怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

LIFE SPAN 老いなき世界

2022-01-19 15:02:14 | 
これはある意味とても元気が出る本です。
ハードカバーで400ページ余りなので読むのにはそれなりの気合が必要ですが、思いのほか読みやすく、読んでみるだけの価値はある本でした。

でも内容が荒唐無稽と言うか、あまりにも今までの私の理解していることと違うので、ホンマかいなと言うのが第一印象。
トンでも医学的な某出版社の本の類かなと思ってしまうのですが、著者はれっきとしたハーバード大学の教授。確かな科学的根拠を縷々述べているのですが、その主張するところは「ネイチャー」とか「セル」などの一流の科学雑誌にも関連する論文がたくさん掲載されています。
不老長寿と言うのは人類がはるか昔から希求しているかなわぬ夢。秦の始皇帝は不老長寿の薬を求めて日本まで船団を派遣しているが当然ながら見つけられなかった。人魚の肉を食べればいいと言う伝説もあるけど、食べて不老長寿になった人はいない。なんとかの泉の水を飲めば若返るなんて伝説もあったけどあくまでも伝説。
生物はもともと「死」がプログラムされていて、次の世代に遺伝子をつないでいくのには死と再生が必然と思える。年月とともにDNAは徐々に傷ついていき修復不能になっていくとか、細胞分裂を繰り返すたびにテロメアが短くなり、一定回数以上の分裂が出来なくなるとも聞いている。
ところが著者の「老化の情報理論」によると普遍的な生死のモデルは
若さ→DNAの損傷→ゲノムの不安定化→DNAの巻きつきと遺伝子調節(エピゲノム)の混乱→細胞のアイデンティティの喪失→細胞の老化→病気→死
となり、このどれか一つでもひとの手で働きかけることが出来れば、人間がもっと長生きできるのを助けられる。
そしてエピゲノムの変化こそが老化の原因と主張する。
私も初めて理解したのですが、私たちの細胞にはすべて同一のDNAがしまわれているのに、細胞はいろいろな細胞に分化するのはなぜか。どの遺伝子にスイッチを入れ、どの遺伝子をオフのままにしておくのかを調節する仕組みと構造があるからで、その総称が「エピゲノム」。私たちの生命活動を実際にコントロールしてる割合で行けば、ゲノムよりアピゲノムの方が圧倒的に多い。
イメージとしてはゲノムはピアノでピアニストはエピゲノム。エピゲノムは私たちのゲノムを使って生命の音楽を奏でる。DNAはハードウエアで比較的壊れにくく、だからこそ昔の骨などからもDNAを調べることが出来る。一方エピゲノムはソフトウエアなので壊れやすい。
生物はDNPが分かれば全部分かるわけでは決してない。ゲノム配列が同一の一卵性双生児でもエピゲノムによっては異なっていくことがある。となると「ジェラシックワールド」の世界のようにDNPが解明されたからと言って恐竜が復活できるわけではないようだ。
ここから著者が訴えるのは「老化は疾患である」と言うこと。老化は避けて通れないものなどではなく、「幅広い病理学帰結を伴う疾患のプロセス」だと。一般に加齢と関連付けられるがん、心臓病、アルツハイマー病もそれ自体が病気なのではなく、もっと大きな老化と言う疾患の個々の大きな症状に過ぎない。現代の医療はがんや心臓疾患や糖尿病などにモグラたたきのように治療を行う。しかし、それによって伸びる寿命はわずか。例えばあらゆるがんを撲滅したとして長くなる寿命は平均2.1年。身体が老化しつつある状況は変わらないのでそれ以外のすべての原因のによる死は指数関数的に増えていくから。個々の病気を治療するだけでは健康寿命は伸ばせないのです。
老化を病気と認めれば老化との戦いに勝利でき、健康寿命を大幅に伸ばすことが出来る!!なんと希望に満ちた言葉!
では老化と言う病気を治療することが出来るのか。
文系で経年劣化で理論的思考の雨量がガタ落ちの身としては頭がついて行かないので、図なども入れて書いてある長寿遺伝子についての説明を分かりやすく説明することは到底不可能。興味のある人は是非実際にこの本をじっくり読んでいただくことにして、自分の長寿遺伝子を働かせることがまずは必要なのだが、第4章で具体的に提示してあります。
間違いなく確実な方法として「食べる量を減らせ」、間欠的断食もいいみたい。
食べる質としては「アミノ酸を制限する」
運動することは原初のサバイバル回路を始動させることであり、テロメアを長くする。身体を混乱させすぎない程度に軽いストレスを与え、細胞の防御機能を目覚めさせる。
ストレスと言う点では身体を寒さにさらすことも言いそうです。では暑さはどうかと言うとこれははっきりしていないとか。でも寒い地方の人が長生きとは限らないけどね…
当然ながらタバコや有害な化学物質、放射線は老化を早める。
う~ん、科学的根拠に縷々裏打ちされているとはいえ、これくらいならよく聞くようなことですけど、言うは易し行うは難し。哲学者は世界をいろいろ考えた。問題なのは実行することなのだ。
ところで第5章では老化を治療する薬も紹介しています。
糖尿病治療薬として手頃な価格で処方される「メトホルミン」、もちろん抗老化薬としては何処の国でも認可されていない。老化を病気と考えていないのだから当然か。
サーチュインの燃料となるNADを増加させるNRとNМNも有望みたいですが、人間に対する臨床試験は行われていないので何とも言えません。アルファベットの羅列でなんのこっちゃと言う人は本を読んでください。著者の父親はサプリメントとして服用していて少なくとも有害事象はないみたいです。
さらに著者は未来の治療薬についての見通しを書いていますが、私の生きているうちに何等かの成果が出るのか、間に合いそうもないかな…
それでは、もし人間の寿命がどんどん伸びていくと社会的には喜んでばかりいられないのではという論点はあるのですが、単純に寿命が延びるのではなく、健康寿命が延びれば今とは違った世界が見えてくるはずと来るべき世界を展開しています。高齢化に伴い社会としては医療、年金、福祉などいろいろな問題を引きずってしまうかもしれませんが、元気な高齢者が増えれば克服できない問題ではないのだと信じたいものです。
とにかく刺激的な本でしたが、私のスカスカ頭ではうまく伝えられないので、興味があれば是非読んでください。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 1月15日瑞穂公園テニスコート | トップ | 1月22日熱田神宮公園テニ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事