怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

永濱利廣「日本病」

2022-09-15 20:17:10 | 
最近テレビなどで経済問題のコメンテーターとして出演の多い永濱利廣さんの新刊です。

新書本で手ごろ、読みやすいということもあって結構売れているみたいです。
わたしも2022年5月出版して、評判を聞いて間もなく予約したのですが、順番が回ってきたのは今頃です。
ところでこの本をちょうど読んでいる時に名古屋証券取引所主催のIRエクスポが開催されて、その中でマーケットアナライズ公開収録として鈴木一之さんと永濱利廣さんが対談していました。

金曜日の15時30分からでしたが、少し前に行くと座席は満席。一番後ろで立ち見をしていました。
さすが人気があります。

鈴木さんと永濱さんとでは若干立ち位置と言うか視点が違うのですが、そこは調子のいい鈴木さんが適当にヨイショしつつ話を進めています。
今のアメリカ経済の現状認識では
・アメリカは長短金利差がマイナスで景気後退していく
・金利上昇は続くが、ピークは近く来年には下がるかも
・原油高は一服、物価もここへきて頭打ちに
・円安も150円ぐらいでピークだろう
日本の製造業は在庫を積み増ししているのでこれから明るい兆しの景気ウオッチとしては午前9時。非製造業もコロナの先行きが見えて来て追いついてくるのでは、という見立て
その後はこの「日本病」のPRみたいだったので途中で別のブースに行きました。
で、この本ではバブル崩壊以後30年の日本経済の陥った「低所得」「低物価」「低金利」「低成長」という「日本病」の姿を詳しく述べています。
低所得では、労働分配率が低く労働者の流動性が低く新規一括採用などの独特な雇用慣行が賃金を上げにくくしているという。労働分配率が低いのは組合の力が大幅に低下したこともあるだろうし、労働者の流動性が低いと言われても新規一括採用で終身雇用などというのは一部の大企業だけのもので中小企業では新卒の採用は難しく流動性も高い。
低物価については適切なインフレ率は2%(どうして2%が適切なのかはよく分からないのだが)として、「良いインフレ」と「悪いインフレ」はあっても「良いデフレ」はないとして物価を上げないといけないという。
低金利については、そもそも企業に資金需要がないのに政府債務残高の伸びが少なすぎて異次元の金融緩和で金がダボついているから。財政健全化等に拘りブレーキをかけることなく機動的な財政出動をすべきだ。実際民間企業の資金需要がないので日銀が金融緩和をしても使い道がなくブタ積みされるばかり。永濱さんはこの本で何度も「景気は気から」と言っていますが、アベノミクスはやっている感を出して気分高揚させていても実体経済にどれほど効果があったのかきちんと検証されていないのでは。
全般にアベノミクスを高く評価しているのですが、為替についてはリーマンショック後のギリシア危機から円が異常に買われたのであり、野田政権の頃から是正されつつあった。そういう時に解散を自分から打って出る野田の状況認識のまずさはともかく手放しでアベノミクスの成果と評価することはできない。
異次元の金融緩和についてはその時の日銀の黒田総裁の説明ではこれをやれば物価は2%に達すると自信満々だったのに結局実現しなかった。それに対して黒田総裁は説得力ある説明をしたのだろうか。永濱さんは消費税を増税したからそれがすべてをぶち壊したというスタンスだが、消費税増税の影響についてはもう少し緻密な検証が必要なのでは。金融緩和と増税ではアクセルとブレーキを同時に踏むような話なのですが、消費税増税時には増税に見合うかなりの支出増も行っている。消費税については増税するにしろ減税するにしろ小売りのシステム変更に多くの時間と手間がかかるものであり、いつも政争の具にされているので.個人的には10%で固定すればいいのではと思っている。増税が必要ならばもう少し消費に影響を与えないような富裕層の資産とか退蔵されている資金に対しての税がいいと思うのですけど…
ところで最近の急激な円安ですが、永濱さんは115円プラスマイナス15円が妥当なところという見解で、120円台までの円安は日本経済にメリットの方が大きく望ましいと。では150円台ではどう思うのかはこの本では書いてありません。
私としては企業が投資をしないのは一つにはアニマルスピリッツが減退してきたからで、これは少子高齢化の影響で仕方ない面もあるのかと思いつつ、アトキンソンさんが言うように最低賃金を上げてそれに耐えられない生産性の悪い中小企業は再編整理してマッチョ的に生産性を上げざるを得ない環境にしていくのかなと思っています。オランダを例にとって第一次産業に大きな可能性を見ていますが、まさに積極的に投資して生産性を上げる余地が大きいので、人事育成と投資の目利きが必要ですね。
いろいろ同意できない面もありますが、頭の中を整理するにはコンパクトで読みやすく、いい本だと思います。


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