担当授業のこととか,なんかそういった話題。

主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

クールビズ。

2012-04-30 23:57:27 | もじりあーの。
今年は5月1日からクールビズ期間開始である。

環境省の公式ホームページによると,すでに認知度は9割超だということだが,実際に実施してもらうには,やはりなんらかのキャンペーンをうつのが効果的だろう。

そこで,アイドルグループ『スクール・ビズ』なんてのを作ってはどうだろうか。

ただ単に制服の衣替えのような気もしないわけではないが,ごちゃっとたくさんの若い男女が夏服のような衣装を着てキャンペーン活動を行うのである。

もちろん活動期間はクールビズ期間の半年間である。すでにデビューしている既存のグループ同士の期間限定特別コラボ・ユニットということでもよい。


え?『ビズ』はビジネスの略語だから,「ビジネス・スクール」の略語のようにしか思えないって?


・・・。まあ,そうとれなくもないかな。


ちなみに,僕は言われなくとも年中クールビズやウォームビズで日本の環境に貢献している。
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Karl Menger の試み。

2012-04-29 20:58:57 | mathematics
某大手ネット通販サイトで注文した本が届いた。

Karl Menger の "CALCULUS A Modern Approach" (Dover, paperback) である。

※ もしやと思って調べてみたら,無償で全文をオンラインで閲覧できたことが判明してしまった・・・。G○○gle さんが見つけてくれていれば・・・。(2012/4/30 付記)

3ページほどインクで汚れているので交換してもらいたい気もするのだが,交換してもらっても同じようなものしかこないかもしれないので,手放してしばらく読めないよりはと我慢することにした。
本文が読めないほどの汚れというわけでもないし・・・。

パラパラめくってみると,意外と重厚で,読み応えがありそうである。

あるサイトによると,Karl Menger は学部生に教えることを楽しんでいたらしい。彼はその経験が研究活動にも刺激を与えるという信条を抱いていたそうである。Feynman も同じような意見だったことを何か(「ご冗談でしょう,ファインマンさん」シリーズのどれか)で読んだことがある。第一級の研究者の中にはそういう意見の人が少なくないのかもしれない。

そのサイトで紹介されている "What is x?"(引用文献は Math. Gazzette の "What are x and y?" と題する論文らしいが)という高校生向けの講義の一端は,"CALCULUS" の付録で垣間見ることができるようだ。

本が届くまでの間に,"CALCULUS" よりも前に出版された "Algebra of Analysis" (1944) を web 上で見つけたので,少しページってみた。

中身はタイトルからほぼ想像された通りのものだったが,ある点では想像を超えていた。

タイトルから連想したのは,誰かが van der Waerden の言として引用していたのだったか,「初等微積分は極限の概念を使わず,完全に代数的な取り扱いが可能である」という主旨の言葉である。確かに,sin(x) を微分したら cos(x) になる,というような基本的な関数の導関数のリストと,和や積,合成に関する微分規則さえいったん認めてしまえば,導関数を求めたり,不定積分を求めるといった計算は,極限のことなどすっかり忘れて代数的に行うことができる。
そういう意見を知ったときは,そりゃそうだけど,極限概念を取り扱うのが微分積分の理論の真髄だからなぁ,と腑に落ちない気分がしたが,その後,基本的な関数の導関数のリストを「アトム」,和や積,合成関数の微分規則を「ルール」と名づけて,それらをきちんと身に付けさせるという方針を自ら編み出したのだが,それは微分計算の代数的取り扱いを前面に押し出す立場そのものだという気がしなくもない。

"Algebra of Analysis" では,2つの関数を組み合わせて新しい関数を生み出す演算として,和と積,そして合成の3種類を基本的な演算 (tri-operational algebra) として位置づけている。そこでは,関数の記号が,出力の数値と徹底して分離される。あくまでも関数に対する演算という姿勢が貫かれているのである。

その姿勢は "CALCULUS" で踏襲されている。Menger は本の写しを Einstein に送ったそうだが,Einstein はそれを絶賛したとのことである。とはいえ,手放しの賞賛というわけではなく,「ちょっとやり過ぎだと思うが」と懸念も表明したらしいが。

あまりにも斬新過ぎて Menger の試みは受け入れられずに終わってしまったそうだが,歴史の中に埋もれさせるには惜しいのではないかと思う。ちゃんと読んで,活かせるところは活かしたいと思う。

僕も関数を独立して取り扱おうと思ったことはあったが,Menger ほど徹底してその路線を追及したことはなかった。この本からは非常に多くのことを学べそうなので,わくわくしている。
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【高校数学のツボ】 3乗の因数分解公式。

2012-04-29 18:49:03 | mathematics
大した話ではないが,この間小ネタを思いついたので,記念に記しておく。

2つの文字が入った3乗の展開公式のうち,

(a+b)3=a3+b3+3ab(a+b)

という「中途半端展開」あるいは「部分因数分解」版が以前からのお気に入りであった。

この公式を利用すると,

a3+b3=(a+b)3-3ab(a+b)
=(a+b){(a+b)2-3ab}
=(a+b)(a2-ab+b2)

のように,3乗の和の因数分解が得られる。a2-ab+b2 という式が (a+b)2 や (a-b)2 を展開した式によく似ていて,「惜しい!」と常々思っていたのだが,上に述べたような証明を見ると,(a+b)2 に似て非なるものである理由が納得できるような気がする。特になぜ ab の係数が -1 のようにマイナスになるのか,そのカラクリが一目瞭然であるから,これなら忘れることはないはずである。

さて,中途半端展開版は a3+b3+c3-3abc という,「3変数の3乗」という,高校で学ぶ因数分解のうち,最も難しい部類に入る有名な因数分解公式の証明に大いに役立つ。

a3+b3+c3-3abc=(a+b)3-3ab(a+b)+c3-3abc
=(a+b)3+c3-3ab(a+b+c)
={(a+b)+c}3-3(a+b)c{(a+b)+c}-3ab(a+b+c)
=(a+b+c){(a+b+c)2-3(a+b)c-3ab}
=(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)

といった具合である。

ここで,一旦話題を変えて,この因数分解をいばらの道を経由して行うことにしよう。

答えを見ると,a+b+c が因数であるらしい。そこで,x=a+b+c とおき,c=x-(a+b) を消去して得られた式が,確かに x を因数に持つことを計算で確かめてみよう。

これがいばらの道だというのは,c3 の計算において,x,a,b の3文字を含んだ式の 3 乗を計算するはめに陥るからである。また,この計算の方針としては,できる限り展開を行ってしまってから因数分解できそうかどうかを考えるという,「展開して因数分解する」という,やや矛盾に満ちた印象を受けるやり方であるから,躊躇せずに展開することにする。すると

a3+b3+c3-3abc=a3+b3+{x-(a+b)}3-3ab{x-(a+b)}
=a3+b3+{x3-3x2(a+b)+3x(a+b)2-(a+b)3}-3xab+3ab(a+b)
=x3-3x2(a+b)+3x(a+b)2-3xab
=x{x2-3x(a+b)+3(a+b)2-3ab}
=x{x2-3c(a+b)-3ab}

のようになり,後は先ほどと全く同じである。


では最初の中途半端展開に話を戻そう。

3 文字の式の因数分解として,2次式版はないだろうか?

残念ながら特に知っているものはない。せいぜい

a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca=(a+b+c)2

だけである。3乗版は紹介済みである。4乗版はどんなものであろうか?さらに,5乗版は?

これらについても,僕は答えを持ち合わせていない。何か考えられそうな気もしないでもないが,面倒そうなので試みていない。

文字が2つなら次のような中途半端展開を使って,a5+b5 の因数分解ができる。

(a+b)5=a5+b5+5ab(a+b)(a2-ab+b2)+10a2b2(a+b).

もっとも,n が奇数のときの xn+yn の因数分解については,等比数列の和の公式を利用した方がもっと見通しよく一般の奇数 n に対する公式を導きやすい。


この他,文字数と次数を連動して変化させていくという方向性も検討の余地がありそうである。

a2+b2-2ab=(a-b)2,

a3+b3+c3-3abc=(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)

と並べてみると,

a4+b4+c4+d4-4abcd

も因数分解できるのではないかという予想が立つ。

しかし,ちょっと試してみたが,うまく行かない。

4文字4乗ともなるとお手上げである。

なお,この式を因数分解するわけではないが,うまく変形して a, b, c, d の値によらずに式の値が非負であることが示せるらしい。
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いつまで続くか。

2012-04-29 18:41:08 | 爺ネタ
今日は昭和な日である。

まちには昭和の名曲が流れ,人々は昭和なファッションに身を包み,昭和の流行語を口にして,昭和の時代に思いを馳せる。

しかし,そんな昭和な人々は,25歳以上限定である。それにいくら昭和生まれだからと言っても,物心ついたときにはすでに平成真っ只中だった30歳前後にとってすら,昭和はもう遠い時代に違いない。

最後の昭和生まれが地球上から姿を消す頃には,昭和の日もなくなっているのではないだろうか。

というか,いつの間にみどりの日が4月29日ではなく5月4日の名称になっていたのだろう。

げに世の中の移り変わりとは激しいものよ。そしてそれにどんどんついていけなくなっている,年老いていく自分がいる。

時期が来たらシーラカンスとでも名乗ることにしよう。すでにスマートフォンの潮流にも乗り遅れているから,そう名乗れるようになる日はそれほど遠くのことではあるまい。
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個数の数え方。

2012-04-28 23:36:49 | mathematics
33万匹ものミツバチを体にまとった中国の男性の話をニュース記事で知った。

一体どうやって33万匹ものミツバチを数え上げたのかが疑問だったが,記事をちゃんと読んですぐにわかった。

その男性は,33.1kg 分のミツバチを体にとまらせたそうである。
その重さ分のミツバチは約 33万1千匹だと書いてある。

では,ミツバチは一匹あたり何グラムだろうか?

33.1 kg=33.1×1000 g

であり,33万1千匹は

331×1000

なので,一匹あたり約 33.1/331=0.1 g ということになる。

つまりミツバチ10匹は一円玉一枚分の重さに等しい。


なお,33kg もの重石を身にまとうのは大変だろうが,それだけでなく,体温は問題ないのか気になるところである。ミツバチは天敵のスズメバチを取り囲んで蜂球をつくり,その内部の温度を上げてスズメバチを熱死させるという。したがって,男性が身にまとっていたのが実は蜂球だったとすると,男性は生命の危険にさらされていたことになる。

あとは,一体どうやって一度にそれだけ大量のミツバチを体にひきつけることができたのか,いうなれば「蜂寄せ」とでもいうべき技にも大いに興味があるが,残念ながらそれについては記事には何も書いてなかった。
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GW の一歩先を行く。

2012-04-28 23:31:17 | 爺ネタ
大型連休とは言うものの,平日をあえて休みにするわけではないから,ただ単に祝日が集中しているというだけで,ゴールデン・ウィークというほどではない。

ただ,ある程度まとまった休みがとれるのは確かであるから,GW とうかれていないで,意識を一歩進めて,HW を消化するよい機会にしたい。
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運命的な出会い。

2012-04-27 23:55:32 | mathematics
しばらくの間行っていなかった本屋に久々に寄ってみた。

どうせ本を買っても読まないだろうし,本を置くスペースもないし,お金の無駄になるからと思い,最近は本を買うのを控えていたのである。

けれども,昨日,ネットサーフをしていて,どうしても欲しい本が何冊かできてしまった。

そのうちの一冊は某大手ネット販売サイトで注文してしまった。
他に二冊欲しい本があるが,一冊が3千円を超える値段なので躊躇している。

今回本屋に行ったのは,僕の購買欲を刺激するタイトルばかり出しているちくま学芸文庫の新刊を確認するためだった。

案の定,発行日が先月と今月になっている新刊2冊を買ってしまった。

まず,『高等学校の基礎解析』というタイトルの本で,これの姉妹本である『高等学校の確率・統計』という本を以前買っていたので,シリーズものならばそろえようというくらいの気持ちで買った。

ところが,内容をよく見てみると,僕が高校における積分の導入の仕方で常々感じていた不満がこの教科書ではすっきり解決されていたことを知り,大いに驚いた。

基礎解析は現在の数学Bで扱われている数列と,数学IIで扱われている三角関数,指数・対数関数ならびに多項式関数の微分積分をあわせた科目である。僕が高校生の頃は,数学の科目は数学I・II・III;A・B・C という名前ではなく,基礎解析や代数幾何という名称だった。

さて,僕が現在の高校での積分の扱いに対して抱いている不満とは,微分の逆演算として不定積分を先に導入し,その後導入された定積分でなぜか図形の面積が求められるという話の順序である。

微分の計算に習熟してすぐさま不定積分の計算に入るのは,確かに話の流れとしては接続がよいが,それでは積分の意味がわからなくなってしまう。

肝心なことは,積分が図形の面積を求める典型的な手法に端を発した概念であるという,「積分とは何か」という意味であって,それなくしては他の科学や工学などに積分の考え方を応用する力は決して養われないだろう。

そのような積分のアイデアをきちんとふまえた上で,いざ図形の面積などを計算で求めようというときに,その前に習った微分の知識が役立てられるという「微分積分学の基本定理」が導入され,その結果,具体的に積分の値を求められるようになる,という流れが望ましいと思う。

『高等学校の基礎解析』では,まさにこの流れに沿って積分が導入されているのである。そのような検定教科書がかつてこの日本に存在したということは,これまで全く知らなかった。それと同時に,なぜこの教科書のスタイルが今日まで生き残っていないのか,それが残念で仕方がない。(もしかしたら僕が知らないだけで,実は生き残っているのかもしれないが。それならばそれで嬉しい限りである。ぜひそうであることを願いたい。)

また,この本には教科書だけでなく,教師用の指導資料も収録されている。そしてその資料も読み応えのあるものばかりである。

新刊を求めて本屋に立ち寄った結果本書に出会ったというのは,何か見えない運命に手繰り寄せられたのだとしか思えないような出来事である。


本屋で買ったもう一冊は,イアン・スチュアート著の『現代数学の考え方』である。

この手の本は他にも持っているので,自分のライブラリーにいまさらもう一冊付け加えても仕方がないと思いつつも,著者名に惹かれてぱらぱらとページってみたところ,284ページの末尾に書かれた線形代数の学び方に対する著者のコメントが目に入り,やはり手元においておきたい一冊だという気にさせられ,買ってしまった。日本の高校や大学で習う内容が多く取り上げられているので,それらの内容の「ココロ」を知るにはうってつけである。特に,それらの項目を学ぶ際にどのような心構えをしておくとよいか,ということに関するヒントに満ち溢れているので,集合や線形代数,微分積分などで「なぜこんなことを考えるのだろうか」などと,考え方や物事の捉え方などに悩んだときに,本書は悩みを解決する上で大いに役立つに違いない。

そのように学習者の役に立つということは,教える側の教師にとっても,教え方を反省したり,教え方を工夫するのに役立つということである。だから,この本を買ったのは間違いではないと確信している。


いずれの本も,買っただけで読まずにいたのでは宝の持ち腐れになってしまうので,興味を持ったところだけでも目を通したいと思っている。

そのための GW,かな。
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静電磁場とベクトルポテンシャル。

2012-04-26 20:58:06 | mathematics
数学と物理学のどっちなのかよくわからないが,物理的な考察は数学公式を見出すための発見的論法として使用するだけなので,数学の話ということにしよう。かといって数学的な厳密性にこだわるわけでもないので,そのあたりは物理っぽいともいえる。だから,どっちでもあると言えるし,どっちでもないと言える。

ベクトル場のなんとか分解



わけのわからない出だしから始めたが,さらにまたはっきりしない話を続ける。

ベクトルを太字で表記するのが面倒なので,普通の文字を使用することにする。
また,最も単純な場合について考察するだけなので,ベクトル場は全空間で定義されており,滑らかで,無限でゼロになるなど,都合のよい性質を何でも持っていると仮定して話を進める。

ベクトル場 F は,回転がゼロになるベクトル場 G と発散がゼロになるベクトル場 H の和に分解できる。
すなわち,F=G+H である。
この事実は Helmholtz 分解という名で呼ばれることがあるが,Weyl の名がつくこともあるし,Hodge 分解ということもあるらしい。誰の名前を付けるのがもっとも適当なのか,今のところ僕にはまったく判断がつかないが,そういうときは Helmholtz-Hodge-Weyl 分解とでも呼んでおけば悩まずに済みそうだ。(その手の専門家から,ちゃんと区別していないのでとんでもない話だとお叱りを受けてしまうかもしれないが,そんなことをいちいち気にしていたら何も書けなくなってしまうので,あえて無神経に話を進めることにする。)

与えられたベクトル場 F に対して,本当にそんな都合の良い「回転ゼロ成分」G と「発散ゼロ成分」H が定まるものだろうか?

その問いには,実際に G と H を F をタネにして構成してみせることによって答えることができる。

まず G を求めることを考えよう。ここで,前提知識として「Poisson 方程式(非斉次 Laplace 方程式)は解ける」ということにしておく。Laplace 方程式を実際にどう解くかについては,後で改めて述べる。

そうすると,-Δφ=∇•F という Poisson 方程式の解であるスカラー場 φ が存在することになる。それは F を用いた積分で表すことができるが,それも後で述べる。

さて,G:=-∇φ とおくと,Δφ=∇•(∇φ) だから -Δφ=∇•G が成り立つ。したがって,∇•(F-G)=0 となる。

これが -Δφ=∇•F という Poisson 方程式を考えたねらいであった。

次に,∇•(F-G)=0 について考えよう。よく知られている事実として,あるベクトル場の回転は,必ず発散が 0 になる。ならば,F-G があるベクトル場 A の回転になっていれば,自動的に ∇•(F-G)=0 が満たされることになって大変都合がよい。

そんな都合のよいベクトル場 A は果たしてあるのだろうか?

F はもともと与えられており,G も F を使って具体的に書き表せることがわかっている。したがって,偏微分方程式 ∇×A=F-G が解けるかどうかが問題である。

このままでは考えにくいので,両辺の回転を取ってみよう。そうすると

∇×(∇×A)=∇×(F-G)

となるが,ベクトル解析の公式を用いると,この左辺は

-ΔA+∇(∇•A)

と書き換えられる。また,G は「回転ゼロ成分」だから,右辺は ∇×F になる。したがって

-ΔA+∇(∇•A)=∇×F

が解けることがわかればよい。

※ 最初にこの記事を投稿したときは,G が「回転ゼロ成分」だから ∇×G がゼロベクトルになることにうっかり気付かず,∇×(F-G) という表記のまま以下の部分も書いてしまった。その後,太田浩一著『マクスウェル理論の基礎 相対論と電磁気学』で引用されている Blumenthal の1905年の論文を見て,∇×(F-G) ではなく ∇×F だけを含むすっきりした公式が得られることに気付いたので,以降の記述でそのように書き改めた。(2012/4/28 付記)

この左辺の第二項がなければ,成分ごとにみるとスカラー場の Poisson 方程式になるから,解の積分表示が可能となる。

そして実は,第二項を落として得られる方程式 -ΔA=∇×F の右辺のベクトル場の発散が 0 であることが効いて,この方程式の解 A の発散も 0 になる。つまり ∇A=0 であるから,この A はもともと解きたかった方程式 -ΔA+∇(∇•A)=∇×F をも満たすのである。

このような幸運に恵まれた結果,F-G=∇×A を満たすベクトル場 A を手に入れることができた。G=-∇φ だったことを思い出すと,結局

F=-∇φ+∇×A

という公式が得られたことになる。右辺の第一項は回転ゼロのベクトル場であり,第二項は発散ゼロのベクトル場である。したがって,F を回転ゼロのベクトル場と発散ゼロのベクトル場の和に分解するという当初の目的は達成された。

せっかくなので,記念にこの φ を F のスカラーポテンシャル,A を F のベクトルポテンシャルと呼ぶことにしよう。

ちなみに,G=-∇φ と H=∇×A の L2 内積は 0 になるので,G と H は直交している。したがって,F を G と H の和に分解したということは,F を「直和分解」をしたことに他ならない。このことから,F の分解の仕方,つまり G と H が一意的に定まることが理解できよう。

物理学では,このような G を F の横成分(∇ に平行な成分),H を F の縦成分(∇ に垂直な成分)と呼ぶそうな。それはおそらく Fourier 変換を経由すれば納得の行くネーミングであろうが,そもそもベクトル場の Fourier 変換がなんなのかよく知らないので,ぼんやりと想像しているだけである。

なんかおかしい



さて,ベクトル場 F を生み出すスカラーポテンシャル φ とベクトルポテンシャル A があることがわかったが,それはなんとなく Hamilton の4元数を彷彿とさせる。4元数は確か実部を「スカラー部分」と呼び,残りの i,j,k の一次結合の部分を「ベクトル部分」と呼ぶのだったと思う。

ちょうど,F にとってはスカラーポテンシャルがスカラー部分であり,ベクトルポテンシャルがベクトル部分になる,というように言葉の上での対応がつく。

ところで,ベクトル場 F の成分は3つしかないが,スカラーポテンシャルとベクトルポテンシャルの3つの成分をあわせると4つのスカラー関数になる。つまり,F の3つの成分を生み出すのに4つのスカラー関数が必要となる勘定になる。数が合わない。何かおかしいのではないだろうか?

この違和感に対する完全な回答はまだ持ち合わせていないが,おそらくゲージ (guage) 不変性という概念が深く関わっているのだろうと想像している。

どういうことかというと,F が φ の勾配と A の回転という,導関数によって表せるということがポイントなのである。

まず,定数は微分したら 0 になって消えてしまうので,φ に好きな定数 C を加えて φ+C に変えても,F の「回転ゼロ成分」になんの影響もない。ただし,この性質はここで取り上げた疑問とは直接関連はないのではないかと感じている。

それよりも,A の方が問題である。A の回転が「発散ゼロ成分」に相当するわけであるが,先の議論で使用した事実「スカラー場の勾配の回転はゼロベクトルである」を思い出すと,A に好きなスカラー場 ψ の勾配を付け加えて A+∇ψ に変更しても,∇×(A+∇ψ)=∇×A だから,F の「発散ゼロ成分」にはなんら影響を及ぼさない。このような大きな自由度があるため,ベクトルポテンシャル A には本質的に一意性が成り立たない。

ベクトルポテンシャルが持っているそのように大きな自由度を逆手にとって,適当な条件をつけて,相手にするベクトルポテンシャルを絞ることが可能になる。

たとえば,A ' を F の「発散ゼロ成分」を生み出すベクトルポテンシャルの一つとすると,-Δψ=∇•A ' を満たすスカラー場 ψ を用いて新たなベクトル場 A:=A '+∇ψ を定義すると,∇×A=∇×A ' であるから,A もやはり F のベクトルポテンシャルになっている。したがって,F は発散がゼロであるようなベクトルポテンシャルを必ず持つわけである。

先ほど ∇•A=0 となるような都合のよいベクトルポテンシャル A があるかどうかを気にしたが,ここで述べたような事情により,このような条件を付け加えても不都合が生じないのである。

ベクトルポテンシャルをふるいわけるこの条件は Coulomb ゲージと呼ばれているらしい。

なお,ベクトルポテンシャル A はもちろんベクトル場であるから,それ自身も「回転ゼロ成分」と「発散ゼロ成分」を持つことになる。Coulomb ゲージを採用するということは,A 自身が「発散ゼロ成分」であることを要求するわけだから,A の「回転ゼロ成分」はないことになる。したがって,A はスカラーポテンシャルを持たず,ベクトルポテンシャルだけを持つことになる。

F のベクトルポテンシャル A のベクトルポテンシャルもまたベクトル場だから,スカラーポテンシャルやベクトルポテンシャルを持つ。そのベクトルポテンシャルについても同様である。

なんだか気の遠くなるような話であるが,ベクトルポテンシャルには必ずその親となるベクトルポテンシャルがあることになる。電磁気学では,電場と磁場の一世代前に相当するスカラーポテンシャルとベクトルポテンシャルまでしか登場しないようであるが,電磁場のベクトルポテンシャルのさらに一世代上のポテンシャルは考えないのであろうか?たぶんそれを考えるメリットはなさそうであるが,こういった,ちょっと馬鹿げた妄想に一度くらい耽ってみるのも悪くはあるまい。

ともかく,例えばこのような Coulomb ゲージという条件を追加すると,ベクトルポテンシャル A の3つの成分を完全に独立には選ぶことができなくなって自由度が1つ減り,その結果,ベクトル場 F の成分とポテンシャルの成分に関して 3 対 4 の比であったように思われたのが,実際には 3 対 3 のように釣り合っていたのだ,という理解に到達することができた。

電磁気学的発想による偏微分方程式の解法



この記事の締めくくりとして,Poisson 方程式の電磁気学的な発想に基づく解法を述べよう。

まず,位置 a にある点電荷 q が位置 r に置かれた単位電荷に及ぼす Coulomb 力 F は

F=(kq/|r-a|3)(r-a)

で与えられる。これを前提とすると,点電荷 q から発した直線に沿って無限遠方から,点電荷 q から d だけ離れたところにある位置まで単位電荷を動かしたときに Coulomb 力のなす仕事は,Coulomb 力と変位の向きが正反対であることに注意すれば,簡単な線積分によって kq/λ と求まる。λ=|r-a| なので,φ(r):=kq/λ とおいて,これを点電荷 q が作る位置 r における静電ポテンシャルと呼ぶことにしよう。

さて,実験事実として Coulomb 力は重ね合わせの原理を満たすことがわかっているので,静電ポテンシャルも重ね合わせの原理を満たすことになる。したがって,電荷密度 ρ が与えられているとき,位置 x にある空間の微小な領域 dV における電荷は ρ(x)dV であるから,こうした電荷が作る静電ポテンシャルを空間全体にわたって足し合わせることにより,電荷密度 ρ が作る静電ポテンシャル φ(r) が

φ(r)=k∫ρ(x)dV/|r-x|

で与えられることが分かる。

Gauß の法則により,φ は Poisson 方程式 -Δφ=4πkρ を満たすことがわかっているので,これは Poisson 方程式の解の積分表示に他ならない。

ここで,定数 k は電磁気学の単位系から決まる定数であるが,ここでは数学にしか興味がないから,k=1 ととることにする。

この ρ を ∇•F に置き換えれば,F のスカラーポテンシャルが得られるわけである。

また,ベクトル版の Poisson 方程式 -ΔA=∇×F の各成分はスカラー版の Poisson 方程式であるから,それぞれに先ほどの解の積分表示(ただし k=1 ととる)を適用することにより,

A=∫∇×F dV/|r-x|

のようにベクトルポテンシャル A の積分表示が得られる。この右辺の発散が 0 であることは,∇×F の発散が 0 であることから,積分と微分の順序交換および電磁気学でよく知られた技巧(r 変数に関するナブラを x 変数に関するナブラに変換するテクニック)を用いて示すことができる。

※※ φ は -Δφ=∇•F の解だから,φ=∫∇•F dV/|r-x| と書き表せる。こうしてみると,スカラーポテンシャルは F の発散から生み出され,ベクトルポテンシャルは F の回転から生み出されることになる。Blumenthal の1905年の論文の1ページ目に,これらの公式に相当する

∫(div u /r) dτ, ∫(rot u /r) dτ

という式が書かれている。それを見て「美しい」という感想を抱くことを禁じえなかった。僕は「数学の美」というものがよくわからないので,それについて語ることが好きではない。だから,あまりに感銘を受けてつい「美しい」とつぶやいてしまったことは,今回が初めてかもしれない。(2012/4/28 付記)
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ベクトル場を決定するには。

2012-04-25 21:54:25 | mathematics
ベクトル場 A(r) を決定するにはどうしたらよいだろうか。

それにはどうやら ∇•A と ∇×A を定めればよいようだ。そのような式は偏微分方程式になる。したがって,境界条件も指定しなければ解の一意性が成り立たない可能性もでてきてしまう。とりあえず境界条件は適当に設定されているとしよう。

このような観点に立って真空中の Maxwell 方程式系を以下のように書き並べてみる。

∇•E=ρ/ε,

∇×E=-∂B/∂t,

∇•B=0,

∇×B=εμ∂E/∂t+μj.

そうすると,電場 E の発散は電荷分布によって定まり,また単磁荷が存在しないという仮説から磁場 B の発散も定まっていることがわかる。ただしこれらだけではまだ半分の情報が確定しただけである。あとは電場と磁場の回転が定まらないといけないが,それらはちょうど絡み合っていて,単独では解きようがない。したがって,連立方程式を解くときの基本に立ち返り,電場か磁場のいずれかを消去して,残った場についての方程式を導き,それを解くことになる。そうやって導き出された方程式が,電磁波の従ういわゆる波動方程式に他ならない。

ところで,回転の勾配はゼロベクトルになるわけだから,この方程式系がまともであるためには,∇×E=-∂B/∂t の右辺と ∇×B=εμ∂E/∂t+μj の右辺の発散がそれぞれ 0 にならなければまずい。

B/∂t の方は,空間変数に関する偏微分と時間変数に関する偏微分の計算順序が交換可能であるという仮定の下では,∇•B=0 から辻褄が合っていることが直ちに分かる。

それに対して,∇×B=εμ∂E/∂t+μj の方は事情はもっと複雑である。右辺の発散は

μ(∂/∂t)∇•E+μ∇•j

であるが,第一項は ∇•E=ρ/ε であることから μ∂ρ/∂t になる。したがって,右辺の発散が 0 になるためには

∂ρ/∂t+∇•j=0

であることが必要十分である。この,電荷密度 ρ と電流密度 j を結びつける偏微分方程式は電荷が生成も消滅もせずに保存するという,いわゆる電荷量のバランスを意味する連続の方程式と呼ばれるものである。

こういう風にして,それぞれの方程式が持つ物理的な意味は一旦おいて,数学的な観点から発散と回転に関する方程式だとわかる形に書き換えれば,これらの方程式をどう解けばよいかという方針が得やすかったり,電荷保存の法則を導けたりするので,いろいろな数学的操作を試みやすいといえよう。

なお,もし発散や回転をとる微分演算の逆演算が積分で表示できるのであれば,もっと解を求めやすくなると思うのだが,そういう公式があるかどうかについては,まだまだ勉強不足でよくわからない。

ただし,回転演算の逆演算と呼べるような代物はよく知られている。それは定常電流と静磁場の間に成り立つ Biot-Savart の法則

B=μ(∇×)-1j=(μ/4π)∫j(x)×(r-x)/|r-x|3dx

である。このような解の積分表示は,磁場の源は電流であるという考え方があって初めて思いつくものであろう。もちろん,電流の微小部分が作る磁場を重ね合わせることができるという,実験によって確立されている重ね合わせの原理があるからこそ,積分で書き表せるのである。

偏微分方程式の解は,このような畳み込み積分の形で書き表されるのが普通である。それは物理的には納得できることであるが,よく考えてみれば数学的には不思議なことのような気もしないではない。
例えば偏微分方程式の差分版を考えて,得られた式を数学的に解こうとしたら,必然的に畳み込みの和分になる,というようなことがわかれば,よりよく納得できるものなのかもしれない。このアイデアは今思いついたばかりなので,まだ全く試みていないので,うまく行くかどうかすらわからないが。また,発散に関しても同様の公式が知られているのかどうかも知らない。

ちなみに,Biot-Savart の法則の右辺の発散がちゃんと 0 になっているかどうかは形式計算でもよいから確認しなければならないが,それはベクトル解析の手ごろな演習問題のようにも思われる。もっとも,単に積分と微分の順序交換をした上で,実際にしなければならない計算は (r-x)/|r-x|3r に関する回転を求めるだけだから,それが r=x を除いてゼロベクトルになることを考慮すれば足りるのかもしれない。

あれ,けれども,r=x で生じる特異性はどう回避すればよいのだろうか・・・?たとえ形式的であっても,そこのところはきちんと考察すべきであろう。その際,定常電流の場合電流密度の発散が 0 であるという事実も,何らかの形で関与しても不思議ではないと思うのだが,そこのところはどうなのだろうか・・・?電磁気学の教科書などでこの計算を解説しているものもあるだろうから,調べてみることにしよう。

このように,積分核が特異性を持つ場合を特異積分というのだと思うのだが,古くからよく調べられている分野であるから,その手のテキストをちゃんと勉強しないといけないという気がしてきた。
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場という考え方。

2012-04-24 23:29:15 | physics
電磁気学に場の考え方を導入したのはファラデーだという。それはとてつもないアイデアだとつくづく思う。

場という考え方自体は、オイラーあたりに始まるのだろうが、それは流体や弾性体などの連続体という形態の物質に関する力学理論であった。

連続体の理論と電磁気学との決定的な違いは場を生み出す源の有無ではないだろうか。電磁気学では、電場や磁場の源は電荷や電流であり、それらが理論において中心的な役割を果たす。他方、連続体においては電荷や電流に相当する源としての実体はない。

場の源としての実体があるがゆえに、電磁気学では自己場という難問が発生するが、その代わり、静電場を定める偏微分方程式などの解の表示が、素朴な物理的直観で容易に得られるという利点がある。

現時点での僕の場に関する理解は、こんなところである。
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