西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

メンゲルベルク

2007-03-22 11:01:44 | 音楽一般
今日は、オランダの大指揮者ウィレム・メンゲルベルクの亡くなった日です(1951年)。
メンゲルベルクは、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(ACO)を50年にわたって指揮者を務めていたことで有名です。それだけの才能があったからできたことでしょう。エルネスト・アンセルメが、同じくスイス・ロマンド管弦楽団を50年指揮していたのと比べられる音楽史上に名を残す出来事と思われます。
メンゲルベルクの特徴は、思いのままにテンポを変え、際立ったカンタービレ奏法、ポルタメントの多用にあると思います。多くの人たちがそう述べているのを見ます。私は、ベートーベンの交響曲全集を所持しているだけですが、1度聴いただけでもそのようなメンゲルベルクの特徴が感じられました。もちろんその演奏に作曲者の意図を掴んだ内容がなければ以上のような特徴も何も意味無くなってしまいますが、メンゲルベルクの演奏は、やはり当代の人たちからも正しく理解されていたように、素晴らしい内容を伴った演奏と思われました。現在は、このようにテンポを揺らして自分の持つものを表現すると言う傾向が失われているように思われるので、彼のような演奏家は貴重に思います。チャイコフスキーの「悲愴交響曲」や「マタイ受難曲」も聴くべきでしょうが、残念ながら今は手元にありません。
さて、このような稀代の名指揮者メンゲルベルクですが、第二次大戦後、そのACOの指揮者の地位を追われます。対独協力という名目らしい。フルトベングラーやカラヤンなどを思い起こします。大戦をはさんだ時期の音楽家の処遇については、戦後60年の歴史的変動などを見ると、どの程度正義に基づいて行われたかなどと思うことがあります。戦後勝ったと思われた国も消滅したということであればなおさらです。音楽家がどれほど関与したのかは定かではありませんが、カラヤンなどの伝記を読むと、自分の才能一つで道を切り開いてきたのではという感があります。
メンゲルベルクというと、その才能ゆえ、多くの作曲家から作品を献呈されていますが、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」に私の注目がいってしまいます。なぜか、このタイトルがメンゲルベルクの生涯を語っているように思うからです。