担当授業のこととか,なんかそういった話題。

主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

英語で何と言う?

2012-04-11 20:39:57 | mathematics
いろいろな公式において使われる文字は,特別な意味を考慮して選ばれていることがよくある。

三角形の面積を表す公式を,例えば次のように書いたとする。

S=bh/2.

S は square から来ているのだと思うが,square は「正方形」というニュアンスが強いのではないかと思う。それ以外に「2乗する」という意味もあるので,面積は長さの2乗の次元(単位)を持つということから S が使われるのかもしれない。あるいは,英語とは異なる言語(ドイツ語やフランス語など)に起源を持つのかもしれない。

b は「底辺」の base のつもりで書いた。base は他にも対数の底の意味でも用いられる。

h は height のつもりである。

記号とは直接関係ないが,2次関数の平方完成を英語でどういうのか調べてみたら,completing the square ということで,日本語訳はそのまんまである。
ただ,square を正方形と考えると,「足りないピースを補って正方形の形に仕上げる」という図形的なイメージが湧いてくる。実際,そのような図を描いて平方完成のイメージを解説することができるので,「正方完成」や「正方形完成」という訳語を提案してもそれほど悪くはあるまい。

ちなみに,2次方程式の解の理論で重要な役割を果たす D は,discriminant から来ていると思われる。

また,平方完成をして得られる頂点の座標を (p,q) と書くのは,頂点を peak と呼ぶからだろうかと今思いついたのだが,英語版の Wikipedia には平方完成した形の式を vertex form と読んでいるし,頂点は vertex と書いてあるようなので,僕の予想は外れた。

あと,2次関数の一般形は,よく ax2+bx+c と書くが,ちょうど定数項のところが constant の c になるのは面白い。

他にもいろいろあるが,とりあえず思いつくものをいくつか挙げておこう。

特別な長さを表すのに用いられる文字として r がある。円や球の半径を意味する radius が元だろう。
なお,複数形は radii である。また,弧度法のラジアンは radian であって,同系の言葉と思われる。英語では「レイディアン」と発音する。

整式の除法において,q は quotient(商),r は remainder(余り,剰余)から来ていると思われる。
整式,あるいは多項式は polynomial なので,ちょうど p,q,r とアルファベット順に並んでいるのが面白い。

点と直線の距離の公式において,よく d という文字が用いられるが,これは distance から来ているのだろう。

微分 df や導関数 dy/dx に出てくる d は differential や derivative の d であろう。

極限の lim は limit から来ているという理解で問題ないだろうが,さらに遡ると,畑と畑の間の道,つまりあぜ道を表すラテン語の limes が源であるという。limes はもともとそういう「境界」を意味する言葉であり,非斉次境界条件を課された偏微分方程式論に関するフランス語のある専門書のタイトルには "problèmes aux limites non homogènes" という語句が見られ,ラテン語の名残を確認することができる。

数列の和を表すのに便利な総和記号Σはギリシャ文字だが,これはラテン文字の S に相当する文字である。和は sum なので,その頭文字というわけである。

積分は integration であるが,これと∫は直接は関係ない。
これは sum の S を縦に引き伸ばした記号だと言われている。

虚数単位の i は,おそらく imaginary number から来ているのだろう。
Hamilton が四元数を発見した際には,超複素数として,i に続く二つの新たな単位を j,k のように,i に続くアルファベットをそのまま用いた。

行列は英語で matrix なので,一般の行列を表すのに,無個性な A や B ではなく,M を使うこともある。

単位行列の E はドイツ語の Einheitsmatrix に由来すると思われる。英語は identity matrix なので,英語圏では I を使う。ついでに,matrix の複数形は,通常 matrices である。

ドイツ語で集合は Menge といい,もともと集合論はドイツで生まれ,発展したので,その名残で一般の集合を表すのに M がよく用いられた時期がある。

数列は sequence,級数は series であるが,あんまり「数列を (sn) とすると・・・」とは書かない。

等差数列の一般項を表す公式によく用いられる d は difference から来ているのだろう。また,等比数列の一般項の公式に出てくる r は ratio である。
昔は等差数列は算術数列 (arithmetic sequence),等比数列は幾何数列 (geometric sequence) と呼ばれたものらしいが,現在では古い文献でしか滅多にお目にかからなくなってしまった。
これとよく似た話で,相加平均・相乗平均は算術平均・幾何平均と呼ばれる。英語圏ではそれぞれ AM,GM と略される(M は平均 mean の意)。

また記号とは関係ない話だが,等式は,方程式 equation,恒等式 identity,そして定義式 definition の三通りがある。

自然数は natural number の N,整数は Zahlen(ドイツ語で数を意味する Zahl の複数形)の Z,実数は real number の R をよく用いるが,有理数の集合はなぜか Q で表すことが多い。英語では rational number というので,有理数の集合にも R を使いたいところだが,実数の集合の R と被るので困ってしまう。そこで,有理数は実数に遠慮して R ではなくて Q を使うことになったのだろう。なぜ Q なのかといえば,おそらく,有理数の次に構成されるものが実数 R だということで,R の前の文字 Q を使ったのだと思われる。

組み合わせの数を表す C は combination,順列を表す P は permutation から来ていることは間違いないだろう。

確率をよく p で表すのも,probability から来ていることは明白である。


高校までの数学に限ってもまだまだ例はありそうだが,とりあえずネタ切れになったし,キリがないので,この話はこれくらいにしておこう。
コメント (1)
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