1子・長男、ルートヴィヒ・マリア(1769生-、生後まもなく没)
第2子・次男、楽聖ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770.12.17受洗-827.3.26)
第3子・三男、カスパール・アントン・カール(1774.4.8受洗-1815.11.15)
第4子・四男、ニコラウス・ヨハン(1776.10.2受洗-1848)
第5子・長女、マリア・マルガレータ・ヨゼファ(1779-86)
第6子・五男、アウグスト・フランツ・ゲオルク(1781-83.8)
第7子・次女、マリア・マグダレーナ(1786-87.11.25)
です。
成人したのは下の二人の弟だけです。すぐ下の弟カールはヨハンナ・ライスと結婚し同名のカール(1806.9-58)が生まれています。弟カールはベートーヴェンよりも早く亡くなってしまい、その子カール(ベートーヴェンにとっては甥に当たる)をベートーヴェンは我が子の如く引取り育てようとします。甥カールの母親のヨハンナ・ライスですが、ベートーヴェンから「夜の女王」という綽名を頂戴します。(ベートーヴェンは以下にも記すようにいろいろ綽名を付けるのが好きだったようです。)ヨハンナは夫カールと死別後、ある男と一緒になり、ある伝記本によると、その間に私生児が生まれているという。四男のヨハンは、ベートーヴェンは本当に毛嫌いしていたようで、弟たちに宛てた遺書でも、ヨハンと書くべき所を空欄にするほどでした。ヨハンに付けた綽名も「脳味噌食い」「偽弟」「騾馬野郎」などと、これが楽聖ベートーヴェンの言葉なのかと思わせるものもありますが、それほど嫌っていました。その妻のテレーゼ・オーバーマイヤーには「太っちょ」、その間の娘には「私生児」などと呼んでいたようです。この2人の兄弟は、崇高なものを追い求めるベートーヴェンとは全く違った性格の兄弟だったようです。カールは、作曲の勉強をしていた時があったようで、実はベートーヴェンの作品集の中に、弟カールの作曲したものが含まれていることが分かっています。それはWoO12とされた「12のメヌエット」です。私は今の時点でこの作品は所持していません。また聴いたこともありません。いつか聴いてみたいものだと思っています。
甥のカールは、「叔父さんが僕を善人にしようとしたから、僕は悪人になった」という言葉が残されていて、ベートーヴェンが亡くなる前年に自殺を試みます。未遂に終わりましたが、ベートーヴェンは限りないショックを受けたことでしょう。上にあげた伝記本のうち、長谷川千秋著の「ベートーヴェン」が「甥カール」という一章を設けていて詳しく論じています。

いくつかの伝記本には、巻末に作品目録を載せていますが、私自身で納得のできるようなものを作ってみたいと考えている所です。(大方は出来上がっていますが、完成まではいっていません。)