西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

2007-06-16 10:03:54 | 音楽一般
関東地方も、梅雨に入りました。もちろん西洋には、梅雨と言う季節はなく、雨の多い時期があると言ったところだろう。だから、6月、イコール雨ということはないのだが、音楽の中の雨を見たいと思います。
ショパンの「前奏曲集」の15番に「雨だれ」というのがあります。マジョルカ島にサンドと行っていた時に作曲とか、出ていたように思いますが、今手元に解説書がないので。この曲集は1836年から39年に作曲されたということです。演奏ですが、ショパン弾きはたくさんいて、多くの人はそのうちの何人かの演奏に限るなどと思われるでしょうが、私は断じてルドルフ・ケーレルの演奏を推奨します。何度もこれまでここで出した名前ですが、一般には馴染みがないかも知れません。しかし、ケーレルが演奏し出しているならば、私には、他の誰が演奏しているものでもそれを超えるだろうという予測はできないでしょう。技巧がどうのと言う積もりはありません。作品の深奥を掴んでいるのです。私は20年以上も前に購入したLPで所持しているのですが、CDは恐らく出ていないでしょう。残念なことです。

フランスの詩人ポール・ヴェルレーヌに「巷(ちまた)に雨の降るごとく」という詩があります。フランス語を勉強していた時に始めて読みました。

Il pleure dans mon coeur    イル・プルール・ダン・モン・クール
Comme il pleut sur la ville; コミル・プル・スィル・ラ・ヴィル
Quelle est cette langueur   ケレ・セット・ラングール
Qui pénètre mon coeur ?    キ・ペネットル・モン・クール

僕の心に雨が降っている
ちょうど町に雨が降るように:
このけだるさは一体何なのだろう
僕の心に突き刺さる?     (拙訳)

Ô bruit doux de la pluie
Par terre et sur les toits
Pour un cœur qui s'ennuie
Ô le chant de la pluie !

Il pleure sans raison
Dans ce coeur qui s'écœure.
Quoi! nulle trahison ?...
Ce deuil est sans raison.

C'est bien la pire peine
De ne savoir pourquoi
Sans amour et sans haine
Mon cœur a tant de peine.

1874年にこの詩を含む作品が出版されましたが、印象主義の作曲家ドビュッシーは10年あまり後にこの詩に曲をつけました。今、久しぶりにクロワザで聴きました。