夏海公司,なれる!SE,2週間でわかる?SE入門,電撃文庫 (2010).
世の中に,この手のジャンルがあるということは十年ほど前から気づいてはいた。
しかし,腰を据えてちゃんと一冊通してラノベを読み通したのは,これが初めてである。
この歳で,いまさら学園ものだの,厨二病全開の世界系ファンタジーだのを読む気にはあまりなれないが,この作品の主人公は大卒でスルガシステム(株)というマイナーな中小企業で先輩にしごかれながらどうにかこうにか業務をこなしていく,といった,オトナ向けの物語のようなので,近所の図書館に置かれていたこともあり,試しに読んでみた。
主人公の桜坂工兵のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を担当する,いわば直属の上司は,どう見ても少女にしか見えない年齢不詳の女性,室見立華(りつか)である。Ixy 氏のイラストが表紙やカラーイラストに載っているのだが,うん,中高生の女の子にしか見えない。そしてどうしても『とらドラ!』の手乗りタイガーとダブってしまい,作中での立華のセリフも,私の脳内では釘宮理恵さんの声で再生されてしまう。
文章も,これがラノベか!という感じで,過去に目にした漫画やアニメの一シーンをもじったような光景を目に浮かべさせるような表現ばかりであり,もう,漫画化か,いっそアニメ化してくれたらと思うほどである。もし自分がアニメ業界の関係者で,資金も潤沢に持っていたとしたら,1クールだけでもいいから,この作品のアニメの制作指揮を執りたいものである。
内容については,ストーリーものである手前,ネタバレは最小限に抑えたいのでほとんど触れるつもりはないが,二つ感想を述べておく。
まず一つ目は,「働くって,大変だね」という,まあ,当たり障りのない感想である。現場で次々と発生する想定外のトラブルを,己のスキルや機転で辛くも乗り越えていく。その様は,緊急医療現場の医療スタッフや,窮地に陥った戦線の兵士さながらである。目まぐるしく変化する状況の中で,集中し,全身全霊をもって適応し,問題を解決していく。そんな暴れ馬みたいな現実に日々もまれ続けていたら,若くともすぐに消耗してしまうだろうが,戦いの場でこそ自分が生きていることを心の底から実感できる,という境地は,特に少年マンガではよく取り上げられる話ではある。このように,そうした境地に共感する癖がついているため,この作品をも好意的に受け入れることができるのだろう。
二つ目は,この作品に手を出した直接の動機ではあるが,SE,特にネットワークエンジニアの業務についてちょっぴり理解が進んだかな,ということである。といっても,自分がいま自宅で使用している屋内 WiFi でさえ,ルータのコンフィグ(設定)を自分で作ったわけでもなんでもなく,ただ単に電源を入れてケーブルをつないだらいつの間にか普通に使えていた,というド素人丸出しの体たらくなので,「SEの仕事,俺,わかっちゃったかも!」なんていうのはおこがましさを通り越して,犯罪の域に達しようとしているともいえるのであるが。
私はこの歳になるまで(この歳になっても)一般企業に勤めた経験がないため,疑似職業体験をさせてくれる,本作のような読み物は非常に貴重である。2010年にこの第一巻が刊行されてから,現在では第十二巻まで出ているようなので,ぼちぼち続きを楽しんでいこうと思っている。
ていうか,知り合いに SE を志望している就活生がいたらまっさきに薦めたいね,この本。
世の中に,この手のジャンルがあるということは十年ほど前から気づいてはいた。
しかし,腰を据えてちゃんと一冊通してラノベを読み通したのは,これが初めてである。
この歳で,いまさら学園ものだの,厨二病全開の世界系ファンタジーだのを読む気にはあまりなれないが,この作品の主人公は大卒でスルガシステム(株)というマイナーな中小企業で先輩にしごかれながらどうにかこうにか業務をこなしていく,といった,オトナ向けの物語のようなので,近所の図書館に置かれていたこともあり,試しに読んでみた。
主人公の桜坂工兵のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を担当する,いわば直属の上司は,どう見ても少女にしか見えない年齢不詳の女性,室見立華(りつか)である。Ixy 氏のイラストが表紙やカラーイラストに載っているのだが,うん,中高生の女の子にしか見えない。そしてどうしても『とらドラ!』の手乗りタイガーとダブってしまい,作中での立華のセリフも,私の脳内では釘宮理恵さんの声で再生されてしまう。
文章も,これがラノベか!という感じで,過去に目にした漫画やアニメの一シーンをもじったような光景を目に浮かべさせるような表現ばかりであり,もう,漫画化か,いっそアニメ化してくれたらと思うほどである。もし自分がアニメ業界の関係者で,資金も潤沢に持っていたとしたら,1クールだけでもいいから,この作品のアニメの制作指揮を執りたいものである。
内容については,ストーリーものである手前,ネタバレは最小限に抑えたいのでほとんど触れるつもりはないが,二つ感想を述べておく。
まず一つ目は,「働くって,大変だね」という,まあ,当たり障りのない感想である。現場で次々と発生する想定外のトラブルを,己のスキルや機転で辛くも乗り越えていく。その様は,緊急医療現場の医療スタッフや,窮地に陥った戦線の兵士さながらである。目まぐるしく変化する状況の中で,集中し,全身全霊をもって適応し,問題を解決していく。そんな暴れ馬みたいな現実に日々もまれ続けていたら,若くともすぐに消耗してしまうだろうが,戦いの場でこそ自分が生きていることを心の底から実感できる,という境地は,特に少年マンガではよく取り上げられる話ではある。このように,そうした境地に共感する癖がついているため,この作品をも好意的に受け入れることができるのだろう。
二つ目は,この作品に手を出した直接の動機ではあるが,SE,特にネットワークエンジニアの業務についてちょっぴり理解が進んだかな,ということである。といっても,自分がいま自宅で使用している屋内 WiFi でさえ,ルータのコンフィグ(設定)を自分で作ったわけでもなんでもなく,ただ単に電源を入れてケーブルをつないだらいつの間にか普通に使えていた,というド素人丸出しの体たらくなので,「SEの仕事,俺,わかっちゃったかも!」なんていうのはおこがましさを通り越して,犯罪の域に達しようとしているともいえるのであるが。
私はこの歳になるまで(この歳になっても)一般企業に勤めた経験がないため,疑似職業体験をさせてくれる,本作のような読み物は非常に貴重である。2010年にこの第一巻が刊行されてから,現在では第十二巻まで出ているようなので,ぼちぼち続きを楽しんでいこうと思っている。
ていうか,知り合いに SE を志望している就活生がいたらまっさきに薦めたいね,この本。