確か発端はこんなことだったと思う。
夏休みだから時間がある。積もり積もっている「勉強したいことリスト」を少しでも消化してはどうだろうか。
そういえば,二重確率行列に関する Birkhoff の定理の証明をきちんと勉強してなかったなぁ。どう証明すればよいのか皆目見当もつかない。標準的なテキストで勉強することにしよう。
ネットにわかりやすい解説落ちてないかな~
→ 教えて!G○○gle先生!
→ Mirsky の短くてシンプルそうな論文を発見。
→ しかし初っ端から撃退される。
とまあ,こんな感じで,自分でもすっかり何に興味を抱いていたか忘れてしまっていたのが,この一連の動作が刺激となって少しずつ思い出されていったのである。
そして,上の話と直接関係があったわけではないと思うが,久々に相加平均と相乗平均の不等式について思いを巡らすに至った。そこで出会ったのが Rado の不等式と Popoviciu の不等式と呼ばれる二つの不等式である。残念ながらどちらも原論文を目にしていないが,他の文献からどうもこれがそうらしいというあたりはついた。ついでに自分で証明を考えてみた。で,以前よくやっていたように得意げにこのブログにまとめを書こうとしたのだが,数式が多く,プレーンなHTMLで書く気にとてもなれない。十日間ほど逡巡したあげく,ようやく TeX で書いて PDF ファイルにしてさらに JPEG 形式に変換するという紆余曲折を経る決意をした。
その成果を画像としてここに貼っておく。面倒だったのと,ちょうど2ページに収まったのとで肝心の参考文献を載せていないが,現在,Google で
Rado an inequality
というキーワードで検索すれば,この手の不等式の専門家である Peter Bullen 氏の論文や著作がいくつかヒットするので,それらを参照していただきたい。僕が作成した証明は一応それをきちんと読まずに作ったものであるが,もしパクリだと糾弾されたら,特に釈明せずに甘んじて受けようと思っている。
それにしても,Rado 氏にしろ,Popoviciu 氏にしろ,よくこうした面白い不等式に気づくものであるとつくづく感嘆する。
僕の個人的な感覚では,相加平均は「加法的内分」,相乗平均は「乗法的内分」とでも呼ぶべき形式である。そしてこれらの間の大小関係をつなぐ(もしくは不等式的に変換する)のが,いわゆる Young の不等式だと認識している。そして加法と乗法をつなぐものは指数関数あるいは対数関数であり,加法的内分と乗法的内分の間に大小関係がはっきり定まるということは,指数関数が凸である(対数関数が凹である)ことに他ならない。
それにしても(あっ,さっきも使った・・・),加法と乗法というのは小学校から慣れ親しんでいる数の基本演算であるが,両者の間には実に不思議な関係がある物だとつくづく感嘆する(あっ,この言い回しもさっき使った・・・)。