怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

あさのあつこ「天を灼く」「地に滾る」「人を乞う」

2024-03-07 20:49:09 | 
天羽藩の上士の跡取り息子の藤士郎、何の不自由もなく育ってきたのだが父斗十郎が突然商人からの賄賂の疑いで獄につながれ切腹。
そこから藤士郎は波乱万丈の展開に巻き込まれていくのだが、何せお坊ちゃん育ちで何も知らないまま父の無実を信じて奔走するのが第1部ともいえる「天を灼く」
いきなり辺鄙な砂川村の古民家にすむことになるのだが、そこで初めて農民の暮らしとか考え方を知り、政の裏側も知って成長していく。
この辺の少年が苦闘しながら成長していく展開は藤沢周平の名作「蝉しぐれ」を彷彿とさせる。

当然ながら藤士郎だけでも何もできないのだが、ここで異母兄の柘植左京が陰となり日向となり何かとサポートしていく。
この柘植左京は藩の闇の仕事を一手に引き受けていた家のものですが、あまりにも剣の腕は立ち何でもできるスーパーマンなので、話としては面白いけれど現実味が薄れる。
「蝉しぐれ」の滋味というか心に沁みるところが薄まった印象です。まあ、藤沢周平さんの名作と比べるのも失礼でしたか。
でもその分話の展開がハラハラドキドキで早くて、読みだすとやめられない止まらないとなり3部作を続けて一気に読んでしまいました。
第2部の「地に滾る」は父の冤罪の証拠と言うか藩の重役の犯罪の証拠を手に入れ藩主に直接訴えるべく柘植左京とともに江戸に出奔。舞台を江戸に移して裏長屋で浪人生活をして天羽藩の下屋敷への潜入の手がかりを模索くする日々。そこでも江戸庶民の生活を知り、市井で暮らす理不尽さと人々の悩み苦しみを学んで成長していきます。
第3部「人を乞う」は藩主一行とともに再び天羽藩に戻り、藩主、側用人、重臣達との暗闘に巻き込まれていきます。

結局この藩内部の争いは果断な処置が断行させられることなくある意味緩い決着となります。支配者としての武士が政を正そうとしてもそれは領民のことを考えてのことではなく権力闘争に過ぎないことが藤士郎にもはっきり分かるようになった。
藤士郎と左京は地震による大災害で大きな被害を被った砂川村を救うべく藩に直訴をするのですが、武士であるよりも砂川村で農民とともに生きていこうと言う決意が出ています。
あさのあつこが江戸時代の天羽藩と言う小藩を舞台にするのはちょっと意外だったのですが、視線は庶民の生活からは離れていません。
姉の美鶴、仲良し3人組の五馬、慶吾との友情と離反とかが話に彩を加えています。
ネタバレになるのであまり詳しく書けませんが、読みだしたら止まらないので暇なときにどうぞ。

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