西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

ブラームスの「ドイツ・レクィエム」

2023-05-31 16:27:56 | 音楽一般
ブラームスの「ドイツ・レクィエムEin deutsches Requiem 作品45」は、ブラームス33歳の1866年に完成をみた作品である。全7曲からなり、レクィエムの名称からは、ラテン語の典礼文がすぐ思いつくが、ルター派のプロテスタントであるブラームスは、この典礼文を使わず、旧・新約聖書から、自分で適当な歌詞を見つけ出し作曲した。ラテン語によるレクィエムが死者の安息を願うものであるのに対し、ブラームスのこの作品は今生きる者への慰め、また喜びを見出させることを願い作曲されたと言うことができるだろう。
第1曲は、バイオリンは用いられず、クラリネット、トランペットも使われず、華やかさから遠ざかったものとなっている。バイオリンのパート譜を見ると、Nr.1 tacetとある。この語は、ラテン語taceo(タケオー)の第3人称単数である。辞書を見ると、to be silent,not speak,say nothingとある。「だまる・黙する」である。ということからではないが、この曲に魅かれた私は、第2曲を勉強したくなった。歌曲もそうだが、やはり私はこの合唱曲の歌詞を知らなくてはと思い、レコード・CDなどのライナーノート、それにありがたいことにネット上に出ている解説文などを参照させていただき、自分なりの読解を(第2曲だけであるが)書きたいと思った。

この第2曲は、解説によると7つの部分に分けられるということだ。♭が5つ付く変ロ短調であるが、♭6つの変ト長調になり、再度変ロ短調となり、後半部分は♭2つの変ロ長調で終わる。♭や♯が3つまでが私の技量範囲であったが、その意味でひとつの挑戦になる。

1.
Denn alles Fleisch, es ist wie Gras
und alle Herrlichkeit des Menschen
wie des Grases Blumen.
Das Gras ist verdorret
und die Blume abgefallen.
なぜならすべての肉体、それは草のようであり、
そして人間のすべての栄華は草の花のようであるからだ。
草は枯れそして花は落ちる。
【語釈】
denn (接)というわけは~だから,Fleisch (英のfleshと同語源)(中)肉・肉体・人間,wie (英 how)(比較の接続詞)~のように,Gras (英 grass)草(すぐ後のGrasesは単数属格),Herrlichkeit (女)栄華,MenschenはMensch(男)人・人間、の単数属格,BlumenはBlume(女)花(英 bloom)の複数形,verdorretはverdorren(自)枯れる,の過去分詞で,istと共に現在完了形となっている。abgefallenはabfallen(自)[離れ]落ちる、の過去分詞で,現在完了形を作るがistが省略されている。
2.
So seid nun geduldig, liebe Brüder,
bis auf die Zukunft des Herrn.
Siehe, ein Ackermann wartet
auf die köstliche Frucht der Erde
und ist geduldig darüber,
bis er empfahe den Morgenregen und Abendregen.
So seid geduldig.
それだから親愛なる兄弟たちよ、主の到来まで忍耐強くありなさい。
見なさい、農民は大地のすばらしい果実を待ち
そして朝の雨と夕べの雨を受け取るまで、そのことに忍耐強くある。
だから忍耐強くありなさい。
【語釈】
so(英 so)(副)それでは、seidはsein(~である)の命令法2人称複数形、nun(英 now)(副)今や・それで・それ[だ]から、lieb(英 lief(副)喜んで)(形)親愛な・敬愛する,bis auf ∼ ~に至るまで、Zukunft(女)将来・来世、HerrnはHerr(男)主・神、の単数属格,sieheはsehen(見る)(英 see)の命令法,Ackermann(男)農民warten(英 ward)はaufを伴い、~を待つ、köstlichは(形)美味な・高価な・すばらしい、Frucht(英 fruit)(女)実・果実、Erde(女)(英 earth)大地・地球、darüber(副)それについて、bisはここでは(接)まで、empfaheは3人称単数で、faheに前つづりのempがついたもの。fahenは(詩語)で現在形のみ使われる語で、fangen(捕える)と同語。empfangenは(他)受け取る、MorgenregenとAbendregenは辞書にないが、Morgen(英 morning)(男)朝、Abend(英 eve[ning])(男)夕方、Regen(英 rain)(男)雨、の合成語
3.
Denn alles Fleisch, es ist wie Gras
und alle Herrlichkeit des Menschen
wie des Grases Blumen.
Das Gras ist verdorret
und die Blume abgefallen.
なぜならすべての肉体,それは草のようであり,
そして人間のすべての栄華は草の花のようであるからだ。
草は枯れそして花は落ちる。
4.
Aber des Herrn Wort bleibet in Ewigkeit.
しかし主の言葉は永久に留まる。
【語釈】
aber(接)しかし・だが、Wort(英 word)(中)語・ことば、bleiben(自)留まる、Ewigkeit(女)永久(遠)
5.
Die Erlöseten des Herrn werden wiederkommen,
und gen Zion kommen mit Jauchzen;
Freude, ewige Freude,
wird über ihrem Haupte sein;
主に救済された人々は帰って来るだろう,
そして歓声を上げシオン山に来ることだろう;
喜び,永遠の喜びが彼らの頭上にあることだろう;
【語釈】
Erlösetenは、erlösen(他)救い出す・救済する、の過去分詞erlösetが名詞化され用いられたもの、wiederkommen(自)帰って来る、gen(前)(対格支配)(詩語)~に向かって、Zion(男)シオン山(エルサレムの丘)、Jauchzenは、jauchzen(自)歓声をあげる・歓呼する、が中性名詞として用いられたもの、ewig(形) 永久(遠)の、Freude(女)喜び、Haupt(英 head)(中)頭
6.
Freude und Wonne werden sie ergreifen,
und Schmerz und Seufzen wird weg müssen.
喜びと大いなる歓喜を彼らはつかむことになるだろう,
そして苦痛と嘆息は消え失せるにちがいないだろう。
【語釈】
Wonne(女)大歓喜・狂喜、ergreifen(他)つかむ・捕える、Schmerz(男)痛み・苦痛・苦悩、Seufzenはseufzen(自)ため息をつく・嘆息する、が中性名詞化され使われたもの、weg(英 away)(副)去って・(消え)去って
7.
ewige Freude
永遠の喜びを

この曲は、完成までに10年を要したということだ。先にも書いたがこのときブラームスは33歳。宗教曲の大曲は、晩年に物されるものと考えてしまうが、ブラームスは逆で、この後に4つの交響曲、それに室内楽など多くのすぐれた作品を遺すのであった。晩年には多くのピアノ小品などがあり、これからそれらも十分に味わっていきたいと思う。

演奏ですが、やはり私はカラヤンのものを取り上げたいと思います。カラヤンはこの作品を4回録音していますが、私は2種所持しています。

他に放送されたものをビデオからDVDに保存してあり、やはり映像で見られるのは魅力的です。戦後すぐに録音されたものも、そこにはカラヤンの思い入れがある名演と思っています。なお、現在は、本当にありがたい時代ですね、YouTubeで見られるのは嬉しいことです。クーベリック指揮の教会での録音、私は好んでこの動画を見ていろいろ学んでいます。こうなると、本当にレコード、CDは不要になってしまうのだろうか? などと思いますが、私は愛着のあるものはとても手放す気にはなれません。