西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」

2007-06-10 15:21:06 | オペラ
今日は、ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」が初演された日です(1865年、ミュンヘン)。
この作品は、前作「ローエングリーン」とはずいぶんと違った印象を与えます。半音階的な動きとか無調とか解説を読みますと出ています。この作品で、ワーグナーは先の時代を行ったようです。このオペラが作られた裏には、人妻ヴェーゼンドンク夫人との恋愛感情があったようで、彼女の詩による「5つの詩」の中のあるものは、「トリスタン」と双子の関係にあると言っていいでしょう。私は、ワーグナーのオペラの秘密に近づきたく思い、何とこの作品の総譜(スコア)を買い求めてしまいました。いつの日かじっくりオペラを聴きながら見ようと思ったのですが、もとより何の音楽的才能もなく、それはただ、今は埃をかぶるのみです。しかし当時どうしても買いたかったのです。歌劇のスコアは他には持っていません。
初演場所のミュンヘンは、若き国王ルートヴィヒ2世の地。前年の64年5月にワーグナーはルートヴィヒ2世に会って、国王の方は、ワーグナーに最大限の援助をすることを申し出る。それが国の財政を傾けるほどだったので、国内はワーグナーへの私怨で満たされたようだ。ルートヴィヒ2世の建てたノイシュヴァンシュタイン城は、とりわけ有名である。ミュンヘンを訪れる旅行者は、ほとんど行くことだろう。私も、一度行ったことがあります。そこは、いたるところ、壁にワーグナーのオペラに題材を取った絵画が描かれていました。私は、城の中をまわりながら、ここは一度来ればいいところで、2度はいいだろうとなぜか思いました。なぜか不健全な匂いが感じられたからかもしれません。「ワーグナーの毒」という言葉をどこかで見たような気がします。シュタルンベルク湖で謎の死を遂げた国王がそれにあたったのかどうかは分かりません。
ワーグナーは、「ニーベルングの指輪」4部作を中断して「トリスタン」を書いたわけだが、さらにもう一つ「ニュルンベルクの名歌手」を続けて書いた。こちらはハ長調が基本調の全音階的な作品である。ワーグナーは、この作品でバランスを取ったのではないかと思う。