事件記者のページ

遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

内田百閒

2010-09-19 15:01:44 | 本と雑誌
内田百けん (ちくま日本文学 1) 内田百けん (ちくま日本文学 1)
価格:¥ 924(税込)
発売日:2007-11-20

Azonで表示すると百けんになっちゃって見苦しいね、「件」って短編が載ってるのでゲト、件(くだん)は知るヒトぞ知る妖怪の有名どころだったらしい、私は40年間、小松さんの創作だと思い込んでたんだなあ、「大事が起きると生まれて未来を予言し大事が終わると死ぬ」という設定を有効に使われたのは(そして見事にオチをつけられたのも、あ、ネタバレ自粛ね)、小松さんに違いないけど、人面牛身の変な怪物自体は江戸期の初出らしい、小松さんは牛面人身に描いておられたんだが、その場合、発声器官はどうなるんだ、人語を話せるんだろかとよけいな心配してみたり・・・

百閒の「件」は予言しないので死ぬこともなさそう、それに結局ヒトの方も予言なんか聞きたくないのだった、ファンタスティックなホラーばかし書いてたけど、この作者ほんとはよーく現実が見えてたんだと思う、そう、同じファンタジーでもはっきり理に落ちてる芥川と違って、百閒ホラーには筋道とか理屈がなくてただコワい、この「件」もちょっと前までヒトだったのがいきなり怪物に変身しちゃってとまどうばかりというカフカばりの不条理さ(もっとも文章はかなりオカシイ-ところもなくはない)、でもって現実とはスジが通らなくてオカシイ、そういうものなのだ、たぶん、百閒はカフカを知ってたかな?(修辞疑問、答えは聞いてない)

そう言えば「山高帽子」って中篇は芥川をモデルにしてる、自分(私=百閒というわけではないらしいが、一部の状況はモデルになってるハズ)が徐々に狂いかけてる恐怖を描いてると見せて、突然友人(=芥川)が自死したと聞かされる、かなりコワい

やっぱ芥川ってウツだったんだろな、けど今なら死ぬことはなかった・・・かどうかはむつかしい、中年の男が死ぬと決めたら、何が何でも実行しちゃうもんだろうからな

9/20付記-修辞疑問だったカフカとの関係だが、本格的に翻訳が出始めたのは戦後になってから、したがってリアルで「件」を読んだ読者(大正10)は「変身」を知らなかった、しかし元本は1915年(大正4)に出てる、あちらではそこそこ知られた作家だった、百閒はドイツ語の先生なんだから読んでなかったと断定はできない