怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「劇場」又吉直樹

2017-07-07 07:23:58 | 
ご存知、「火花」が売れに売れた又吉の待望の第2作。
この本も売れ行き好調ですでに30万部とか。

でも又吉の文体というのはなかなかスラスラ読めるものではなくて、とっかかりつつ、少しずつ読むことに。ちょっと気合を入れて読むのですが一気に読みとおすことは無理でした。さすが純文学。読者にも読む覚悟を要求します。
演劇を志し家出してきた主人公永田と彼女沙希との出会いと別れまでの物語というとよくある話ですよね。劇団を立ち上げ演出家と言っても、公演は評判にもならずに赤字続き。バイトで食いつなぐしかなくて、まだ学生の沙希のアパートに転がり込み、ほとんどというか完全なひものような生活を過ごすのだが、沙希は永田を愛し献身的に支える。
読んでいるとこんななんともしょうもない男など早く捨ててしまえと言いたくなるのだが、卒業して働きだし、それもお金がないので夜の居酒屋のバイトまでしてほとんど無収入で働こうとしない彼を支えている。
この小説を読んで確か加藤浩次が泣いたと言っていたと思うのだが、芸人の世界ではこんな話がごろごろしているんだろうな。自意識だけ高くて全然売れずにほとんど無収入な芸人の支えている彼女。又吉がそうだったとは思わないけど、周りには掃いて捨てるほどあったのでは。今は売れている芸人でも、売れていない時はこの本に書いてあるような時もあったかも。だから泣けるんだろうな、と勝手に想像してしまいます。だから読んだ芸人たちからの評判はいいみたいですよね。
最近テレビを見ていると家庭を持ちながらまじめに働こうとしないヘドロ芸人の話を面白おかしく取り上げていますが、仮に二人が結婚して10年たち家庭を持っているとあのころ天使のようだった妻に罵倒されるようになるのだろうか…
話としてはべたな話なので、ここに主人公たちをどう肉付けしていくかなのでしょうが、主人公のだめさ加減はと思いはよくかけていると思いますが、沙希はあまりにもいい人過ぎて、男のある意味願望を具現化したものかもしれませんが、ありえないでしょう。
この小説を又吉は最初に書いていたのだそうですが、世に出たのは「火花」が先。推敲しつつ練り直していたみたいですが、こちらが先に出ていたら、そんなに売れなかったと思います。少なくとも「火花」を超えることはないというか、あれは芸人又吉の書いたという話題性と芥川賞受賞で馬鹿みたいに売れすぎだったですから。
世の流行に遅れてはいけないと「火花」を読んで期待値が上がったテンションそのままに手に取る人がいたということでしょうが、こうなると次の作品が勝負になるのでしょうか。このまま尻すぼみになるかどうか…
又吉の尊敬してやまない太宰の暗さだけではない文体の軽妙さがあればと思うのですけど。
でも、べたな恋愛話なので映像化はしやすいし、やりようによっては、いい作品になりそうな予感がします。勝手に紗希の役は誰がいいかと想像してほくそ笑んでしまいます。高畑充希か黒木華というとあまりにもNHK朝ドラ的?でちょっと合わないかな。

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