経営コンサルタントへの道

コンサルタントのためのコンサルタントが、半世紀にわたる経験に基づき、経営やコンサルティングに関し毎日複数のブログを発信

【経営コンサルタントのお勧め図書】「日本経済大復活」!? 新冷戦の勝者になるのは日本 2309

2023-09-26 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】「日本経済大復活」!? 新冷戦の勝者になるのは日本 2309

 

 経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

 

 【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。

 幸い、日本で最初に創設された経営コンサルタント団体である日本経営士協会には優秀な経営士・コンサルタントがいらっしゃるので、その中のお一人である酒井闊先生にお声をかけましたところ、ご協力いただけることになりました。

 それが、今日まで継続されていますので、10年余もの長きにわたって、皆様にお届けできていることに誇りを持っています。

 

本

■    今日のおすすめ

『新冷戦の勝者になるのは日本』

                    (中島 精也著 講談社α新書)

本

■『「冷戦」「ポスト冷戦」から「新冷戦」へ』とは(はじめに)

 『「冷戦」「ポスト冷戦」を経て「新冷戦」へ』を辿ってみましょう。注目点は、「新冷戦時代」にこれから起こることは、「ポスト冷戦時代」の揺り戻しだからです。


【冷戦時代を振り返ってみよう】
 「冷戦時代」とは、簡単に言えば、アメリカを代表とする資本主義・民主主義の国が、共産主義・社会主義圏の拡大を防ぐために「封じ込め」る一方、ソ連や東ヨーロッパ諸国が、共産主義・社会主義を守るために、独裁的な支配を強め、資本主義国とは接触しないよう「閉じこもった」時代と言ってよいのではないでしょうか。
 「冷戦時代」は1945年2月の『ヤルタ会談』(ルーズベルト、スターリン、チャーチルによるドイツの東西分割を決定)に始まり、1961年8月に築かれたベルリンの壁が、1989年11月、ライプチヒのニコライ聖堂を起点とする50万人の市民革命に端を発する市民蜂起により崩壊し、そこから1か月後、ブッシュとゴルバチョフが地中海のマルタ沖のクルーズ線上で「世界は一つ」「東西関係の持続的共同関係」を確認した『マルタ会談』で終結します。
 冷戦終結(非共産化)を時系列でみると、東欧諸国(ポーランド、ハンガリー、ブルガリア、チェコ・スロバキア、ルーマニア)は1989.6~1989.12、バルト3国は1990.3~1991.8、東西ドイツ統一は1990.8、ソ連解体・崩壊は1991.12、バルカン半島東欧諸国(ユーゴスラビア、アルバニア)は1991~1992となります。
 中国における東欧革命の民主化ドミノは、政治的自由を主張した胡耀邦総書記の死去の追悼集会(1989.4.15)への抑圧を契機に、1989年6月4日天安門事件が起きます。しかし、武力で制圧され共産党政権は堅持されます。この結果、鄧小平路線はさらに「社会主義市場経済」として強化され、中国は「民主化なき経済大国」へと向かっていくこととなります。


【「ポスト冷戦時代」に起こった事と、「ポスト冷戦時代」の終わり】
 「ポスト冷戦時代」とは、資本主義・民主主義vs共産主義・社会主義のイデオロギー対立が終わり、東西冷戦で閉ざされていた東側の労働力や資源が西側に開放され、逆に西側の技術とマネーが東側に開放された結果、世界経済はBRICSを代表とする新興国の高成長と先進国の低インフレを象徴とする時代と言えます。
 これを象徴するのが、アメリカの所謂「ラストベルト」であり、日本をはじめとした先進国における「産業の空洞化」です。
 「ポスト冷戦時代」に起こったことを挙げてみましょう。
¨ 生産要素の最適化を実現するグローバル・サプライチェーンの構築の進行と構築のための投資の増加、西側の技術による生産性の向上と安い労働力と人口ボーナスを武器とした中国とインドの高成長。
¨ 日本、アメリカにおける製造業の「雇用の減少」(米国1990⇒2022・▼28%、日本92⇒21・▼34%)。
¨ 冷戦時代の軍事研究の成果を生かしたIT革命とサービス化に成功したアメリカの賃金上昇(90⇒22・2.7倍)と後塵を拝している日本の賃金低迷(92⇒22▼3.3%)。
¨ 天然資源に関するドイツ・欧州のロシア依存の高まり。
 ポスト冷戦の終わり、つまり新冷戦の始まりは、2017年10月の中国の習総書記第二期政権の始まりの第19回共産党大会における「2049年を目標年とする『社会主義現代化強国(世界覇権掌握)』宣言」と言われています。
 露骨な挑戦状を突き付けられたアメリカのトランプ政権の対応は、2018年10月のペンス副大統領のハドソン研究所における「武力を伴わない対中宣戦布告『新・鉄のカーテン』」演説に現れています。2018年7月には、対中関税引き上げを行い「米中貿易戦争」「米中デカップリング」が始まったのです。
 これに拍車をかけたのが、コロナとウクライナ戦争です。コロナにより中国の絡むグローバル・サプライチェーンのモロさが露呈し、ウクライナ戦争ではロシアの経済安全保障上のリスクが顕在化し一挙にポスト冷戦が崩壊したのです。


【「新冷戦時代」に起こる変化は?】
 ソ連崩壊で始まったポスト冷戦時代は30年を経過して幕を下ろし、民主主義と専制国家の2つのブロックに分断される「新冷戦時代」に突入します。
 「新冷戦時代」には、ポスト冷戦時代に起きたことの巻き返しが起こります。グローバリゼーションの巻き戻しにより、労働力、天然資源などの全ての生産要素価格が上昇し、ポスト冷戦時代のデフレ経済からインフレ経済に逆戻りします。
 コロナと専制国家の強権の横暴によりモロさを露呈したグローバル・サプライチェーンを見直し、リ・ショアリング(国内回帰)、ニア・ショアリング(近隣友好国への工場移転)、フレンド・ショアリング(米提唱のIPEF。同盟国や友好国間に限定した新たなサプライチェーン)が本格的に始まっています。
 「新冷戦時代」に起きている、フレンド、ショアリングから排除されるなど内憂外患の中国、中露に依存した経済の崩壊を抱える欧州、ウクライナ戦争で疲弊するロシア、ITや基軸通貨など引き続き優位性を維持するアメリカ、など世界情勢は大きく変化しています。詳しくは紹介本をお読みください。
 日本についての、「新冷戦時代」に起こることについて、次項で記してみたいと思います。

 

本

■「貧しい国」から脱却し「豊かな国」に向かうロードマップ

【目指す賃上げの水準ー年率4.2%以上-】

 著者は2種類の賃上げについて言及しています。

 一つがベース・アップ(含む初任給アップ)です。人口減少を考慮した場合、貧困化しないためには、2022年のGDPを生産年齢人口で割った一人当たり労働生産性(742万円)を2022年のGDPを2060年の生産年齢人口で割った一人当たり労働生産性(1,258万円)まで高め、GDPを2022年レベル以上とする必要があり、その為には、毎年、年率+1.4%以上〔注3〕のベース・アップと生産性の向上が必要とします。

 二つ目は定期昇給です。給与の上昇は52歳まで上昇し、年率+2.8%です(全国平均。厚労省データ)。この部分の企業の総支給額は変わりません。定年制により入れ替わるだけで企業視点での支給総面積は不変だからです。

 この二つを合わせると+4.2%です。これに実質賃金をマイナスにしないためにはインフレ率の上乗せが必要です。日銀が目指すインフレ目標2%を考慮すると+6.2%になります。

 〔注3〕著者は+1.4%の数字を算出する前提として、2060年の生産年齢人口を4,418万人(社会保障・人口問題研究所2012年1月推計〈出世中位、死亡中位〉)を使っています。2023年4月推計の5,078万人を使うと+1.1%となります(筆者コメント)。

【一人一人の行動で、給料を上げよう―従業員として取るべき行動―】

 著者は日本以外の多くの国で給与水準が上がっているのに対し、日本では30年間ほとんど上がっていない理由を2つ挙げています。一つは一人当たりの付加価値つまり労働生産性がほとんど上がっていないことです。二つ目はOECDの国では7割以上の労働者が給料を上げてもらう給料交渉をしますが、日本では給与交渉をする労働者は3割に止まっています。

 著者は、日本でも「1年に1回、経営者と社員がひざ詰めで面談し、従業員側の希望・要望・不満を聞き取り、給与の妥当性についても意見交換をすべき」と強調します。

 これからの人口減少時代には、給料を上げられない企業は、労働者から選択されず、雇用を確保できなくなると指摘します。経営者も労働者も給料を上げ続けることが出来る企業に変革する行動と実現を、真剣に求めていくべき時代なのです。

【従業員から「見限られる社長」ではなく「ついていくべき社長」になる

-経営者のとるべき行動ー】

 上述のとおり「労働者から選択される」企業でなければ、雇用を確保できない時代であることを認識し、経営者としての在り方を「ついていくべき社長の5つの特徴」として提言しています。是非、紹介本をお読み下さい。

【より付加価値の高いものをより高く売るー経営者、従業員の共通の行動-】

 経営者・従業員の共通課題は付加価値の向上です。給料の引き上げ以上の付加価値を生み出すことが必須です。「より付加価値の高いものをより高く売る」を常に考え、行動・実現していくことが必要です。真剣に取り組めば、必ず結果が出ます。

本

■「新冷戦時代」に日本で起こること

【「ポスト冷戦」時代に日本で起きたこと。】
 バブル崩壊とほぼ同時に起きた日本のポスト冷戦は、金融危機とバランスシートの悪化に伴うデフレ、異常な円高(ピークは2011年10月:1ドル75.32円)、グローバル化に伴う産業の空洞化の三重苦でした。
【「新冷戦時代」に起こること、「日本大復活の時代」がやってくる?‼。】
 「新冷戦時代」の象徴的出来事として、著者は、台湾TSMCの熊本進出による、熊本の「日本のシリコンバレー」化を挙げている。
 熊本の状況を見乍ら、著者は「日本経済大復活」の条件が整ったとして、次の4つの事項を挙げます。
  ¨ 専制国家と民主主義国家の間のブロック化が進行し、世界の生産要素の供給と価格が大きく変わり、専制国家有利・日本不利から専制国家不利・日本有利へと、オセロゲームの様に、ひっくり返る。その例がフレンド・ショアリング・サプライチェーンです。日本が信頼されるパートナーとしてサプライチェーンの一角を占めます。
  ¨ 先端技術競争では、半導体製造技術、医療などの精密機械、工作機械など国際競争力を有する技術が多い。
  ¨ 嘗て、日本企業を苦しめた円高は終了し、賃金格差も縮小し、経済安全保障の面からもリ・ショアリングが進み、国内産業復活の条件が整った。
  ¨ バブル崩壊で悪化したバランスシートが著しく改善し、賃上げの条件が整った。

本

■「日本大復活」のチャンスを生かすには!(むすび)

 「日本大復活」は自然とはやって来ません。著者が指摘するように、安倍政権が努力するも達成できなかった、農業・医療・教育・労働・エネルギー等あらゆる分野における、効率と競争力を上げる構造改革が必要です。
 また、著者が“戻りつつある”と指摘する「未来の日本の大復活」に向けた、経営者及びビジネスパーソンの、アニマル・スピリッツを一層高めようではありませんか。

本

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

  http://sakai-gm.jp/index.html

【 注 】  著者からの原稿をもとに、できる限り忠実に掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

本

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【経営コンサルタントのお勧め図書】「貧しい国」日本から脱却 給料の上げ方 2308

2023-08-22 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】「貧しい国」日本から脱却 給料の上げ方 2308

 

経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

 

 【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。

 幸い、日本で最初に創設された経営コンサルタント団体である日本経営士協会には優秀な経営士・コンサルタントがいらっしゃるので、その中のお一人である酒井闊先生にお声をかけましたところ、ご協力いただけることになりました。

 それが、今日まで継続されていますので、10年余もの長きにわたって、皆様にお届けできていることに誇りを持っています。

 

本

■    今日のおすすめ

『給料の上げ方』

                    (デービッド・アトキンソン著 東洋経済新報社)

本

■世界第3位の「経済大国」日本は、「貧しい国」?(はじめに)

 紹介本の著者は、在日30年のイギリス人で、現在は京都にある小西美術工芸社の社長です。ゴールドマンサックス(日本)のアナリストなども歴任し、日本は勿論、イギリス、世界の経済、文化について深い洞察力を持っている経営者・学者です。菅政権においては成長戦略会議議員を勤めています。

 この著者の衝撃的な一言は、驚きと同時に、私の認識の甘さを覚えました。次がその一言です。「日本は世界第3位の『経済大国』。しかし一人当たりGDPでは世界35位、一人当たり労働生産性では世界39位、G7では何れも最下位(2021年)。チェコ、スロベニアなど日本と同じ順位のグループはつい最近まで中進国とみなされていた国ばかり。日本は、国民一人一人が決して豊かではない『貧しい国』である。」(OECD 38ヶ国中では、一人当たり労働生産性は29位と下位グループ〔図1〕。)

図1 pdfファイル ↓

http://glomaconj.com/joho/blog/sakai20230822kyuryounoagekata.pdf

 一人当たりGDPは次の式で表されます〔一人当たりGDP=GDP/人口=GDP/労働者×労働者/人口=一人当たり労働生産性×労働参加率〕。つまり、生産年齢人口が減少する中、高齢者と女性の就業者の増加により労働参加率の順位は横ばいですが、一人当たり労働生産性の順位は下がり続けています。〔図1〕を参照ください。

 ここで注意しておきたいのは、著者の言う『貧しい国』は、絶対的ではなく相対的なものだということです。〔図1〕を見ると、日本の順位(OECD)は1998年から2017年までの過去20年間21位前後で推移してきましたが、2018年は25位、2019年は26位、2020年28位2021年29位と急速に順位を下げています。〔注1〕のレポートにある様に、OECD 38ヶ国の中で、日本だけが停滞している間に、2019年には、レポートにある5か国に抜かれ26位に順位が下がりました。また、2021年にはポーランド、リトアニア、エストニアに抜かれ29位に落ちてしまったのです。

 〔注1〕「2015年から2019年まで4年間の一人当たり労働生産性の上昇幅は、日本が+1.2%に対して、トルコが+10.5%、スロベニアが+22.4%、チェコが+23.6%、韓国が+18.0%、ニュージランドが+12.3%となっている。4年前には10%以上もあった日本との乖離を埋められて逆転してしまった(第一生命経済研究所レポート2021.5.13より)。」

 この様に日本だけが伸び悩んでいる状況を変革し、「貧しい国」から「豊かな国」へ歩む道筋を、著者が示しています。

 著者の提言のポイントは「付加価値を上げる」「給料を上げる」の2点です〔注2〕。それは経営者、従業員双方の意識・行動変革により実現できるとします。次項で提言の一部をご紹介します。

 〔注2〕次の式から「付加価値」と「給料」の連関性を見て下さい。「一人当たり賃金(総賃金/従業員)=一人当たり労働生産性(付加価値/従業員)×労働分配率(総賃金/付加価値)。」日本の労働分配率は世界平均水準ですから、課題は一人当たり労働生産性「付加価値」を上げ、その上で、一人当たり「給料」を上げることです。

本

■「貧しい国」から脱却し「豊かな国」に向かうロードマップ

【目指す賃上げの水準ー年率4.2%以上-】

 著者は2種類の賃上げについて言及しています。

 一つがベース・アップ(含む初任給アップ)です。人口減少を考慮した場合、貧困化しないためには、2022年のGDPを生産年齢人口で割った一人当たり労働生産性(742万円)を2022年のGDPを2060年の生産年齢人口で割った一人当たり労働生産性(1,258万円)まで高め、GDPを2022年レベル以上とする必要があり、その為には、毎年、年率+1.4%以上〔注3〕のベース・アップと生産性の向上が必要とします。

 二つ目は定期昇給です。給与の上昇は52歳まで上昇し、年率+2.8%です(全国平均。厚労省データ)。この部分の企業の総支給額は変わりません。定年制により入れ替わるだけで企業視点での支給総面積は不変だからです。

 この二つを合わせると+4.2%です。これに実質賃金をマイナスにしないためにはインフレ率の上乗せが必要です。日銀が目指すインフレ目標2%を考慮すると+6.2%になります。

 〔注3〕著者は+1.4%の数字を算出する前提として、2060年の生産年齢人口を4,418万人(社会保障・人口問題研究所2012年1月推計〈出世中位、死亡中位〉)を使っています。2023年4月推計の5,078万人を使うと+1.1%となります(筆者コメント)。

【一人一人の行動で、給料を上げよう―従業員として取るべき行動―】

 著者は日本以外の多くの国で給与水準が上がっているのに対し、日本では30年間ほとんど上がっていない理由を2つ挙げています。一つは一人当たりの付加価値つまり労働生産性がほとんど上がっていないことです。二つ目はOECDの国では7割以上の労働者が給料を上げてもらう給料交渉をしますが、日本では給与交渉をする労働者は3割に止まっています。

 著者は、日本でも「1年に1回、経営者と社員がひざ詰めで面談し、従業員側の希望・要望・不満を聞き取り、給与の妥当性についても意見交換をすべき」と強調します。

 これからの人口減少時代には、給料を上げられない企業は、労働者から選択されず、雇用を確保できなくなると指摘します。経営者も労働者も給料を上げ続けることが出来る企業に変革する行動と実現を、真剣に求めていくべき時代なのです。

【従業員から「見限られる社長」ではなく「ついていくべき社長」になる

-経営者のとるべき行動ー】

 上述のとおり「労働者から選択される」企業でなければ、雇用を確保できない時代であることを認識し、経営者としての在り方を「ついていくべき社長の5つの特徴」として提言しています。是非、紹介本をお読み下さい。

【より付加価値の高いものをより高く売るー経営者、従業員の共通の行動-】

 経営者・従業員の共通課題は付加価値の向上です。給料の引き上げ以上の付加価値を生み出すことが必須です。「より付加価値の高いものをより高く売る」を常に考え、行動・実現していくことが必要です。真剣に取り組めば、必ず結果が出ます。

本

■「労働生産性」が今のままだと日本は崩壊する。今こそチャンス!(むすび)

 2023.4.26国立社会保障・人口問題研究所〈出生中位・死亡中位〉の人口推計によれば、生産年齢人口(15~64歳)は、2022年7,417万人、2060年は5,078万人(22年比▼32%)です。一方高齢者(65歳以上)は、3,605万人と3,643万人(22年比+1%)です。

 2060年のGDPは、GDPが生産労働人口により創出される付加価値との前提に立ち、一人当たり労働生産性と労働参加率が2022年と同じとして、単純計算をすると、2022年の550兆円比▼32%の376兆円となります。一方支える高齢者はほぼ横ばいです。これでは社会の仕組みは崩壊です。

 今、私達はその危機の入り口にいるのです。このGDPのマイナス174兆円(550-376)を、毎年+1.1%(著者の2012年人口推計の場合は+1.4%)の付加価値増加(併せてベースアップ)を、2060年迄の37年間継続して複利的に積み上げることにより、その累積額を以ってカバー出来るのです。こうして、この危機を回避できるのです。

 危機はチャンス。「付加価値」「給料」を上げ、日本を崩壊から救いましょう。

本

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

  http://sakai-gm.jp/index.html

【 注 】  著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

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【経営コンサルタントのお勧め図書】ファクトでPESTチェック 高橋洋一2023年版 2307

2023-07-25 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】ファクトでPESTチェック 高橋洋一2023年版 2307

 

経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

 

 【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。

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本

■    今日のおすすめ

『高橋洋一のファクトチェック2023年版』

                    (高橋洋一著 ワック文庫)

 

 

本

 

■    You Tubeチャネルが、書籍に(はじめに)
 

 紹介本は、You Tubeの「高橋洋一チャネル」の2021年から2023年3月までに配信した中から、40テーマにポイントを絞り、国内経済、国内政治、国際経済、国際政治の四つのジャンルに編成・編集し、書籍にしたものです。
 最近は音声認識を簡単かつ安価に、文字起しを出来る時代になりました。DX時代・SNS時代を象徴する書籍と言えます。
 この書籍の面白いところは、執筆のような文章ではなく、ナラティブな文章であることです。加えて、40テーマが232ページでナラティブされており、1テーマ当り5.8ページで簡潔に語られています。ちょっと一休みし乍ら、PESTのP(政治)とE(経済)のポイントを読み取ることが出来る“コラム”と言えます。
 それでは次項で「ちょっと一休みし乍らの『PEコラム』」の幾つかをご紹介しましょう。
本
■    ちょっと一休みし乍ら「P(政治)E(経済)コラム」をどうぞ

 

【実は日本は黒字なのに赤字に見せたい財務省―国債の仕組みから解説―】
 著者が言う「日本の財政は黒字」を数字で追ってみましょう。著者は国債の仕組みから黒字と説明します。日本国債の残高は1000兆円〈1079。以下〈〉は実数〉、、その内500兆円〈526〉は日銀が保有、残りの500兆円〈553〉は民間が保有する前提で説明します。
 その上で、日銀の保有分について、政府の支払い金利は、日銀から入る収入で支払うのでチャラ。民間の保有分についての金利支払いは、政府が保有する600兆円〈606〉の金融資産などの収入でカバーできるとします。
 加えて、返済・借換については、日銀保有分については借換債を渡すだけで良いし、また、民間分については政府保有金融資産などの処分で、何時でも返済できる状態の中で、借換できるので全く問題ないとします。(〈〉の実数は、令和5年3月財務省主計局「令和3年度『国の財務書類』のポイント」より引用)
 以上収支の面から黒字であることを見てきましたが、連結B/Sの面で見てみましょう。最新の連結B/Sを示す「令和3年度『国の財務書類』」によると、▲571兆円の資産・負債差額です。つまり純資産が赤字だと言っているのです。ここが「赤字に見せたい財務省」のキー数値です。しかし、著者によれば、政府純資産は黒字と主張します。この点についてのIMFの報告を見てみましょう。
 IMFの「Managing Public Wealth oct 2018」(公的機関のバランスシート:対GDP比 2016年)です。〔図1〕を参照ください。

 

図1 拡大(pdf)

 

IMF基準では、中央銀行の国債保有残高は、連結では相殺されるのです。IMF基準では、日本の純資産の赤字は3兆円。G7の中で、日本はカナダに次いで財政状態が良いのです(イタリアの日本以下は別途確認)。
 この点について著者は、外為特別会計の含み益23兆円や埋蔵金を加味すれば純資産はトントンないしはプラスとし、財務省の、赤字を強調し実態を明らかにしない姿勢に疑問を投げかけています。
 

【アベノミクス潰えて失われた20年がやってくる】
 日本の金融政策は、金融緩和を行うとインフレ率が上がり失業率が下がる「フィリップス曲線」理論と、インフレ率を上げても失業率が下がらない失業率の最低ラインNAIRU(自然失業率=完全雇用下における理論的失業率;〈注2〉)の考え方が背景にあります。現在は、安定的な経済成長と雇用状況(失業率と実質賃金)を目標に、NAIRUを2.5%、NAIRUを実現する安定的目標インフレ率を2%として金融緩和を継続しています。〈注2〉
 直近の、インフレ率(消費者物価とGDPデフレーター)、失業率、実質賃金について見てみましょう。2023年4月の消費者物価の前年比は、コアコア(除く生鮮食品・エネルギー)で+4.1%です。失業率は、2022年通年は2.6%、2023年1月は2.4%、2月2.6%、3月2.8%、4月2.6%です。実質賃金の前年比は、2022年▲1.0、2023年1月▲4.1%、2月▲2.9%、3月▲2.3%です。12か月連続のマイナスです。GDPデフレーターの前年比は、2022年は+0.2%、2023年1~3月期は+2.0%です。(GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP:GDPに計上される全ての財・サービスを含むため、消費者物価指数よりも包括的な物価指標と言えます。)
 著者は今の状況について次の様に説明しています。「見かけ上はインフレ目標を達成したように見えるけれど、GDPデフレーターで見ると達成していませんから、こういう時には積極財政と金融緩和が必要ですよ」「インフレ目標のターゲットに到達していないのに増税なんかすると、もう1回、失われた20年が来るかもしれない。」
 今後の金融政策の動向には、実質賃金のプラス圏での安定的な伸びとGDPデフレーターに注目したいですね。
 

【ようやく30年前に戻れたのに、円安の何が悪い?】
 著者は日経新聞の「悪い円安論」を次のように解説します。「日経新聞は円安だ!大変だ!と騒いでいた。・・日経がなぜこのようなスタンスをとるのか。それは、厳しい資本規制により、下手をすれば撤退と引き換えに工場からインフラからすべて取り上げられる中国をこれまでずっと押してきた。・・だから円安が悪い悪いと言わざるを得ないんだ。」
 一方、日経新聞は「消えた『悪い円安』、株高との好循環が再び」(2023.5.22日経朝刊)と題し、「2023年1月には、輸出物価が輸入物価を上回り、5月には株価も上昇し、『悪い円安』が消え、好循環がやってきた」とする記事で、辻褄を合わせています。
 最初から「円安の何が悪い」と言っていたのが著者です。著者は経済学と世界のファクトから、通貨安は「近隣窮乏化政策」と、次のように解説します。「通貨安は海外から文句が来ることはあっても、国内から止めることは国益に反する。これは国際機関での経済分析からも知られている。ざっくり言えば、10%の円安でGDPは1%程度高まる。その結果、税収増も望めるので、円安は抑えてはいけない。」(2022.9.8 J-castニュース 著者執筆より)
 間違ったマスコミや世論には左右されず、ファクトに基づく政策が遂行されることを期待したいですね。
 

【環境運動家のグレタちゃんは真っ赤な女の子】
 著者は次の様に語ります。「グレタさんは共産主義に転向したのかって言う人がいるけれど、・・もともとそうだったのが判りますよ。だって世界最大のCO₂排出国・中国のこと何も言わないじゃない。」
 この延長で著者は、環境問題に係る多くの学者・活動家の歴史を語ります。「それは30年前のソ連邦の崩壊に遡ります。ソビエト連邦が崩壊して共産主義の研究が出来なくなり、何をしようかと、かなりの人が環境問題に移ってきたのです。環境問題の延長線上にあるのが、環境問題にビジネス風味を付けたのがSDGsです。環境問題と共産主義の親和性は高いんですよ」と。
 環境問題、SDGsに於いて、資本主義・経済成長にマイナスとなる、原理主義的な側面のあることに注意したいですね。
本

■    知って得する「PEコラム」(むすび)
 一休みし乍らのコラムの散歩は如何でしたか。これからの政治・経済の行方を見るときの参考になるファクトチェックだったのではないでしょうか。
 

本

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

  http://sakai-gm.jp/index.html

 

 

【 注 】  著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

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【経営コンサルタントのお勧め図書】人口減少問題に打ち勝つ 「未来の年表」業界大変化/瀬戸際の日本で起こること 2306

2023-06-27 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】人口減少問題に打ち勝つ 「未来の年表」業界大変化/瀬戸際の日本で起こること 2306


 



経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。


 


 【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。


 幸い、日本で最初に創設された経営コンサルタント団体である日本経営士協会には優秀な経営士・コンサルタントがいらっしゃるので、その中のお一人である酒井闊先生にお声をかけましたところ、ご協力いただけることになりました。


 それが、今日まで継続されていますので、10年余もの長きにわたって、皆様にお届けできていることに誇りを持っています。


 


本


■    今日のおすすめ


  『「未来の年表」業界大変化/瀬戸際の日本で起こること』


                    (河合雅司著 講談社現代新書)


 



 


本


■ 人口減少は、未来の予測ではなく、確実に到来する確定的事実(はじめに)


 


 「未来の年表」シリーズは、2017年に初本「未来の年表(人口減少でこれから起こること)」が出版され、以降、「未来の年表2(人口減少日本であなたに起こること)」(2018年)、「未来の地図(人口減少日本で各地に起こること)」(2019年)、「未来のドリル(コロナが見せた日本の弱点)」(2021年)が出版されました。
 紹介本はシリーズ本の集大成として2022年12月に出版されました。著者の強調する点は『人口減少は「未来の予測ではなく、確実に到来する、確定的事実」である』及び『今直ちに、「日本人の底力」で対応すれば、衰亡か成長かの瀬戸際で、人口減少に打ち克てる』の2点です。
 それでは、確定的事実の一部を見てみましょう。
【20年後の「20代前半(20歳~24歳)」は▼26.1%】
 20~24歳の人口は、2021年の593万人が2041年には438万人と26.1%減少します。これは確定している事実です。一つの象徴的事実です。企業の活性化を図るには、企業文化・慣習を変えざるを得ないことは自明ではないでしょうか。
【2030年32億トンの需要に対し11億トン(36.0%)は運べない】
 日本ロジスティックシステム協会の報告書では、2015年77万人のドライバーが2030年には52万人と、▼32.3%になるとしています。人口減少後も高齢化要因などで物流需要が2030年には2015年の30億トンから微増の32億トンを見込みます。これに対し、2030年の供給は21億トンと、11億トン(36.0%)が運べない、とレポートしています。
 加えて2024年4月より、労働基準法36条(時間外労働の上限規制)が「自動車運転業務(年間上限960時間)」に適用され、労働時間が制約されます。「2024年問題」として政治的課題になっています。
【最も人手不足の厳しい建設業界に、「2024年問題」が追打ち】
 建設業界の人手不足は、低賃金・長時間労働から常態化しています。因みに2023年2月の厚生労働省の労働経済動向調査における労働者過不足判断D.I.( Diffusion Index〈不足の回答社数百分比)-(過剰の回答社数百分比〉)において56ポイントと、引続き、最も人手不足が厳しい業界です。ここに「2024年問題」が追打ちをかけます。建設業については、年間上限720時間の法規制(2019年)が、2024年4月まで猶予されていました。
 建設需要が横ばいと仮定し、建設業の労働時間を、製造業を下回る労働時間(5%の減少)とするには、新規に就業者を16万人増やす必要があります。加えて、国土交通省の建設業人手不足の将来推計によれば、コロナにより2万人減り、外国人労働者が3万人不足すると推計されており、2023年度中に合計21万人(16+2+3万人)の就業者の確保を要するのです。
 一方、インフラの老朽化が進み、建設後50年を超える施設の割合が2029年には52%になるとされています。建設業界の厳しい人手不足は、インフラの更新需要に対応できるのでしょうか。
 以上、確定的事実の一部を見てきましたが、紹介本では、28の業種・職種について、統計に基づき、人口減少による将来の行方を分析し記述しています。「エ!と驚きつつ、それはヤバイ!」と思う内容です。是非紹介本をお読みください。
 さて、近い将来到来することが確定的なリスクにどう対応したらよいのでしょう。『瀬戸際の日本企業が「人口減少に打ち克つ」には』を次項でご紹介します。
本
■    瀬戸際の日本企業が「人口減少に打ち克つ」には
 著者は、人口減少を前提として、その中で、日本社会が豊かでであり続けられるようにするための方策を見つけ出すことで「人口減少に打ち克てる」とします。その方策が「未来のトリセツ(10のステップ)」です。
 それは、「量的拡大モデルと決別する」、「残す事業とやめる事業を選別する」、「製品・サービスの付加価値を高める」、「無形資産投資でブランド力を高める」、「一人当たりの生産性を向上させる」、「全従業員のスキルアップを図る」、「年功序列の人事制度をやめる」、「若者を分散させないようにする」、「『多極分散』ではなく『多極集中』で商圏を維持する」、「輸出相手国の将来人口を把握する」の10項目です。詳細は是非紹介本をお読みください。
 「未来のトリセツ(10のステップ)」の要点は2つです。一つは「人口減少と高齢化に伴う一人当たりの消費が減るダブルの縮小からくる、国内マーケットの変化に合わせて、ビジネスモデルを変える」です。二つ目は「海外マーケットに本格的に進出するための準備を整える」です。
 ここで、海外マーケットへの準備をするに際しての留意点としての「輸出相手国の将来人口を把握する」を見てみましょう。
【輸出相手国の将来人口を把握する】
 国内需要が急速に減少する日本では、海外マーケットを求める必要があります。日本のGDPの貿易依存率(2020年)は12.7%と、ドイツの35.9%、イタリアの26.3%、カナダの23.8%を見れば、海外マーケット開拓の可能性は十分にあります。
 しかしここで留意すべき点は輸出相手国の将来人口です。
 国連の「世界人口推計2022」によれば、将来人口が大きな伸びを示すのは「サハラ砂漠以南のアフリカ」です。2022年11.5億人が2050年には20.9憶人、2100年には34.3憶人と同年の世界人口103.5億人の3分の1を占めます。
 また、インドなどがある「中央・南アジア」は、2020年は20.7憶人、2050年には25.4億人、ピークの2072年には27.2億人と人口激増エリアです。「欧米・北米」は2022年、2050年も11.2億人と横ばいです。
 一方、2022年最多の23.4億人の「東アジア・東南アジア」は、2034年23.4億人をピークに、2050年には23.1億人、2100年には16.5億人に落ち込みます。
 長期視点からは「サハラ砂漠以南のアフリカ」と「中央・南アジア」が狙い目となります。
 中国とインドを見てみましょう。中国の総人口と(高齢化率)は、2022年14.2億人(13.7%)、2050年13.2億人(30.1%)、2100年7.7億人です。インドは、2022年14.1億人(6.9%)、2050年16.7億人(16.7%)です。人口推移と高齢化率から、また、長期視点に立つならば、開拓すべきマーケットはインド、高齢者向けマーケットは中国となります。
本
■    人口減少、高齢化を経営改革のバネにして乗り切ろう(むすび)
 紹介本が示す28の業種・職種における人口減少・高齢化のリスクを参考に、10の対応ステップを活用し、少子高齢化に打ち克ちましょう。


本


【酒井 闊プロフィール】


 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
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【経営コンサルタントのお勧め図書】最新「ロジカル・シンキングがよくわかる本」 2305

2023-05-24 11:42:41 | 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】最新「ロジカル・シンキングがよくわかる本」 2305


 


【 注 】


 一部、誤記がありましたので部分修正しました。


 ご迷惑をおかけいたしましたが、今後ともよろしくお願いいたします。



経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。


 


 【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。


 幸い、日本で最初に創設された経営コンサルタント団体である日本経営士協会には優秀な経営士・コンサルタントがいらっしゃるので、その中のお一人である酒井闊先生にお声をかけましたところ、ご協力いただけることになりました。


 それが、今日まで継続されていますので、10年余もの長きにわたって、皆様にお届けできていることに誇りを持っています。


【 当ブログ運営者より】


 酒井先生には、毎月几帳面に当ブログにご寄稿下さっているだけでもありがたいと思っています。


 その上で、今回は、ロングセラーを続けています弊著を取り上げて下さり感謝以外の何ものでもございません。


 ありがとうございます。


本


■    今日のおすすめ


  『最新「ロジカル・シンキングがよくわかる本」』


                  (著者:今井信行 発行所:秀和システム)


 



 


本


■ K・K・D(経験・感・度胸)思考からの脱却を(はじめに)


 ロジカル・シンキングと聞いて、ピンとくる人はどれ位おられるでしょうか。私の周りの人に試してみましたが、まともに反応した人は、感覚的ですが、30人に一人位いでしょうか。
 そこで、私流に、出来るだけ紹介本の表現に沿いながら、ロジカル・シンキングを分かり易く述べてみたいと思います。
 ビジネスを戦いに例えます。戦いには武器が必要です。武器無しでK・K・Dで戦うのは、自己流・非論理思考ビジネスパーソンです。これに対し、ロジカル・シンキングという武器で武装し、突き進むのは、発展的・勝利型・論理思考ビジネスパーソンです。
 ここでロジカル・シンキングの概念を明確にするために、クリティカル・シンキングと対比してみましょう。
 著者はこれについて、別の著書での記述も併せて、次のように述べています。『ロジカル・シンキングは、信頼できる結論を導き出す「意思決定ツール」です。一方、クリティカル・シンキングは、現状をクリティカル、ゼロベース思考で考え、ロジカル・シンキングの「意思決定ツール」を手段とし、統合的に思考の手順を体系化し、組合せ、問題・課題に取り組む「思考技術体系」です。ロジカル・シンキングは簡単な課題解決に、クリティカル・シンキングは複雑な課題解決に向いています。』
 著者のこの記述は、私流に言い換えると、ロジカル・シンキングはブロックで、クリティカル・シンキングはブロック(以下ではツールと表記)を組立てて経営の仕組み(管理設備)を作る構築テクニックと言えるかもしれません。
 私がここで強調したいことは、良い仕組みを作る上でも、ツール単独の効能を高める上でも、良いツールを掘り起こし正しく活用することです。
 紹介本は、目的に合う良いツールを掘り起こし、効能を引き出す指南書です。つまり、良いツールの効能を的確に引き出す「心構え」(「思考基本」)、目的に適う良いツールと結びつく発想法を分類した「発想法の体系」(「思考手法」)、幅広い思考用の一般的ツールを体系化し有効な使い方を示す「ツールの体系と活用法」(「思考用具」)の3項目をロジカル・シンキングの基本要素として体系化しています。まさに、著者が言う「ロジカル・シンキング習得の近道」を具現化しているのです。
 紹介本は、ロジカル・シンキングの著書の中で、MECEで全体最適な体系化、網羅的、分り易さではナンバー・ワンではないでしょうか。
 次項では、他の著書では見られない「ロジカル・シンキングの体系的全体俯瞰」について述べます。
本
■    ロジカル・シンキングの全体を、体系的に俯瞰する


 


【ロジカル・シンキングを体系的に全体を俯瞰する】
 著者の言う「近道」である体系的全体俯瞰を具体的に見てみましょう。
 100を超えるロジカル・シンキング・ツール全体を一度に理解することは難しいです。全体を把握するには体系化・構造化が必須なのです。紹介本は、ロジカル・シンキングの「基本要素の3項目(上述)」を、それぞれMECEに適切に解析・分類し、ロジカル・シンキングの体系を構築しています〔図1〕。



図1



 まず「思考基本」です。ゼロベース、包括的な全体最適、MECE、新規性・創造性、プラス思考、体系化・構造化を挙げています。
 ここで、「思考基本」の有る無しで大きく変わる事例を上げましょう。「改善」「改革」の例で見てみましょう。「改善」は今までの延長線上での改良ですので、体験・経験を持ち寄ることが求められます。「改革」はこれまでの全てをリセットして新しく再構築することで可能になります。ロジカル・シンキングのスタートの段階で、ゼロベース思考にリセットしなければ、「改革」は成就しません。
 次は「思考方法」です。信頼できる結論を導き出す「意思決定ツール」を見つけるには、求める課題に相応する「思考方法」を明確に意識することが重要です。紹介本が上げる思考方法は、発散・収束、演繹・帰納、因果関係、仮説、階層(ヒエラルキー)、枠組み(フレームワーク)、選択肢(オプション)、過程(プロセス)の8思考です。
 最後に「思考用具」です。幅広い思考用の一般的ツールを包含できるように、階層型思考ツール(ヒエラルキー)、枠組型思考ツール(フレーム&マトリックス)、過程思考型ツール(フロー・プロセス)に分類し、集約・体系化しています。これにより、「思考用具」全体を俯瞰できる枠組みができます。紹介本の優れている特徴です〔図2〕。



図2



 ここで、ロジカル・シンキングの基本要素を3項目に体系化する理由を見てみましょう。
 それは、「求める課題」に応じて、「思考基本」を常に認識しながら、「思考方法」に相応しい、単独または組合せの「思考用具」を選択し、活用・思考し、最適解を得ることが出来るからです。
 最適解を得る一つの例を示しましょう。「7S分析による戦略検討表の例」です〔図3〕。この例示は、経営戦略立案を課題とするケースに於いて、戦略立案の要素が多岐に亘ることを考慮し、「思考方法」の中の枠組み(フレームワーク)思考に加え選択肢(オプション)思考が不可欠と考え、7Sのフレームと三次元マトリックス(枠組型思考ツール〈フレーム&マトリックス〉)を「思考用具」として選択し、「思考基本」の全てを意識しながら、思考・選択し、戦略を導く例です。得られた最適解は、クリティカル・シンキングを通して、最良の経営の仕組み(管理設備)の構築に繋がるでしょう。



図3



【詳細は紹介本をお読みください】
 ロジカル・シンキングについて、入口を見てきましたが、字数の関係で、ここで止めます。是非、紹介本を読み、その先に進み、「思考しながら体得」して下さい。
 特に、「思考基本」「思考方法」を踏まえた、ビジネス会話・交渉、プレゼンテーションについての教示は必読です。
本
■    ビジネスパーソン・ライフをスパイラルアップしよう(むすび)


 ビジネスパーソンは日々、会話、メール・チャット、会議・ファシリテーション・プレゼンテーション、課題との出会い、立案、レポート等に直面します。紹介本を読み物としてではなく、日頃からこれらの実務に用いながら、ロジカル・シンキングを「思考しながら体得」し、様々な分かれ道において、成功方向への道を歩み、ビジネスパーソン・ライフをスパイラルアップしましょう。


【 注 】


  図版は、下記URLにて、pdf形式でも見ることができます。


http://www.glomaconj.com/joho/blog/sakai20230523logicalthinking.pdf


 


本


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【経営コンサルタントのお勧め図書】「ファイナンス×事業数値化力」(著者:大津広一 発行所:日経BP) 2304

2023-04-27 10:43:59 | 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】「ファイナンス×事業数値化力」(著者:大津広一 発行所:日経BP) 2304

 

【 注 】

 一部、誤記がありましたので部分修正しました。

 ご迷惑をおかけいたしましたが、今後ともよろしくお願いいたします。

経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

 

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【 注 】

 本文中のリンクをクリックしますと図版資料をpdfファイル形式で開けます。

 リンクサイトがhttpsではなくhttpサイトですので、その際に警告表示が出ることがありますがクリックして下さっても大丈夫です。

本

■    今日のおすすめ

  「ファイナンス×事業数値化力」(著者:大津広一 発行所:日経BP)

 

 

本

■ まず、ファイナンスとアカウンティングの違いを理解しよう(はじめに)
 

 ファイナンス論の分野には資本市場論、証券投資論、コーポレートファイナンス、金融工学、行動ファイナンスなどがありますが、紹介本のファイナンスはコーポレートファイナンスを指します。以下、コーポレートファイナンスをファイナンスと表記します。
 ファイナンス(財務)とアカウンティング(会計)は、ビジネスマン向け講座などにおいては財務・会計講座の名前で使われている様に、財務・会計は一つのジャンルとして捉えられています。
 しかし、ファイナンス(財務)とアカウンティング(会計)について、紹介本は、「ファイナンスとアカウンティングの違い」を次表の様に示しています。

 

 アカウンティングとファイナンスの関係を車に例えると、「アカウンティングはルームミラー、ファイナンスはカーナビゲーションとフロントライト」と表せます。
 ファイナンスの目的である企業価値の最大化は、ルームミラー(アカウンティング)で状態確認を的確に行い、その情報をカーナビゲーション(ファイナンス)にインプットし、カーナビゲーション(ファイナンス)を使って、「稼ぐ力=資本生産性・ROICの向上戦略」に加え、コーポレートガバナンスコード「原則5-2経営戦略や経営計画の策定・公表」にある「自社の資本コスト(WACC)」を的確に把握し、その上で、キャッシュフローを中心とする将来の事業計画を構築・実行・実現をします。併せて、フロントライト(ファイナンス)を使い事業環境を探索し「成長戦略(含むポートフォリオ戦略)」を立案・実行・実現を並行して行うことが不可欠です。
 ファイナンスのイメージを描いて頂けましたでしょうか。ファイナンスの機能である企業価値の算出、投資案件の評価、事業計画の作成(事業数値化力)などについては紹介本をお読みください。紹介本で,カーナビゲーション&フロントライト(ファイナンス)のcontentsを体験できます。
 本稿では、ファイナンスの大切な基本について、次項で記させて頂きます。それは、「真の企業価値EVAはWACCを上回るROICから生まれる」です。
本
■    真の企業価値EVAはWACCを上回るROICから生まれる

 

【ファイナンスの基本】
 「会計は見てもファイナンスを見ない日本企業」と言われている様に、日本では会計によるコミュニュケーションは出来ても、ファイナンスには弱いのではないでしょうか。しかし、将来を切り開くには、ファイナンスは重要です
 ファイナンスの起点であり是非とも押さえておきたい重要な概念をご紹介します。加えて、ファイナンスへのハードルを下げると同時に、ここからスタートして欲しい基本です。それはEVAです。EVAは次の式で表されます。(WACCについては【スライド4】を参照ください。)
 EVA=NOPAT-WACC×投下資本=税引き後営業利益-資本コスト
    =ROIC×投下資本-WACC×投下資本=(ROIC-WACC)投下資本
この式の持つ意味を考えてみましょう。それは、
  ¨    EVAは、PLとBSの一体化であり、アカウンティングとファイナンスの架け橋です。【スライド1】を参照して下さい。
  ¨     http://www.glomaconj.com/joho/blog/sakai20230425-1.pdf
  ¨    上記数式の(ROIC-WACC)をEVAスプレッドと言います。EVAをプラスにするためには、ROICをWACCより高くする(EVAスプレッドをプラスにする)必要があることがわかります。【スライド2】を参照してください。
  ¨     http://www.glomaconj.com/joho/blog/sakai20230425-2.pdf
     「EVA経営の花王の苦境(日経新聞2023.3.4)【スライド3】」は、EVAスプレッドの視点が欠けていたことが原因ではないでしょうか。ファイナンスの視点から言えば、EVA経営にROIC経営、EVAスプレッドを加えた3点セットの同時導入が良かったと思います。
      http://www.glomaconj.com/joho/blog/sakai20230425-3.pdf
     花王といえば、市場の声を誰もが検索できる「エコーシステム」が、「ハイパーテキスト(多組織連結)型組織」の好事例として、「知識創造企業(野中郁次郎著)」で採りあげられていました。この様な優れたマネジメントに加え、ファイナンスの視点が必要と思いました。

【ファイナンスの壁WACCは簡単に超えられる】
 WACCは多くの人にとって、逃げていた壁ではないでしょうか。特に“β”と“株式プレミアム”が高い壁になっています。でも、簡単です。【スライド4】によりWACCの算出方法をお示しします。
 “株式プレミアム”は公表される数値を使えば済みます。簡易的には、現時点では、5.5%を使えば良い事が分かりました。(【スライド4】の【注1】参照ください。)
   http://www.glomaconj.com/joho/blog/sakai20230425-4.pdf
 “β”は5年間のTOPIXと対象企業の月次株価増減データ(WEBから簡単に取得できる)の散布図と回帰分析により簡単に得られます。“β”は回帰直線の傾きなのです。「やってみればWACCは難しくない」と思いました。
 

【中小企業におけるWACC】
 中小企業は非上場ですので、株主資本コストの考えがありませんが、EVA・ROIC・WACC等のファイナンス的視点は、中小企業の企業経営においても有効ではないでしょうか。
 中小企業庁の『「経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン(2009.2.9)」【スライド5】』において示されているWACCも、遺留分額計算の時だけではなく、ROIC経営や成長戦略(ポートフォリオ戦略)と併せて活用することで、将来の事業計画構築及び生産性向上戦略において活用できる指標ではないでしょうか。
   http://www.glomaconj.com/joho/blog/sakai20230425-5.pdf
本
■    「ファイナンスに弱い日本」から脱却しましょう(むすび)

 ファイナンスでは3つのキーワードが有ると言われています。ROICとWACC(いずれもEVAの構成要素)と成長戦略(ポートフォリオ戦略を含む)です。
 3つのキーワードを中点とする企業経営は、必ず良い結果を生むと思います。アカウンティングに止まらず、ファイナンスにも目を向けましょう。
 

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【酒井 闊プロフィール】

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【経営コンサルタントのお勧め図書】「ファイナンス×事業数値化力」(著者:大津広一 発行所:日経BP) 2304

2023-04-15 14:13:04 | 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】「ファイナンス×事業数値化力」(著者:大津広一 発行所:日経BP) 2304

経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

 

 【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。

 幸い、日本で最初に創設された経営コンサルタント団体である日本経営士協会には優秀な経営士・コンサルタントがいらっしゃるので、その中のお一人である酒井闊先生にお声をかけましたところ、ご協力いただけることになりました。

 それが、今日まで継続されていますので、10年余もの長きにわたって、皆様にお届けできていることに誇りを持っています。

【 注 】

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■    今日のおすすめ

  「ファイナンス×事業数値化力」(著者:大津広一 発行所:日経BP)

 



本

 

 

 

本

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

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【 注 】  著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

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【経営コンサルタントのお勧め図書】『世界インフレの謎』 世界インフレの原因は戦争? 2303

2023-03-28 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】『世界インフレの謎』 世界インフレの原因は戦争? 2303

経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

 

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本

■    今日のおすすめ

  『世界インフレの謎』   (著者:渡辺 努 発行所:講談社現代新書)

 


本

■ 世界インフレはウクライナ戦争以前に始まっている(はじめに)


 著者は、日本銀行出身の金融政策の専門家です(経済諮問会議特別セッション8人の一人。東大大学院教授、キャノングローバル戦略研究所研究主幹)。
 大規模データによる経済分析を得意とする著者の「世界インフレ」の分析を是非知って頂きたい思いで紹介本を採りあげました。
 世界のインフレの動きをコアCPI(食品とエネルギーを除く消費者物価指数/日本はコアコアCPI)を見てみましょう。


 【図表1】を見てください(ここをクリック)。

 【図表1】から分ることは、日本を除き、アメリカ、イギリス、ユーロ圏のコアCPIについて同じ動きを確認できます。それは2021年半ばからインフレが起こっていることです。2022年2月のロシアのウクライナ侵攻以前からインフレが起こっているのです。ウクライナ侵攻の影響は若干みられるものの、一つの要因ではあっても、本質的な要因ではありません。


 著者は、世界経済の代表とも言える、アメリカに焦点を絞り、著者のデータ(【図表2】「米国のフィリップス曲線」)と「フィリップス曲線」理論に基づき、「世界インフレ」の要因を探索しています。著者の探索のプロセスを見てみましょう。


 【図表2】「米国のフィリップス曲線」を見てください(ここをクリック)。
 【図表2】は、縦軸にインフレ率(コアCPI)横軸に失業率を置き、2007年1月~2020年12月を●印で、2021年1月~2022年5月を■印でプロットしたものです。
 【図表2】は重要なことを示しています。それは、2007年1月~2020年12月の168個(14年×12ヶ月)の●印は、『2.1%-0.083×失業率』で表される「フィリップス曲線」理論の点線の直線の範囲で変動していることが判ります。即ち需要が上がり景気が良くなれば失業率が下がる、一方需要が下がり景気が悪くなれば失業率が上がる「フィリップス曲線」理論通りに動いていたのです。


 しかし、2021年1月~2022年5月の17個(1年5か月)の■印は、3個(2021.1~2021.3)を除き「フィリップス曲線」理論の点線直線から大きく外れている事が判ります。従来の「フィリップス曲線」理論の動きに沿わない、何らかの要因がコアCPIを動かしていることが判ります。


 著者は「フィリップス曲線」理論を「インフレ率=インフレ予想-a×失業率+X」の数式で現し、このXを「ファクターX」と呼び、Xが大きければ「フィリップス曲線」理論から外れた動きになるとします。このXの解明が、「世界インフレの謎」を解くことになります。


 それでは次項で『「ファクターX」は何か』を見てみましょう。

本

■ 「ファクターX」はコロナの世界的な感染拡大(パンデミック)の後遺症


 著者は、「ファクターX」について次の様に結論付けます。


 『ロシアのウクライナ侵攻と資源高は本質ではない。2022年2月の侵攻より前からすでに米欧でインフレが進んでいた。その本質は新型コロナウイルスのパンデミックの後遺症だ。これは「①個人消費がサービスからモノにシフトした」「②感染拡大で職場から離れた労働者が戻ってこない」「③グローバル化の反転-供給網の機能不全-」の3つの事象に集約できる』と。


 三つの事象について、以下で詳しく見てみましょう。


【個人消費がサービスからモノにシフトした】
 【図表3】と〔補足資料3-①、3-②〕を見てください(ここをクリック)。
 【図表3】は、コロナのパンデミックが始まった2020年1月から2022年3月の間の、サービス消費が4%減り逆にモノ消費が4%増えたことを示しています。


 つまり、過去のサービス消費比率の拡大に終止符を打ちモノ消費比率が大きく伸びた変容を、〔補足資料3-②〕ではおぼろげにしか見えない変容を、つまびらかにしたのです。


 この消費行動変容による、モノの需要増に伴う供給が追い付かず、異常インフレとなったのです。特に、〔補足資料3-①〕が示す通り、耐久財需要が著しく増えたのです。その例としては、パンデミックへの恐怖から、スポーツ・ジムを退会し自転車を購入して体を鍛えた例、在宅勤務の急増に伴う耐久財需要増などを挙げることが出来ます。


【感染拡大で職場から離れた労働者が戻ってこない】
 最近のアメリカの労働市場に異常値が出ています。それは、インフレ率を上げても失業率が下げ止まる失業率の最低ラインNAIRU(Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment:自然失業率=完全雇用下における理論的失業率)の理論が通用しない事態が起こっています。アメリカではNAIRUは4%とされていましたが、2023年1月の失業率は3.4%と大きく下回ったのです。


 この異常値の背後にあるメタは、著者が指摘するパンデミックの「後遺症」である「大退職(Great Retirement)」と呼ばれている事象です。


 【図表4】と〔補足資料4-①、4-②、4-③〕を見てください(ここをクリック)。


 パンデミックの「恐怖心」などが労働者に広がり、労働者の「大退職」が起こります。米国非労働力人口(職を求めない)が、コロナ前の2020年2月は9505万人でしたが、コロナ直後の2020年4月には1億354万人と849万人増加します。しかし、コロナが落ち着いた2022年5月は約9930万と425万人が戻っていないことが分かります。OECDでも同様な傾向がみられます。【図表4】と〔補足資料4-②の「参考資料」〕参照。


 また、労働参加率からみた場合、264万人(1%)が非労働人口に留まったまま戻って来ないと試算できます。〔補足資料4-②〕参照。


 この事象が、失業率の異常な低下、労働市場の逼迫、賃金の上昇を招き、インフレの要因となっているのです。


 著者によれば落ち着くまでは相応の時間を要するとしています。労働市場の落着きは、求人件数と採用件数の「GAP」が200(万件)を下回ってからでしょうか。注目したいです。〔補足資料4-③〕参照。


【グローバル化の反転 -供給網の機能不全-】
 この事象は、中国を主として起こっています。ゼロコロナ政策による都市・職場封鎖により生産・物流の停滞と供給網の不全が起こり、世界的にサプライチェーンの停滞を起こし、製品の減産と価格の上昇を引き起こしたことは周知の事象です。


 「突然」起こったことは、一般的には、時の経過で落ち着いてきます。しかし、「グローバル化の反転」の再発を恐れ、米企業の92%の企業が数年内に「リショアリング(生産拠点の米国内または近隣国への移転)」を計画している(A・T・カーニー調査)ことなどを考慮すると、パンデミックの終息後も以前のトレンドに戻ることは難しいと思われます。

本

■ 日本がデフレから脱却するチャンス-失われた40年からの脱却-(むすび)


 「世界インフレ」のメタが良く判りましたね。著者は、「世界インフレ」の波が日本に押し寄せている今こそ、デフレ体質から脱却するチャンスと力説します。


 まずは、名目賃金を上げ、その後実質賃金を上げ、好循環経済社会を実現することです。特に、実質賃金を上げる(賃上げと同時に生産性を上げる)ことを可能にするのは経営の力です。経営力による生産性向上の例:伊藤忠が「朝型勤務制度」の採用により2021年度の労働生産性を2010年度比5倍に(2023.2.26日経電子版)。

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【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
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【経営コンサルタントのお勧め図書】 世界と日本経済大予測2023-24 2302

2023-02-28 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】 世界と日本経済大予測2023-24 2302

経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

 

 【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。

 幸い、日本で最初に創設された経営コンサルタント団体である日本経営士協会には優秀な経営士・コンサルタントがいらっしゃるので、その中のお一人である酒井闊先生にお声をかけましたところ、ご協力いただけることになりました。

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本

■    今日のおすすめ

  『「世界と日本経済大予測2023-24」Economic risk to business and investment』
                                       (渡邉哲也著 PHP研究所)

 


本

■  地政学的視点から見る50の国内、国外のリスク(はじめに)


 著者は、YouTube“文化人放送局”の「渡邉哲也show」等で活躍する、ネット時代の経済評論家です。
 ところで、電通の調査レポート「2021年の広告費」(2022.2.24発表)によれば、インターネット広告費が39.8%とマスコミ四媒体の広告費(テレビ・新聞・ラジオ・雑誌)36.1%を上回りました。まさに、本格的ネット時代が到来しています
 紹介本は2022-23年に予測される50のリスクについて短く論評しています。著者の経済大予測シリーズは2020年、2021年、2022年に続く4作目です。2020年予測本以来「高い的中率」で話題になっています。
 紹介本の2023年本で著者は、読者に向けて、「インターナショナリズム(お互いの国の国柄・文化などを理解・許容を通じて進化する国際社会)」と「グローバリズム(国柄・文化などの理解・許容を超えた一つのルールで世界が動く体制)」の違いを明確に理解して読み解いて欲しいと訴えると同時に、グローバリズムの失敗と終焉を強調しています。大切な視点として受け止めたいです。
 それでは、2023-24年に予測される50のリスクの中から注目したリスクを次項でご紹介します。

本

■ 注目のリスクを見てみよう

 

【ロシアVSウクライナ-飛び地「カリーニングラード」とバルト海に注目-】
 リトアニアとポーランドに囲まれたロシア領カリ-ニングラードへのロシアからの物資は、EUのロシアへの経済制裁以前は、2004年のリトアニアのEU加盟当時にロシアとの間で締結された、輸出入の手続きを取らずにロシアから鉄道やトラックで運ぶことができる、協定に基づきリトアニア経由の鉄道・道路運送で運ばれていました。
 しかし、リトアニアはEUのロシアへの経済制裁を遵守し、貨物列車輸送、道路輸送いずれも禁止しました。これに対しロシアは『2004年の協定を破るなら「軍事紛争に発展しうる」』と反発し、禁止は道路運送のみとなっています。
 この様に、EU(リトアニア)は、譲歩したように見えますが、今後のロシアの侵略次第では再び通過を禁じる「キラーカード」を手元に残しています。
 カリ-ニングラード(ドイツ領時代のケーニヒスベルク;哲学者カントの生誕地)にはロシアのバルト艦隊の本拠地があり、核兵器搭載可能なイスカンデルも配備されています。EUの喉元に突き付けられている軍事拠点です。
 ロシアの弱体化(欧米メジャーの撤退によるロシアのエネルギー産業は、原油・天然ガス鉱区の探鉱・開発・生産・輸送などにおいて、様々な支障がこれから表出)による『カリ-ニングラードから「ロシア軍撤退」』の可能性、2023年のフィンランド・スウェーデン2か国のNATO正式加盟により『バルト海に面した国がロシアを除き全てNATO加盟国になることでの監視強化と行動制限による「バルト艦隊の弱体化」』の実現、等の地政学上の変化に注目です。


【中国の半導体不足-「世界の工場」の座が危ない-】
 2,022年10月米国が「半導体技術の対中禁輸」を発表した。米国で製造された半導体や製造装置だけでなく、米国の技術を使って第三国で製造された半導体や製造装置も規制の対象となった。
 半導体関連で、米国技術を含まない製品は皆無です。中国において半導体を作るための設備・技術に加え半導体そのものが規制の対象になる可能性があり、中国にとっては死活問題です。さらに言えば、先端コンピューティング関連の半導体製品・サービスの米国の在中国子会社向けの輸出に関する一時的許可の終わる2023年4月以降は、在中外国メーカーですら組み立てなどが出来なくなる可能性があります。
 米国は、半導体以外の先端分野の対中規制を強めていく可能性があり、日本を含む外国企業の中国における生産が難しくなることが考えられます。


【ルソン島にスービック基地復活-フィリピンの英断で中国包囲網が完成する-】
 フィリピン北部のスマトラ島のスービック湾の海軍基地が米国から返還されて2022年11月24日で30年になりました。
 ここで米比二国間の軍事協定の歴史を見てみましょう。
 1951年8月、アメリカ合衆国とフィリピンの間で「米比相互防衛条約」が締結された。(同年9月には、サンフランシスコ講和条約と日米安全保障条約、53年の米韓相互防衛条約、54年の米華相互防衛条約〈台湾の蒋介石政権間との条約〉が締結されている。)
 一方米軍基地に関しては、1947年の「米比基地協定」がある。この基地協定に関しては、何回かの協定の改定を経て、1991年が使用期限とされていた。加えて1987年の比国憲法の改正により、延長は議会上院の承認が必要とされた。
 米比基地協定の失効期限となる1991年に、米空軍のクラーク基地や米海軍のスービック基地の近くにあるピナツボ山が大噴火し、クラーク基地が火山灰や泥流により大きな被害を受けた。そのような状況の中、米比両政府は、スービック基地の使用を10年間延長する内容を含む「米比友好協力安全保障条約」を締結し、憲法の規定に基づき上院の批准を求めたが、上院は拒否をした。 これにより、米軍は基地使用の根拠を失うこととなり、翌1992年にはフィリピンから完全撤退することになった。
 米軍撤退後の1995年に、中国による南沙諸島のミスチーフ礁の占拠など国際情勢の変化もあり(2016年7月、国際司法裁判所が比国の主権を認定)、米比両国は1998年に「訪問軍地位協定」を締結し、関係の再構築を行った。加えて、2014年には事実上の基地使用協定となる「米比防衛協力強化協定」を締結し、現在、 米軍は5つのフィリピン軍基地を使用している。
 2022年11月、米ハリス副大統領が、2022年6月に大統領に就任したマルコスと会談し、比国における米軍基地の増強で合意。マービック海軍基地の早期再開が見込まれる。
 これにより、フィリピンのマービック⇔台湾⇔日本の沖縄⇔日本本島の対中前線が出来ることになります。今後の、日本の対比関係にも注目です。
 2023年1月4日マルコス大統領が訪中しましたが、内容は「交渉継続」表明に止まっており、前任の親中・ドゥテルテ大統領とは異なり、米国との良好な関係は維持されると思料します(筆者所見)
 (追記)2023年2月2日、米国とフィリピン両政府は(オースティン米国防長官とフィリピンのガルベス国防相が会談)米軍がフィリピンで使える拠点を4カ所増やし計9カ所にすると発表した。台湾に近いフィリピン北部(マーベリック)などが候補とされる。(2023.2.2日経電子版)

本

■ 予測されるリスクをチャンスに(むすび)


 紹介本の予測する50のリスクを参考に、ビジネス・チャンスを掴みましょう。

 

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【経営コンサルタントのお勧め図書】 2023これからの日本の論点 日経大予測 2301 改訂版

2023-01-24 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】 2023これからの日本の論点 日経大予測 2301 改訂版



 



経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。


 


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  【 注 】


    初版で、安倍元首相の文字が変換ミスをしておりました。


    読者および安倍元首相の関係者の皆様に失礼を致しました。


    ここに改訂版をお届けします。


 


本


■    今日のおすすめ


 


  『日経大予測「2023これからの日本の論点」』
                                  (編著:日本経済新聞社 発行:日本経済新聞出版)


 




本


■  2023年の初めにP・E・S・Tの論点を整理しておこう(はじめに)



 紹介本「2023これからの日本の論点」は、「世界はこれからどうなる」「日本はこれからどうなる」「企業はこれからどうなる」「アジア、欧州はこれからどうなる」の4分野22論点を展開します。
 2023年は、ウクライナ侵略とロシアの行方、ドイツをはじめとした欧州のロシアへのエネルギー依存への破綻とそれによる世界的インフレ・スタグフレーションの行方、脱ロシアの中でのGX(脱炭素)の行方、民主主義陣営と中露をはじめとする強権国家との分断による「新・冷戦」の行方など、2019~2022年のコロナの混乱を超える多くの問題を抱える、まさに先が見えないVUCAの時代と言えます。その中で注目した視点を次項で見てみたいと思います。


 


【 発行者付注 】 PEST分析
  https://ja.wikipedia.org/wiki/PEST%E5%88%86%E6%9E%90

本
■    2023年の注目情報はこれ


 


【貿易・投資の枠組みをめぐる米中対立】
 現時点での、世界の貿易・投資の枠組みとしてEU、TPP、RCEP、IPEFがあります。ここ1年余りの、貿易・投資の枠組みの動きを見てみましょう。
 2018年3月にTPP11として発効したTPPは、参加国の世界GDPに占める比率は13%、参加国の人口は5億人です。TPPについては中国の加盟申請があり、参加基準のクリアーが障壁となり難しいとされますが、注目されています。
 2022年1月1日に発効したRCEPは、中国を中心とする経済圏の国々15ヶ国で構成され、参加国の世界GDPに占める比率は30%、参加国の人口は23億人です。
 1993年11月1日に発効したEUは、2021年1月1日の英国離脱の移行期間が終了した時点で、27ヶ国になりました。参加国の世界GDPに占める比率は17%、参加国の人口は5億人です。
 2022年5月23日の日米首脳会談を機に立上ったIPEFはアメリカ主導の貿易・投資の枠組み作りを目指しますが、2022年9月9日の参加国閣僚会議で、今後の方向性が合意されたものの、具体的な枠組みには至っていません。参加国の世界GDPに占める比率は40%、参加国の人口は25億人です。
 この様に、世界の貿易・投資の枠組みにおいてアメリカを中心とする米・日・欧陣営と中国との対立が強まる中、日本政府の貿易・投資担当の官僚が目指す野心的な案「TPP+EU+アメリカの統合EPA」に期待したいですね。TPPとEUがまとまれば、巨大な貿易圏(世界GDPの30%)が誕生し、アメリカは自国が不利な立場に置かれることから、アメリカが加わる可能性が出て来ます。因みに、「TPP+EU+アメリカの統合EPA」の参加国の世界GDPに占める比率は54%、参加国の人口は14億人です。中国を主体とするRCEPのGDP比30%を大きく上回ることになります。



【経済安全保障でグローバリゼーションは終わる】
 グローバリゼーションの歴史を、第二次大戦後の主な歴史的事実から見てみましょう。1948年GATT(関税と貿易に関する一般協定)体制がスタート、1955年9月に日本GATTに加盟(1559年以降は理事国)、1973年G7がスタート、1985年プラザ合意、1991年ソ連崩壊による冷戦の終結、1993年EUが発足、1995年1月WTO(世界貿易機関:World Trade Organization)が発足(GATTを吸収、協定から国際機関への転換に伴い、ルールの範囲も、モノの関税率だけでなく、投資や知的財産、サービス、防衛など幅広い分野を対象となる)、2001年中国がWTOに加盟、などを挙げることが出来ます。
 グローバル化の推移を、世界の貿易量の世界のGDPに占める比率の推移を見てみましょう。()は歴史的事項。
 1960年代11%程度、2000年23%、(2001年中国WTO加盟)、2008年30%、(2010年中国が日本を抜きGDP世界2位へ)、(2018年トランプ政権による米中貿易摩擦がスタート)、2021年25%です。
 この数値から読み取れることは、2001年の中国のWTO加盟を機に、貿易量が拡大し、更には、中国の世界の工場としての地位が拡大し、世界のグローバル化が進みました。2010年には中国は日本を追い越しGDP世界2位へと躍進します。しかし、2018年に始まった米中貿易摩擦などにより、貿易量のGDP比率の低下が始まり、グローバル化にブレーキが掛り始めている事が読み取れます。
 2022年には、ロシアのウクライナ侵略に加え中国の人権問題や軍事的拡大リスク等から、経済安全保障の意識が高まり、民主主義国家vs独裁国家の分断が急速に拡大しています。自由貿易を推進するWTO協定にある唯一の例外既定、「安全保障上の懸念がある場合」、を適用した制裁が拡大しています。2022年12月12日、中国は、アメリカが「安全保障」条項を悪用し半導体の輸出規制をしているとして、WTOに提訴しました。解決は難しいでしょう。
 ロシア、中国の強権的・拡張的リスクは収まりそうもありません。それに対抗する米・欧・日の対露・対中制裁は深まる一方です。まさにポスト・グローバリゼーションの時代に突入しています。



【文化は戦略にまさる VUCA時代の企業経営】
 紹介本は「VUCAワールドにさらされる日本」を見出しとする解説で、現在、世界が「VUCAワールド」にある裏付けとして「“GEPU”Index(“世界経済政策不確実性”指数)」 〔図表:注釈付きグローバル EPU インデックス〕を引用し、2022年にはウクライナ侵攻などの要因で、1997年~2015年までは100程度の不確実指数が、300にまで上昇していることを指摘します。その中で日本も、経済面では米中対立やウクライナ侵攻に伴うインフレリスクや円安の影響を受け、また社会面では安倍元首相の銃撃事件が発生するなど、VUCA的な展開が拡大していると指摘します。
 この様な環境下における企業経営の在り方について、マイクロソフト社の2014年に就任したナデラGEOによる、「フィクスド(型にはまった)マインドセット」から「グロース(成長志向の伸び伸びとした)マインドセット」への転換に伴い、クラウドビジネス等への快進撃をもたらしたこと(GAFAMの株価時価総額で4位からアップルに次ぐ2位へ)や、ソニーの「弱いつながり」による新たなビジネスの創出に成功している例を挙げています。
 VUCA時代をしたたかに生きるための、「企業文化の変革を通じた、社員自ら主体的に働く生き生きとした組織風土を築き上げ、組織力を高め、『時代を先導できる力』の創出」により、一つ一つの事象に臨機応変に対応していく組織能力が必要と指摘します。

■    2023年の企業経営のキーワードは“アジャイル”(むすび)


 2023年は2022年にも増して「不確実性の時代」になります。早急に、「現状把握・分析⇒仮説立案・検証⇒意思決定・アクションプランの策定」をし、アクションをアジャイルに実行する時ではないでしょうか。


 


本


【酒井 闊プロフィール】


 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。


  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm


  http://sakai-gm.jp/


 


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【経営コンサルタントのお勧め図書】 2023これからの日本の論点 日経大予測 2301

2023-01-24 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】 2023これからの日本の論点 日経大予測 2301

 

 

経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

 

 【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。

 幸い、日本で最初に創設された経営コンサルタント団体である日本経営士協会には優秀な経営士・コンサルタントがいらっしゃるので、その中のお一人である酒井闊先生にお声をかけましたところ、ご協力いただけることになりました。

 それが、今日まで継続されていますので、10年余もの長きにわたって、皆様にお届けできていることに誇りを持っています。

本

■    今日のおすすめ

 

  『日経大予測「2023これからの日本の論点」』
                                  (編著:日本経済新聞社 発行:日本経済新聞出版)

 

 

本

■  2023年の初めにP・E・S・Tの論点を整理しておこう(はじめに)

 紹介本「2023これからの日本の論点」は、「世界はこれからどうなる」「日本はこれからどうなる」「企業はこれからどうなる」「アジア、欧州はこれからどうなる」の4分野22論点を展開します。
 2023年は、ウクライナ侵略とロシアの行方、ドイツをはじめとした欧州のロシアへのエネルギー依存への破綻とそれによる世界的インフレ・スタグフレーションの行方、脱ロシアの中でのGX(脱炭素)の行方、民主主義陣営と中露をはじめとする強権国家との分断による「新・冷戦」の行方など、2019~2022年のコロナの混乱を超える多くの問題を抱える、まさに先が見えないVUCAの時代と言えます。その中で注目した視点を次項で見てみたいと思います。

 

【 発行者付注 】 PEST分析
  https://ja.wikipedia.org/wiki/PEST%E5%88%86%E6%9E%90

本
■    2023年の注目情報はこれ

 

【貿易・投資の枠組みをめぐる米中対立】
 現時点での、世界の貿易・投資の枠組みとしてEU、TPP、RCEP、IPEFがあります。ここ1年余りの、貿易・投資の枠組みの動きを見てみましょう。
 2018年3月にTPP11として発効したTPPは、参加国の世界GDPに占める比率は13%、参加国の人口は5億人です。TPPについては中国の加盟申請があり、参加基準のクリアーが障壁となり難しいとされますが、注目されています。
 2022年1月1日に発効したRCEPは、中国を中心とする経済圏の国々15ヶ国で構成され、参加国の世界GDPに占める比率は30%、参加国の人口は23億人です。
 1993年11月1日に発効したEUは、2021年1月1日の英国離脱の移行期間が終了した時点で、27ヶ国になりました。参加国の世界GDPに占める比率は17%、参加国の人口は5億人です。
 2022年5月23日の日米首脳会談を機に立上ったIPEFはアメリカ主導の貿易・投資の枠組み作りを目指しますが、2022年9月9日の参加国閣僚会議で、今後の方向性が合意されたものの、具体的な枠組みには至っていません。参加国の世界GDPに占める比率は40%、参加国の人口は25億人です。
 この様に、世界の貿易・投資の枠組みにおいてアメリカを中心とする米・日・欧陣営と中国との対立が強まる中、日本政府の貿易・投資担当の官僚が目指す野心的な案「TPP+EU+アメリカの統合EPA」に期待したいですね。TPPとEUがまとまれば、巨大な貿易圏(世界GDPの30%)が誕生し、アメリカは自国が不利な立場に置かれることから、アメリカが加わる可能性が出て来ます。因みに、「TPP+EU+アメリカの統合EPA」の参加国の世界GDPに占める比率は54%、参加国の人口は14億人です。中国を主体とするRCEPのGDP比30%を大きく上回ることになります。

 

【経済安全保障でグローバリゼーションは終わる】
 グローバリゼーションの歴史を、第二次大戦後の主な歴史的事実から見てみましょう。1948年GATT(関税と貿易に関する一般協定)体制がスタート、1955年9月に日本GATTに加盟(1559年以降は理事国)、1973年G7がスタート、1985年プラザ合意、1991年ソ連崩壊による冷戦の終結、1993年EUが発足、1995年1月WTO(世界貿易機関:World Trade Organization)が発足(GATTを吸収、協定から国際機関への転換に伴い、ルールの範囲も、モノの関税率だけでなく、投資や知的財産、サービス、防衛など幅広い分野を対象となる)、2001年中国がWTOに加盟、などを挙げることが出来ます。
 グローバル化の推移を、世界の貿易量の世界のGDPに占める比率の推移を見てみましょう。()は歴史的事項。
 1960年代11%程度、2000年23%、(2001年中国WTO加盟)、2008年30%、(2010年中国が日本を抜きGDP世界2位へ)、(2018年トランプ政権による米中貿易摩擦がスタート)、2021年25%です。
 この数値から読み取れることは、2001年の中国のWTO加盟を機に、貿易量が拡大し、更には、中国の世界の工場としての地位が拡大し、世界のグローバル化が進みました。2010年には中国は日本を追い越しGDP世界2位へと躍進します。しかし、2018年に始まった米中貿易摩擦などにより、貿易量のGDP比率の低下が始まり、グローバル化にブレーキが掛り始めている事が読み取れます。
 2022年には、ロシアのウクライナ侵略に加え中国の人権問題や軍事的拡大リスク等から、経済安全保障の意識が高まり、民主主義国家vs独裁国家の分断が急速に拡大しています。自由貿易を推進するWTO協定にある唯一の例外既定、「安全保障上の懸念がある場合」、を適用した制裁が拡大しています。2022年12月12日、中国は、アメリカが「安全保障」条項を悪用し半導体の輸出規制をしているとして、WTOに提訴しました。解決は難しいでしょう。
 ロシア、中国の強権的・拡張的リスクは収まりそうもありません。それに対抗する米・欧・日の対露・対中制裁は深まる一方です。まさにポスト・グローバリゼーションの時代に突入しています。

【文化は戦略にまさる VUCA時代の企業経営】
 紹介本は「VUCAワールドにさらされる日本」を見出しとする解説で、現在、世界が「VUCAワールド」にある裏付けとして「“GEPU”Index(“世界経済政策不確実性”指数)」 〔図表:注釈付きグローバル EPU インデックス〕を引用し、2022年にはウクライナ侵攻などの要因で、1997年~2015年までは100程度の不確実指数が、300にまで上昇していることを指摘します。その中で日本も、経済面では米中対立やウクライナ侵攻に伴うインフレリスクや円安の影響を受け、また社会面では阿倍元首相の銃撃事件が発生するなど、VUCA的な展開が拡大していると指摘します。
 この様な環境下における企業経営の在り方について、マイクロソフト社の2014年に就任したナデラGEOによる、「フィクスド(型にはまった)マインドセット」から「グロース(成長志向の伸び伸びとした)マインドセット」への転換に伴い、クラウドビジネス等への快進撃をもたらしたこと(GAFAMの株価時価総額で4位からアップルに次ぐ2位へ)や、ソニーの「弱いつながり」による新たなビジネスの創出に成功している例を挙げています。
 VUCA時代をしたたかに生きるための、「企業文化の変革を通じた、社員自ら主体的に働く生き生きとした組織風土を築き上げ、組織力を高め、『時代を先導できる力』の創出」により、一つ一つの事象に臨機応変に対応していく組織能力が必要と指摘します。

■    2023年の企業経営のキーワードは“アジャイル”(むすび)

 2023年は2022年にも増して「不確実性の時代」になります。早急に、「現状把握・分析⇒仮説立案・検証⇒意思決定・アクションプランの策定」をし、アクションをアジャイルに実行する時ではないでしょうか。

本

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】  著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

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【経営コンサルタントのお勧め図書】 稲盛流と名経営理論の親和性 「経営12カ条」-経営者として貫くべきこと-

2022-12-27 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】 稲盛流と名経営理論の親和性 「経営12カ条」-経営者として貫くべきこと- <訂正版> 2212



【お詫び】


 平素は、当ブログをご愛読下さりありがとうございます。


 また、「経営コンサルタントの本棚」に執筆して下さっている酒井闊先生には、感謝をいたしております。


 さて、2022年12月27日に発行しました本号ですが、一部文字が欠落していまして、筆者の酒井先生および皆様にご迷惑をおかけしております。


 当ブログに、欠落した部分を赤字で挿入しました。改めてお目を通して下さると幸いです。


 このようなミスの再発防止に最前の努力を図らせていただきますので、引きつづきのご愛顧をよろしくお願いします。



経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。


 


 【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。


 幸い、日本で最初に創設された経営コンサルタント団体である日本経営士協会には優秀な経営士・コンサルタントがいらっしゃるので、その中のお一人である酒井闊先生にお声をかけましたところ、ご協力いただけることになりました。


 それが、今日まで継続されていますので、10年余もの長きにわたって、皆様にお届けできていることに誇りを持っています。


 


本


■    今日のおすすめ


 


  『「経営12カ条」-経営者として貫くべきこと-』
                                  (稲盛和夫著 日本経済新聞出版)

本


■  「経営12カ条」の基本は「人間として何が正しいのか」(はじめに)


 


 著者は2022年8月24日、90歳の人生を全うされました。紹介本の著者直筆の“まえがき”には2022年8月とあり、本書は著者の遺言ともいえます。
 この12カ条は、自社京セラに止まらず、JALの再生においても十分その力を発揮しました。また、「盛和塾」を通じて多くの企業経営者に有意義なインパクトをもたらし、更には、日本の企業経営の経営力強化のための貴重な提言として、末永く記憶に留められるでしょう。
 著者は、『「人間として何が正しいのか」を基本とする「経営12カ条」は、業種や企業規模、国境や文化・言語の違いを超えて通じる』と強調しています。
 この著者の言葉から、ピーター・ドラッカーの次の言葉を想起します。『「マネジメント」は物事を正しく(効率的に)行うことであり、「リーダーシップ」は正しい事をすることである』。つまり経営者としての命運は、“「正義・大義」を「魂」のレベルに於いても持てているか(稲盛流の基本)”に掛っているのではと思います。
 次項では12カ条をご紹介しながら、他の著名経営理論との親和性を確認し、稲盛流の理解を深めると共に、対比する経営理論の理解を、併せ、深めてみたいと思います。
本
■    「経営12カ条」を読み解くと共に他の著名経営理論との親和性を確認する
 


【第1条:事業目的、意義を明確にする。第2条:具体的目標を創る。】
 京セラの経営理念は「全従業員の物心両面の幸福を追及すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」です。2010年2月1日JAL再建の会長就任後、経営幹部が作り上げた経営理念は「全社員の物心両面の幸福を追求すること」に、「お客さまに最高のサービスを提供します」「企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します」を加えたものでした。
 いずれの経営理念も「全社員の幸福」の次に、「世のため、人のため」という考えを持って来ています。あえて二つに分けて、「全社員の幸福」の優先を明らかにしているのです。これが稲盛流です。つまり、従業員の心からの共感を勝ち取れる「公明正大な事業の目的・意義は何か」との問いからスタートしているのです。自身の創業時の経験則から来るものであり、外から見たカッコよさは微塵もないのです。



 その考えは「第2条:具体的目標を創る-立てた目標は常に社員と共有する-」にも現れています。それは、「社員の力を結集できる夢溢れる具体的目標」「末端の従業員まで計画を立てる時から参画している目標」「高い山に登れる準備(フィロソフィー〈経営哲学〉)と考え方を共有できる集団が持つ目標」などです。これも貴重な提言です。
 ここから想起されるのが、ジム•コリンズです。ジム・コリンズはビジョンの構成を、ポピュラーな“ミッション・ビジョン・バリュー”に変え“ビジョン”1本にし、“ビジョン”を“コアバリュー”(時代を超える会社の指針となる原則、会社を導く哲学)、“パーパス”(100年間に亘って会社の指針となる、組織が存在する根本的な理由)、“BHAG〈注1〉”の3つにしました。
 “コアバリュー”には「全社員の幸福」、“パーパス”には「世のため、人のため」、“BHAG”には「社員の力を結集できる夢溢れる具体的目標」がぴったりとはまります。稲盛流がコリンズ流と親和性が高いことが分ると共に、コリンズ流をより身近に理解できます。
〈注1〉“BHAG”とは(詳細は下記URLをご覧ください。)
 Big Hairy Audacious Goalsの略。Hairyは、身の毛もよだつ、の意。Audaciousは、大胆な、の意。日本語では‟社運を賭けた大胆な目標”とされる。
http://www.glomaconj.com/joho/blog/sakai20220322visionallycompany2.pdf


【第3条:強烈な願望を心に抱く -潜在意識に透徹するほどの強く持続する願望-】
 物事を成就するには「何としても達成したい」という願望をどれくらい強く持てるかがカギです。加えて、顕在意識を越えて、潜在意識に透徹するほどの強く持続する願望を持つことです。潜在意識の効果は常に顕在意識に反映することです。
 潜在意識はどのように醸成されるのでしょう。一つは衝撃的な印象を経験すること、二つ目は繰り返し積み重ねることです。
 ここで想起されるのが、再登場ですが、ジム・コリンズの考えです。
 『雨の日も風の日も、何十年も、1日20マイル(32キロ)を歩き続けることによって無秩序の中に秩序が、不確実の中に一貫性が生まれる。“継続的”一貫性により“ANDの才能(二項対立ORではなく、二面性ANDと捉える思考)”が生まれる。短期的パフォーマンスと(AND)長期的成功を同時に実現する規律である』とする“20マイルの行進〈注2〉”の考えに「繰り返し積み重ねることにより醸成される潜在意識」がぴったりはまります。


〈注2〉“20マイルの行進”とは(下記URL「スライド8、6」をご覧ください。)
http://www.glomaconj.com/joho/blog/sakai20220322visionallycompany1.pdf
 


【稲盛流と他の著名経営理論との親和性を味わい、経営力の一層の強化を!】
 上述において、「経営12カ条」とピーター・ドラッカー及びジム・コリンズ理論との親和性を示させて頂きました。「経営12カ条」そのものも十分価値がありますが、他の著名経営理論との親和性を見つけることで、稲盛流の理解を深めると共に、対比した著名経営理論をより深く理解できます。
 皆さんの頭の中の著名経営理論と稲盛流を対比し、親和性を確認すると共に、両者の考え方の理解を深め経営力を強化しましょう。
本
■    経営12カ条を知識に止めずに、「見識」に、更には「胆識」に(むすび)
 


 「経営12カ条」を知識レベルに留める限り経営にとって全く意味がありません。本当に経営力を高めようと思うならば、知識を信念にまで高めた「見識」を持ち、更に、「見識」に胆力つまり勇気が加わった「胆識」が備わって、初めて、いかなる障害をも越えて、目指す方向に経営の舵を取ることが出来ます。(「第9条『勇気をもって事に当たる』」より)
 「経営12カ条」を知識に止めずに「見識」に、さらには「胆識」に高めて、初めて経営者としての力を発揮できるとの著者の提言は貴重ですね。簡単ではありませんが肝に銘じておきたいですね。


 


本


【酒井 闊プロフィール】


 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。


  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm


  http://sakai-gm.jp/


 


【 注 】  著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。


 


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【経営コンサルタントのお勧め図書】 ドイツ在住37年の日本人が語る(2)

2022-11-22 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】 ドイツ在住37年の日本人が語る(2)




経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。


 


 【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。


 幸い、日本で最初に創設された経営コンサルタント団体である日本経営士協会には優秀な経営士・コンサルタントがいらっしゃるので、その中のお一人である酒井闊先生にお声をかけましたところ、ご協力いただけることになりました。


 それが、今日まで継続されていますので、10年余もの長きにわたって、皆様にお届けできていることに誇りを持っています。


 


本


■    今日のおすすめ


 


  『ドイツで今、何が起こっているか』
                                  (川口ロマーン恵美著 ビジネス社)

本


■  ドイツ在住37年の日本人が語るドイツ-その2-(はじめに)


 


 著者の『「メルケル仮面の裏側」―ドイツは日本の反面教師である―』2021.12.28を本ブログにご紹介してから間もなく1年になります。「メルケル仮面の裏側」は、明治維新以来、法制・文化などの様々な分野で日本の模範となってきたドイツを、2021年12月の政権交代まで、16年間率いてきたメルケルの、日本などにおける高評価とは異なる、多くの政策の誤りを指摘しています。


 メルケル政権が交代し、社民党(SPD)、環境政党の緑の党、リベラルの自由民主党(FDP)の連立政権がスタートしました。その2か月後に、ウクライナ戦争が起こり、今も戦闘が続いています。


 紹介本「ドイツで今、何が起こっているか」は、ウクライナ戦争勃発でメルケル政策の矛盾が顕在化した「今」を検証しています。


 次項で、紹介本「ドイツで今」からのヒントを基に、エネルギー問題を中心にして、ファクトを見てみましょう。


本


■  ドイツの今


 


【ウクライナ戦争後のドイツのエネルギー問題】


 


 2022年9月26日ドイツのノルドストリーム(1)(2)〈以下NS1,NS2〉のパイプラインが何者かの破壊工作により4か所のガス漏れを起こしました。


 著者はこの問題を次のように指摘していました。「ロシアへのガス依存は30%を超えるべきではないということは、20年も前から言われていた。しかし、メルケル政権は16年間、その不文律を完璧に無視し、粛々と55%まで依存を増やしてしまった。ここまでくると、今さら慌てても、そう簡単に修正もできない。国の要であるエネルギーを、ここまで一国に依存するのは明らかな失政で、安全保障上の思考が一切働いていなかったと非難されても仕方がない。」と。


 まさに、著者の指摘してきたリスクが現実のものとなったのです。このリスクは並外れたリスクです。エネルギー価格の高騰、高インフレ、化石燃料の調達難は、ドイツに限らず、EUへ、日本へ、そして、ロシアと友好関係にあるインドや中国などを除く、世界へと拡大しています。


 ドイツにとっては、直近では、この冬を乗り越えることが出来るかのリスクがあり、長期的にはエネルギー価格の高騰が及ぼす様々な影響が懸念されます。


 ドイツは、今、厳しい局面に立たされています。


 それは、パイプラインによるガス供給を、新たにLNG調達に切り替えるには、新たな設備として、LNG運搬船、陸上LNG受入基地、FSRU(洋上で約-160℃のLNGを受け入れて貯蔵し、LNGを温めて再ガス化してパイプラインへ高圧ガスとして送出することができる浮体式LNG貯蔵再ガス化設備)が必要であり、これらが整うには3,4年かかると言われています。


 また、ガスは、プラスチックや合成繊維、塗料、医薬などの化学製品の原料であり、石油・石炭・褐炭などでは代替できないリスクもあります。


 メルケルは、これらを認識し、加えてロシアへ依存のリスクを認識し、16年間の治世の間に、然るべき対応をすべきでした。何ら対応しなかったメルケルの失政を指摘せざるを得ません。


 


【ドイツが歩んだ「脱原発」は正しかったのか?】


 


 NS1が開通した2011年11月時点の原発の稼働台数は17基ありましたが、現在稼働しているのは3基です。2011年に19.5%あった原発による発電比率が2022年現在は6.6%です(Wedge 2022.9.16より)。


 2002年に当時の社会民主党(SPD)と緑の党の連立政権は、稼働している19基の原発を2021年までに全て廃止することを決定しました。その後、メルケルは2010年5月に2002年の脱原発の決定を無効にし、原発の利用継続を決めました。しかし、翌年の2011年の福島事故を契機に国民の原発嫌いを意識し、反原発へと切替える格好のチャンスと捉え、2022年末までにすべての原発を段階的に閉鎖することを決めたのです。多数派迎合型で旧東ドイツの自然保護主義がバックグラウンドにあるメルケルならではの決定でした。


 メルケルはCDU本来の原発維持政策を堅持せず、2011年5月の脱原発宣言をした結果、約13%(19.5%-6.6%)の原発(約800億kwh)の発電量が減少しました。メルケルは、2011年11月にスタートするNS1によるロシアからのガス調達が見えたので、2011年の脱原発を決定したのでしょう。福島原発事故は2011年3月、NS1の開通が2011年11月、脱原発のリスク対応が全く検討されないままの脱原発法案の成立が2011年7月でした。このタイミングの良さを見ると、著者が言う、メルケルの“・・賢さ”が透けて見えます。(数字はWedge 2022.8.5「ドイツの脱原発が世界に迷惑をかけるこれだけの理由」より筆者試算。)


 ロシアからのNS1によるガス調達が既定路線であればこそ、メルケルは長期政権の中で、原発によるベース電源を確保しながら、「脱原発」を「脱炭素」の後回しにし、安定的にグリーン化を進め、並行してロシアリスクに対応したLNGの段階的調達やガスの貯蔵体制強化など進め、リスク対応策を実施すべきでした。


 


【ドイツのエネルギー政策の失敗】


 


 「脱炭素は噓だらけ」の著者で地球温暖化問題およびエネルギー政策を専門家の杉山大志氏は次のように述べます。『日本でも信奉者の多かったドイツの「エネルギーベンデ(エネルギー転換)政策」は、恐るべき“災厄”をもたらした。ドイツは「脱原子力」と「脱炭素」を同時に進め、再生可能エネルギーへ移行するとした。だが実際にはそれではエネルギーが足らず、ガス輸入をロシアのパイプラインに大きく依存することになった。この弱みを握ったプーチン大統領は、欧州は強い態度を取れないと読んでウクライナへ侵攻した』と。(2022.9.24キャノングローバル研究所より)


 杉山大志氏のこのコメントが、メルケルのエネルギー政策の失敗を的確に指摘しているのではないでしょうか。


本
■    ドイツの失政を他山の石に(むすび)




 ドイツとロシアの関係は、日中、日露の関係に置き換えてみることが出来ます。経済安全保障政策、原発・脱炭素を中心とするエネルギー政策においてドイツの失政を他山の石として、緊張感をもってアジャイルに政策を実行していく必要があります。


 


 


本


【酒井 闊プロフィール】


 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。


  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm


  http://sakai-gm.jp/


 


【 注 】  著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。


 


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【経営コンサルタントのお勧め図書 10周年】 「失敗の本質を語る」ーなぜ戦史に学ぶのかー

2022-10-25 17:51:10 | 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書 10周年】 「失敗の本質を語る」ーなぜ戦史に学ぶのかー

 

経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

 

 【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。

 幸い、日本で最初に創設された経営コンサルタント団体である日本経営士協会には優秀な経営士・コンサルタントがいらっしゃるので、その中のお一人である酒井闊先生にお声をかけました。

 ものごとを慎重に判断される酒井先生ですので、ひょっとすると断られるかも知れないと懸念していました。

 当時の心境も含め、酒井先生のメッセージと当月の書籍紹介をここにお届けします。

本

■ “私の本棚”活動は10周年を迎えることが出来ました。感謝です。(はじめに)

 

【“私の本棚”はお陰様で10周年を迎えました】

 当“経営士ブログ”の「経営コンサルタントの本棚(“私の本棚”)」に投稿させて頂いてから今回が10周年に当たります。この間、投稿を暖かく掲載し続けて頂いた当ブログ主催の今井名誉会長(〈特非〉日本経営士協会)に感謝申し上げますと共に私の投稿をお読み頂いている読者の皆様に心から感謝申し上げます。

 2012年10月23日、最初の投稿『「失敗の本質」(野中郁二郎他5氏共著 中公文庫)』を掲載頂きました。日本経営士協会に入会してから2年半のコンサルタントになり立ての頃、尊崇する今井理事長(当時)からお声を掛けて頂いたのがスタートです。

 爾来10年、毎月第4火曜日の投稿を続けてきました。振り返ってみると続けてよかったとの思いで満たされています。読者の皆様の“いいね”は励みになりました。改めて感謝です。

 

【“私の本棚”活動10年の思い出】

 一つ目は、投稿に寄せられた紹介本の著者の喜びの声です。遠く英国からもありました。インターネットの力を感じました。友人の著書の投稿では、友人との共感を深めることができました。

 二つ目は、多くの知見を得られたことです。読むだけでは、右から左に抜けてお終いですが、投稿活動により文字化することで脳が活性化し、海馬を経て大脳皮質に多くの知見が蓄積され、コンサルタントの引出しが充実しました。つん読の名著をものにすることも出来ました。「ビジョナリー・カンパニー」シリーズ(2022.3.22投稿)、「7つの習慣」(2019.1.22投稿)、「人を動かす」(2014.1.28投稿)、等です。

 三つ目は、P・E・S・Tの真実の追求と未来の読み解きです。『「脱炭素」は嘘だらけ』(2021.10.27投稿)、『「アメリカ一極体制の崩壊」と世界激変の行方』(2017.3.28投稿)など現在の世界の混乱を読み解いた投稿ができました。

 四つ目は、普通投げ出したくなる膨大なページの本を自家薬籠中のものに出来たことです。「ビジョナリー・カンパニー」シリーズ;2049ページ(2022.3.22投稿)、「世界標準の経営理論」;803ページ(2021.1.26投稿)、等です。

 

【“私の本棚”活動の「知識創造プロセス(SECIモデル)」効果】

 最初の投稿の「失敗の本質」と書名が似た「失敗の本質を語る」を最近偶然見つけ、10周年の記念月である今月の紹介本にしました。「失敗の本質を語る」は著者の野中郁次郎が「失敗の本質」から38年後の2022年5月、「著者自身の歴史」を振り返って発刊した本です。著者は最初の著書「失敗の本質」に続き「アメリカ海兵隊」「知識創造企業(2014.7.22投稿)」「戦略の本質」「国家経営の本質」「ワイズカンパニー」を始めとする多くの著書・研究を振り返り、ナラティブ(物語る)しています。

 「失敗の本質を語る」を、10周年の記念月に採り上げたのは、10年間の“私の本棚”活動が、著者の著作の中核である「知識創造プロセス(SECIモデル)」と気付いたからです。

 『“私の本棚”活動と「知識創造プロセス(SECIモデル)」』について、次項で述べさせて頂きます。

 

 

本 ■    今日のおすすめ

  『「失敗の本質を語る」ーなぜ戦史に学ぶのかー』
                                  (野中郁次郎著 聞き手 前田裕之 日経BP)

本

■    “私の本棚”活動と「知識創造プロセス(SECIモデル)」

 

【“私の本棚”活動は、「知識創造プロセス(SECIモデル)」パラダイム】

 SECIモデル(注)の素晴らしい点は、進化を続けていることです。最新のSECIモデルでは「経営学」に「現象学」を加えています。つまり、モデルのプロセスの間で生じる「認識論」に加え、知識を創造する人と他者との間で生じる「存在論」の次元を強化しています。個人間、チーム内、組織内、等における「相互主観性」で繋がる相互作用を通じて、フロネシス(賢慮によるリーダーシップ)のもと、高次の知識創造が、Continuousに促進され、企業・組織の成功に繋がるとします。加えて、過去の研究事例を踏まえ、フロネシスの重要な要素は「共通善(パーパス、存在意義など)」とします。

 かかる理論のもと、知識創造の源を“人間中心”の「人格的知識」としています。「人格的知識」は次の二つです。「個人の身体への体化(職人芸など)」の知識と「個人そのものに体化される認知スキル(視点、信念など)」の知識です。

 さて、“私の本棚”活動ですが、私の「人格的知識(暗黙知)」と紹介本、WEB上の「ハイパー・テキスト(文書を超える)」情報、等々との「相互作用」、「共同化(Socialization)」を経て、文字化・形式知化され“私の本棚”原稿として「表出(Externalization)」されます。多くの“私の本棚”投稿が年月を経て蓄積され、その中の幾つかは「連結(Combination)」され、新たな知見ができます。新たな知見は、新たな「人格的知識(暗黙知)」として「内面化(Internalization)」され、私の引出しに貯蔵され、コンサルに活用する時の出番を待っています。

 この様に、“私の本棚”活動は、SECIモデルによる知識創造と気付きました。加えて「共通善(真理、真実など)」を追求してきたと思っています。

(注)知識創造の「SECIモデル」プロセスとは。
 Socialization(共同化)。二人以上がお互いの「人格的知識(暗黙知)」を出し合い、共有・共同化するプロセスです。
 Externalization(表出化)。共同化した多くの暗黙知を明確なコンセプトにするプロセスです。metaphor(比喩)、analogy(類似推論)、abduction(仮説化)、デザイン思考、等の形をとりながら文字、計算式、図表などの形式知として明示・表出化するプロセスです。
 Combination(連結化)。表出された形式知を組み合わせ(連結し)て一つの知識体系を創り出すプロセスです。
 Internalization(内面化)。連結化で出来た知識体系を書類、マニュアル、物語などに言語化・図式化し、その学習により、個人の新たな「人格的知識(暗黙知)」として「体化」するプロセスです。
 このあとは、新たなSECIを回しスパイラル・アップをします。更には、個人から・チームへ・組織へ・組織間へ・社会へとステップ・アップし、新たな知識創造を実現します。(【参考】図による理解はこちら
本
■    引き続き「経営コンサルタントの知識創造」を続けます。(むすび)

 人生100年時代(『LIFE SHIFT 2「100年時代の行動戦略」』2022.5.24投稿)に向けて、更なる知識創造に加え「共通善」を追求し続けたいと思っています。引き続き宜しくお願い申し上げます。

本

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

※ 経営士ブログ運営者から

 2012年10月23日に「経営コンサルタントの本棚」コラムを設けて以来、酒井先生は、ご投稿を毎月、欠かさず寄稿して下さっています。

 心より感謝申し上げています。

 

【 注 】  著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

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『経営コンサルタントのお勧め図書』が10周年を迎え、記念号が10月25日に発行されます

2022-10-24 11:53:00 | 経営コンサルタントの本棚

本  『経営コンサルタントのお勧め図書』が10周年を迎え、記念号が10月25日に発行されます

経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介しています。

 【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。

 幸い、日本で最初に創設された経営コンサルタント団体である日本経営士協会には優秀な経営士・コンサルタントがいらっしゃるので、その中のお一人である酒井闊先生にお声をかけました。

 ものごとを慎重に判断される酒井先生ですので、ひょっとすると断られるかも知れないと懸念していました。当時の心境も含め、酒井先生のメッセージと当月の書籍紹介を当月第4火曜日10月25日正午頃にお届けします。

 

 光速時代に、10年というのは、大変長い年月です。その間、毎月欠かさず、しかも、毎月、原稿締切定時までに原稿をお送りくださる程の几帳面さを持った筆者・酒井先生です。強い使命感と意思なしには、並大抵ではできないことです。

 読者からは、温かい声援・エールや「いいね」もいただき、これも一重に、酒井先生の熱意のこもったご寄稿のおかげです。

 読者の皆様におかれましては、引きつづきのご愛読をよろしくお願います。

 また、酒井先生には、健康やお仕事の忙繁状況を見ながら、無理をなさらずに、できるかぎり「経営コンサルタントの本棚」のコーナーを続けていただきたいと思います。

本

【酒井 闊 先生のプロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

 

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

 

  http://sakai-gm.jp/

 

 

 

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