西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

ヴェルディ「シチリア島の夕べの祈り」

2007-06-13 09:08:38 | オペラ
今日は、ヴェルディの歌劇「シチリア島の夕べの祈り」が初演された日です(1855年、パリ・オペラ座)。
ヴェルディの第19作目の作品で、「シチリアの晩祷」などと訳されることもあります。中期の3大傑作を書いたあとのオペラです。オペラ座初演ということから、最初フランス語台本に作曲されました。
「シチリア島の夕べの祈り」は13世紀実際にシチリア島で起こった事件を題材にしています。1282年春、復活祭の日の翌日の月曜日、教会の礼拝に出ようとするパレルモ市民の中に酔ったフランス兵が入り、女に絡む。そこにいたその女の夫がフランス兵を刺す。このことを契機に日ごろフランス人に対し、不満の積もっていたパレルモ市民が、夕べの祈りを告げる鐘の音を合図に、フランス人に対する反乱を起こし、パレルモだけで2000人のフランス人が殺された、という事件である。たちまちのうちにシチリア全土に反乱は広がり、その後はシチリアはフランスと敵対するアラゴン王家が支配することになった。
そもそもシチリア島は、地中海支配を目指すものにとって、必要欠くべからざる地であった。1268年敵対するホーエンシュタウフェン家の君主を破ったシャルル=ダンジュー(聖王ルイの弟)は、シチリア王国をたて、ナポリを首都とする。そしてシャルルは、フランス王家による神聖ローマ帝国の復興を考え始め、東地中海支配に乗り出す。シチリア島はその要だったのである。アンジュー家のシチリア支配は当然過酷なものになった。そこに起こったのがこの事件であった。
ヴェルディのオペラは、この事件を背景にしながらも筋そのものはずいぶんと自由に扱っているように思う。
今、レコードで「シチリア島の夕べの祈り」序曲を聴いた。カラヤンが1975年に録音したものだ。聴き手にずいぶんと緊張感を与えるような演奏と思った。このとき、カラヤンは「ヴェルディのオペラ序曲・前奏曲全集」を出したのであった。この発売を知った時、本当に驚きました。少なくとも最初のいくつかは、それだけであれば、演奏されるようなものではないのでは思ったからです。カラヤンのヴェルディに対する偏愛ぶりが感じられます。この2枚組みのレコードはそれこそ、カラヤンファンである私には絶対的なものであり続けるでしょうが、おそらくはイタリア人が求めるようにもっとリラックスできるような演奏があってもいいのではとも思ったりします。