怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

真山仁「ブレイク」

2024-06-28 08:13:05 | 
真山仁が地熱発電をテーマに書いたもの。

日本は地熱発電の資源埋蔵量は世界第3位とか。さすが火山大国日本。
しかし実際の発電量は世界第10位。恵まれたポテンシャルを活かしきれていない。
この本では地熱発電推進に情熱を傾ける若手議員の仁科、地熱発電開発企業の開発責任者の玉田、与党エネルギー族の重鎮だった安藤大志郎とその息子の安藤幸二、官邸を取り仕切る総理補佐官の伊豆とかが地熱発電を日本に根付かせようと奮闘する様を描いています。
3.11東日本大震災以降原子力発電はなかなか再稼働も進まず、新設などは夢物語となってきている。一方で地球温暖化の議論は化石燃料での発電に対して厳しい制約条件となっている。
しかし原発はだめ、火力発電所もだめでは、この国の電力はどう賄えばいいのか。太陽光にしても風力にしても安定的な供給は無理でベースロード電源が必要となる。
ここで俄然注目されるのが地熱発電。CO2を排出することなく、燃料を輸入に頼る必要もなく、ランニング経費は至って安く24時間365日安定的に稼働できる。しかも日本にの資源量は世界第3位!まさにいいことばかりなのだが、進んでいない。有望な候補地は国定公園内など自然保護の必要がある場所が多く、温泉に影響があると言うので地元は反対する。さらに稼働に至るまでの建設期間が長く初期投資は多額になる。加えて風力とか太陽光の発電には利権が絡み地熱発電に目を向けさせない。
そんな中で地熱発電を推進する人たちを描くのだが、この地熱発電でブレークスルーする技術があり、私もこの本で初めて知ったのですが、「超臨界地熱発電」とか。もっともまだ世界で成功している例はなく研究段階なのですが、地下4~5kmにある400度あまりの超臨界水をくみ上げ発電に利用すると言うもので、大きな出力をえることが出来、火山のふもとで開発する必要はなく温泉湧出地域からも離れた立地が可能になる。超臨界水は強酸性で高温なのでくみ上げるには特別な耐熱、耐圧、耐久性が必要なので課題は山積みですが、既に5か所の候補地を選定して調査している。
なかなか素材としては興味深くてどんどん読み進めてしまいましたが、どうも小説としてはいろいろな材料を詰め込みすぎて散漫になってしまった感あり。登場人物ももっと絞って深掘りしてみた方がよかったのでは?
小説は紆余曲折を経て全国5か所で超臨界地熱資源開発が進み、いよいよ工事が着工するところで終わっている。今の日本のエネルギー事情は本当に憂慮すべきものだと思うので、可能性を秘め必要とされている地熱発電について考えてみるにはタイムリーな小説だと思います。
もう1冊はおなじみ宮部みゆきの三島屋変調百物語の8「よって件のごとし」
聞き手はどことなく頼りなげな三島屋の小旦那富次郎。

最初の話「賽子と虻」では年齢不詳で笑うことが出来なくなった餅太郎の冒険譚。玉の輿に乗ったはずの姉おりんが妬み嫉みからか虻の呪いをかけられ瀕死の状態に。姉を救おうと餅太郎は呪いの虻を飲み込んで、異界へ。そこは産土神ろくめん様の屋敷で八百神が集い日々ばくちに興じている。なんとなく「千と千尋の神隠し」を彷彿させられます。そこで美しい娘弥生に出会うのですが、ある事件からで神すむ郷は崩壊してしまう。なんとか餅太郎は無事人間社会に戻れるのだが、弥生はどうなり、餅太郎が住んでいた畑間村はどうなって父や兄、そして姉はどうなったのか。編み込み草鞋が出来たら三島屋で取り扱うとなったのだが、その後の進展はなし。どうもまだ後で何か出てきて謎が回収されそうですが少なくとも8ではそのままでちょっと不完全燃焼のままでした。
第2話「土鍋女房」は船頭が川の神の大蛇と結ばれる話で、民話でよくありそうです。
第3話は「よって件のごとし」。宇洞の庄の夜見の池と底でつながっていた羽入田村の黄泉の池。そこには地の底から腐れ鬼が出て来て人を襲い、嚙みつかれた人は「ひとでなし」となり同じように人を襲う。ゾンビの跋扈する世界ですね。助けを求めてきた花江とともに八郎兵衛、真吾、父の宗右衛門などが、羽入村へ行き「腐れ鬼」「人でなし」と戦う。必死の戦いの末に八郎兵衛たちは残った村人を連れて宇洞の庄へ戻ってくる。魔界からの脱出譚です。
最初の聞き手のおちかは臨月となり女中のおしまは、世話をするためにおちかのもとへ。兄も三島屋へ戻って来るのですが、まだまだ続くので早く続きを読みたいものです。

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