西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番

2006-12-31 12:09:44 | 20世紀音楽

この曲は圧倒的な素晴らしさを持った曲ですね。ラフマニノフの持つ叙情性が色濃く出た名曲と思います。第2楽章の静寂なメロディーも絶品ともいえるものです。第1・3楽章のピアノを叩きつけるような弾き方は、作曲者のこれまでのスランプを打ち払うかのような印象を受けます。第1交響曲の不評に悩み、医師による治療後に作曲された28歳頃の作品です。貴族出身のラフマニノフは革命ロシアを嫌い、1917年の末に祖国を出ました。そして43年に亡命地アメリカでなくなるまで革命ソビエト(1991年に消滅)には戻らなかった。作品数は多くはないが、二十世紀音楽史で忘れられない偉大な作曲家である。交響曲は3曲書いたが、前にも述べましたように、第2番(34歳頃完成)の第3楽章は良いですね。このピアノ協奏曲の第2楽章に通じる叙情性豊かな旋律です。作曲者自身ピアノのヴィルトゥオーソでもあったわけで、ピアノ曲に作品の多くは集中していますが、『晩祷』という宗教曲を忘れることはできません。ロシアの宗教音楽を代表する作品ではないかと思います。

このピアノ協奏曲の第2番ですが、非常に優れた録音があります。ルドルフ・ケーレルという独奏者によるものです。管弦楽は、ロジェストヴェンスキー指揮のモスクワ放送交響楽団です。モスクワ音楽院のある教授は、彼について次のように述べています。「彼は希な才能を持つピアニストです。錬成された音楽家です。彼の創造的な努力の個性的な特徴は、勇気と意志と決断です。楽曲を全体に包含する能力を持っているので、彼は音楽の本質を感じ取ることに繊細かつ精密です。」ケーレル(1923年生れ)はどのようなピアニストなのだろう。実は15年間ピアノに触れることができなかったのである!ラフマニノフが祖国を離れたソビエト社会は、独裁国家で何の自由もなかったのである。今の日本にいるものには想像もできないであろう。このような時代に生きることを余儀なくされたケーレルは、その演奏に他とは全く違う、作曲家、作品に対する取り組みをする。《音楽の本質を感じ取ることに繊細かつ精密》というのは、このような所から来るのではないかと思う。聴き手を表面的な感動に誘うのではなく、音楽そのものの本質へと導いてくれるのである。ケーレルは一般的にはあまり知られていない。もっと知られて欲しいピアニストと考えている。

「のだめ」の中では、学園祭で千秋の独奏、シュトレーゼマンの指揮で演奏されました。とても印象的な場面だったと思います。「バイオリンでのだめカンタービレ」を買いました。この中にピアノ伴奏のバイオリン独奏曲として編曲されているのですね。いってみれば第1楽章のミニチュア版です。こんな風に楽しむことができるのは嬉しいですね。いつか伴奏者を得て、弾いてみたいものです。

2006年も大晦日を迎えました。明くる年が良い年となるよう切に祈っています。


スプリング・ソナタ

2006-12-30 11:22:20 | 音楽一般

「のだめ」の第2話で、峰龍太郎が弾いた曲です。ベートーベンの作品の中でも出色の明るさを持つ曲です。本当に青春の伸びやかさが出た佳曲と思います。1800年から1801年にかけて作曲されました。ベートーベン31歳の時に完成したということになります。バイオリン・ソナタを10曲書いていますが、その第5番です。この頃、実はベートーベンは耳の不調を周囲の人に訴えています。

「・・・今非常に不幸な生活を送っていて、自然とその創り主にさえも見放されているからだ。何度も私は、神自身の創りたもうたこの私を危険にさらした神を呪ったものだ。その危険は、たとえ小さくても、美しい花を打ち砕き、破壊してしまうことがあるものだ。聞いて欲しい、私が一番大切にしているもの、私の聴覚がひどく衰えたのだ。・・・」(1801年7月1日、アメンダ(バイオリニスト)宛の手紙。)

このバイオリン・ソナタ『春』が作品番号24。作品番号27の2が有名なピアノ・ソナタ第14番『月光』(1801年作曲)。このピアノ・ソナタはジュリエッタ・グイッチャルディに捧げられた。彼女は当時16歳、ベートーベンからピアノを教わっていた非常に魅力にとんだ少女で、ベートーベンは結婚したいとまで考えていたようだ。このような背景が、『月光』のみならず、『春』の方にも反映されていたのではないかと思われます。

私事。レッスンでこのソナタをしました。何とか、3楽章を終えたのですが、4楽章途中で、理由は覚えていませんが、やめて他の曲にいってしまいました。難しいと思っていました。それでも普通止めることはないのですが、なぜ止めたのだろう、よくわかりません。第1楽章はいつでも弾けるようにしたい、自分のレパートリーにしたいと思ったりして、また最近始めましたが、常に思うことですが、よくこんな曲を弾けたなと思っています。でもゆっくり少しずつ昔やったことを思い出して、暗譜でも弾けるよう頑張りたいと思います。

ベートーベンのバイオリン・ソナタというと、第9番『クロイツェル』(作品47)も有名です。最後の第10番も筆者のお気に入りです。

次回は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番について書きたいと思います。


偉大なるベートーベン-心を酔わせるバッカス-

2006-12-29 11:14:20 | 音楽一般

「のだめ」のオープニングにはベートーベンの第7交響曲が使われています。ベト7などと呼んだりしていますね。まだクラシック入門当時は第1番とか第2番とか番号だけで言うのを何か殺風景な感じがしたのを思い出します。今ドラマを見てクラシック音楽の良さがわかってきた人もそう思っている人がいるのでは。いつまでも番号だけで呼ぶことは変わりません。今クラシック音楽の多くの曲を聴いてきて、全くそんなイメージはないです。誰の何番の交響曲、あるいはピアノ協奏曲といえば、その曲の持つ雰囲気、曲想、あるいは哲学的思索模様、などが浮かんできます。まだまだ十分内容を掴んでいるとは言えないですが。

ベートーベンの第7交響曲は、1812年彼が42歳のときに完成されました。全部で9曲あるうちの7番目の交響曲です。この曲については、ワーグナーの「舞踊の聖化」などという言葉が有名です。リズム的躍動感が支配する曲ということです。オープニングでは、第1楽章のやや長い導入部の後にソナタ形式を構成する主部に入るが、その第1主題(88小節目から)が使われている。リズム感溢れる主題で、このあたりがこの青春群像のドラマとぴったり合うのだろう。全体では40分弱くらいの演奏になるので、演奏シーンは、第1楽章の主題と、第4楽章の最後の部分だけが出てくるが、全体を通して聴けば、よりこの曲の持つ躍動感がわかるだろう。もしこの曲でベートーベンの交響曲の世界に入った人は、他の8つの作品も聴くといいでしょう。9つのうちの最高峰である第9は有名ですが、他にも「英雄」「運命」「田園」とニックネームのついたのもあれば、番号だけの1・2・4・8番の交響曲もありますが、それぞれがベートーベンの生涯のその時の思想的結実であり、現代の私たちに決して古いなどとは感じさせないものを持っています。

このころベートーベンは次のような言葉を述べています。
「目を開けば、私はため息をもらさねばなりません。私の見るものは、私の信仰とは反対のものばかりだからです。そして、音楽が、あらゆる知恵や哲理よりも、はるかに高い啓示であることを知らない世間を軽蔑せざるを得ないからです。音楽は新たなるものを創り出す力を与える酒であり、私は、人間のために、このすばらしい酒をしぼり、彼らの心を酔わせるバッカスなのです。そして、人間は再び、その酔いからさめた時には、その渇きを医するための、あらゆるものを求めるのです。私には一人の友達もなく、一人で生きていかねばなりません。だが、私は、私の芸術が、他の芸術家よりも、はるかに神に近いものであることを、十分に知っています。私は、何の恐れもなく神と交わり、常に神を認め、神を理解しています。また、私は、私の音楽が決して不幸な目にあうだろうとは思いません。このことを理解できる人は、そうでない人が悩む、あのすべての惨めさから解放されるに違いないのです。」

ベートーベンの作品がどのような背景のもとで産み出されるのか、そのようなことを知ればまた聴き方も変わるかも知れません。何年も前に読んだ、『ベートーベンの言葉』という本から抜粋してみました。

次回は、同じベートーベンの「スプリング・ソナタ」について書きます。


シューベルトのピアノ・ソナタ

2006-12-28 14:17:54 | ロマン派

「のだめカンタービレ」でコンクールでの演奏曲としてシューベルトのピアノ・ソナタ第16番が出てきます。あまり知られていない曲ですね。原作者はよくクラシック音楽をご存じな方なのですね。ピアノ・ソナタというと、ベートーベンは32曲、モーツァルトは17曲書いてますが、シューベルトも21曲書いてます。というより後の人が番号をつけたのが21あるといった方がいいでしょう。でもこのうち、9曲は未完です。有名な交響曲に「未完成」というのがありますが、シューベルトは他の分野でも未完の曲が多く、とりわけピアノ・ソナタで多いですね。でも私は、その「未完成」交響曲を含め、未完のものに惹かれることがおおくあります。

戻りますが、第16番のソナタは、1825年シューベルト28歳の時に作曲されました。大規模なソナタです。リヒテルのレコードでこの曲を知りました。リヒテル特有のしっかりその曲の全体像を捉えた演奏という印象を持ちました。それほど回数は聴いていず、頭にそのメロディーは残っていませんでしたが、ドラマで聴いて思い出したというところです。

さてシューベルトのピアノ・ソナタですが、最後の3曲に特に惹かれています。とりわけ最後の21番のソナタは神品といった感じを受けます。これまたリヒテルのレコードで知りましたが、このような演奏を残してくれたことに深く感謝です。そしてシューベルトの深い哲学的な、死を間近にした作品というのはこのようなものなのかとさえ思います。19番のソナタの終楽章も極めて深い印象を与えます。これらを書いた後、2ヶ月してシューベルトは亡くなりました。一般にシューベルトは歌曲王として名を知られていますが、他の分野の作品ももっともっと知られていいでしょう。1000曲ほどの作品のうち9割以上を聴いていますが、聴くたびにその魅力は膨れていきます。これからも聴いていきたいと思います。

「のだめ」の中ではもっとシューベルトが出てきていいような感じを持ちましたが...。


のだフェスに行きました。

2006-12-28 00:10:36 | 音楽一般

25日に「のだめフェスティバル」に行きました。マンガが原作の「のだめカンタービレ」にどういうわけか、この3ヶ月間付き合ってました。月9のドラマなど見ることなどなかったのですが、今回は見てしまいました。音楽に興味があるということと、オーケストラに加わり学生たちが成長する姿に惹かれたということ、またオープニングの主題曲が敬愛するベートーベンの交響曲第7番ということ、そんなことからでしょうか。ハチャメチャなところもいっぱいのドラマでしたが、正直見ていて元気が湧くのですね。不思議です。

ネットで調べたら、25日には「奥村愛クリスマス・コンサート」があるとのこと。時間が書いてなかったので、終ったかなと思って着いたら、ちょうどこれから。会場を一通り見て、楽譜も買い、コーヒーを飲んで、会場の正面席に。出てきた司会が目覚ましテレビでおなじみの軽部アナウンサー。直接見るのははじめて。最初に電子ピアノによる「ラプソディー・イン・ブルー」。素晴らしい演奏でしたね。その後に奥村愛さん登場。「愛の挨拶」から。自分の名前から最初の曲にしたのではないと思うのですが。その後も軽部さんとの軽妙なトークを交え、1時間ほどのコンサートを楽しませてもらいました。バイオリンの演奏は素晴らしいものでした。実は普通のバイオリンではなく、このような会場用のもので、スピーカーを通して聞こえて来たのですが、演奏は惚れ惚れするようなもの。その後、サイン会があるとのことで、ならんでいるCDを見ていたら、「愛の悲しみ」のなかに珍しい「交響曲第2番:第3楽章のテーマ」(ラフマニノフ)というのを見つけ、また最後に「ロンドンデリー・エア」もちょうど入っていたので、買ってしまいました。ジャケットにサインをしてもらいました。前の人が握手していたので、すると、我がバイオリンのボーイングがうまくなるかななどと思いましたが、あとでそんなことを考えた次第です。でも近くで見ると明るい美人のお嬢さんだなと思いました。ニ物を与えず、というがそうでないこともあるのかな。

このラフマニノフ、好きですね。元のシンフォニーではクラリネットで演奏されるのですが、素晴らしい心に訴える旋律です。今書きながら頭の中で鳴っています。自分でもバイオリンで弾いてみたいなと思いますが、楽譜は普通は出てないですね。ロンドンデリー・エアは、レッスンで習ったことがあるのですが、今度また演奏してみたいと思い、その手本に聞いてみたかったのです。聞いて勉強になりました。このように弾くのかと頭に入れたつもりです。でも再現してみるとそのようにはできないのですね。でも練習あるのみです。

「のだめカンタービレ」では、いろいろな曲がバックに使われていましたが、次回のブログではシューベルトのピアノ・ソナタ16番について書きたいと思います。


はじめまして。

2006-12-27 11:22:21 | 音楽一般
今日から、私のブログをスタートします。高校生の時から聴き始めた西洋古典音楽、普通クラシック音楽と呼んでいますが、これについて書いていきたいと思います。独り言ですが、興味のある人はどうぞご覧ください。

昨日の荒天が打って変わり、今日はですね。幸先よいかな?!