西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

フォーレ「夢のあとに」

2018-11-12 12:16:51 | 音楽一般
近々、発表会でフォーレの「夢のあとに」をする予定。チェロの小品集によく入っている曲ですが、もちろんバイオリンでやります。歌詞の内容を理解しなければやはり演奏はよくできることはないでしょう、と思い歌詞を勉強しました。もちろん音程やリズムがしっかり取れなければいけないですが、取り合えず内容を理解したいと思いました。以下に記したいと思います。
今年初めての、久しぶりの投稿です。

Après un rêve

Dans un sommeil que charmait ton image
Je rêvais le bonheur, ardent mirage.
Tes yeux étaient plus doux, ta voix pure et sonore.
Tu rayonnais comme un ciel éclairé par l’aurore;

Tu m’appelais et je quittais la terre
Pour m’enfuir avec toi vers la lumière.
Les cieux pour nous entr’ouvraient leurs nues.
Splendeurs inconnues, lueurs divines entrevues.

Hélas! Hélas, triste réveil des songes,
Je t’appelle, ô nuit, rends-moi tes mensonges,
Reviens, reviens radieuse,
Reviens ô nuit mystérieuse!

[語釈]
まず単語の理解のために頻繁に出てくる機能語についての説明
フランス語の名詞は男性名詞と女性名詞に分かれます。(英語を学んだ段階では聞くとびっくりすることですが、ヨーロッパ語では普通に見られることです。中性名詞さえある言語もあります。)不定冠詞、定冠詞も異なります。この冠詞ですが、複数もあります。不定冠詞に複数?と驚くかもしれません。複数は、不定冠詞、定冠詞とも男性女性共通です。
不定冠詞 (不特定の)ある・1つの(英 one, a)
 男性 un, 女性 une, 複数 des
定冠詞 (英 the)
男性 le, 女性 la, 複数 les  *le, laは次に母音で始まる語が来るとl’と縮約形になります。
人称代名詞 詩の中では第1人称と第2人称の単数形が頻繁に出ています。英語と同様、主語の時、直接目的の時、などと変化します。
 第1人称(単数) 私
  主語 je, 直接目的・間接目的 me, 強勢形 moi(*この形は直接目的・間接目的でも使うことがあります)
 第2人称(単数) 君 *この単数の第2人称形は、親しい人に対する呼びかけです。だから「君」となります。「あなた」とは違うんです。
  主語 tu, 直接目的・間接目的 te, 強勢形 toi
*me, teは次に母音で始まる語が来るとそれぞれm’, t’と縮約形になります。
 複数第1人称も1度出ています。
  nous 我々 (英 we, us) *前置詞の後で使われています。強勢形ですが、主語・直接目的・間接目的と同形です。
所有形容詞 やはり、詩の中では第1人称と第2人称の単数形が多く出てきました。所有されるものが男性名詞か女性名詞か、また複数形(男女共通)かで変化します。
 第1人称 私の(英 my) 単数 男性 mon, 女性 ma, 複数 mes
 第2人称 君の(英 your) 単数 男性 ton, 女性 ta, 複数 tes
  単数女性名詞の前では、母音で始まる語の時は、男性と同じmon, tonが使われます。
 第3人称も1度出ています。
  leurs 彼(女)らの・それらの *所有されるものが複数の形です。単数は-sを取ったleurです。
前置詞もここにまとめます。英語と異なり、前置詞の後に動詞の不定詞を置くことができます。
après (前)の後で (英 after)
dans (前)~の中に (英 in)
par (前)~によって〈動作主〉(英 by)
pour (前)~のための[に] (英 for, towards, in order to)
avec (前)と一緒に・を伴って (英 with)
vers (前)~の方に (英 towards)
desですが、これはde+lesの縮約形です。このdeは前置詞で、「~の・~から (英 of, from)」です。
動詞の説明で、直説法半過去形とありますが、半過去とは「過去における動作・状態の継続」を表す時に用いられる時制です。「未完了過去」と言うべきと思いますが、フランス語学会ではこの語が使われます。私は説明を受けた記憶がありません。

rêve (男)夢
sommeil (男)眠り (英 sleep)
que (関係代)~ところの~ (英 that) *直接目的として働く
charmait charmer (他)魅了する、の直説法半過去形の単数3人称
image (女)絵・写真・(心の中の)像・心象・記憶
rêvais rêver (他)(の)夢を見る、の直説法半過去形の単数1人称
bonheur (男)幸運・幸福 (英 good luck, happiness)
ardent (形)熱い・燃えるような・激しい・熱烈な
mirage (男)幻影
yeux œil(男)目 (英 eye)、の複数形
étaient être(自)~である (英 to be)、の直説法半過去形の複数3人称
plus (副)よりも~だ・さらに~だ (英 more) *形容詞・副詞の優等比較級をつくる
doux (形)甘い・心地よい・優しい・柔和な・愛情のこもった (英 sweet, soft, easy)
voix (女)声 (英 voice)
pure (形)清純な・汚れのない・美しい (英 pure)
et (接)そして・と (英 and)
sonore (形)音のする・よく響く
rayonnais rayonner (自)光を放つ・光る・輝く、の直説法半過去形の単数2人称
comme (副)(の)ように・と同じように (英 as, like)
ciel (男)(複 cieux)空・天・天国 (英 sky; heaven)
éclairé éclairer (他)照らす (英 to light)、の過去分詞形
aurore (女)曙
appelais appeler (他)呼ぶ (英 to call)、の直説法半過去形の単数2人称
quittais quitter (他)(場所を)離れる・去る (英 to leave)、の直説法半過去形の単数1人称
terre (女)地球・世界・地上・現世 (英 earth, land)
m’enfuir s’enfuir (代名動詞)逃げる・逃げ去る・消え去る、の単数1人称
lumière (女)光・日光 (英 light)
entr’ouvraient entrouvrir (他)わずかに開く・細目に開ける、の直説法半過去形の複数3人称
nues nue(女)(文)雲・天空、の複数形
splendeurs splendeur (女)光輝、の複数形
inconnues inconnu(形)知られていない・未知の・かつて経験したことのない
lueurs lueur(女)微光、の複数形
divines divin(形)神の・素晴らしい、の女性複数形
entrevues entrevoir(他)かすかに見る・かいま見る、の過去分詞形の女性複数形
hélas (間)ああ!〈苦しみ・絶望・悲しみ・遺憾〉
triste (形)悲しい・悲しげな・陰鬱な・哀れな
réveil (男)目覚め
songes songe(男)(文)夢・夢想
appelle appeler (他)呼ぶ (英 to call)、の直説法現在の単数1人称
ô (間)(文)おお・ああ
nuit (女)夜 (英 night)
rends rendre(他)返す、の命令法現在の単数2人称
mensonges mensonge(男)うそ・虚構・幻影、の複数形
reviens revenir(自)再び来る・もどる・帰る、の命令法現在の単数2人称
radieuse radieux(形)光を放つ・日の輝く・喜びに輝く・晴れやかな・(文)輝くような、の女性形
mystérieuse mystérieux(形)神秘的な・不思議な・謎の

[拙訳]
夢のあとに

君の姿が魅了する眠りの中で
私は幸せを、燃えるような幻影の夢を見ていた。
君の瞳はさらに優しく、君の声は清純でよく響いていた、
君は曙に照らされた空のように輝いていた;

君は私を呼びそして私は地上を離れた
君と一緒に光の方へ消え去ろうとして。
大空は私たちのためにその雲の間をわずかに開いてくれていた、
そこでは未知の光の輝き、神のような微かな光が垣間見られたのだった。

ああ! ああ! 夢からの悲しい目覚め、
おお 夜よ、私はお前に呼びかける、私にお前の虚構の世界を返してほしい、
戻って来て、戻って来て 輝く人よ、
戻って来て おお 神秘的な夜よ!