物質や現象の対称性について,これまで僕は本格的に学んだことがないが,gk 氏から提起された問題をきっかけに,昔聞きかじったことを頼りに,情報を集めてみた。
まず,Stanford Encyclopedia of Philosophy という,物理学や科学哲学に関する用語や概念について知りたいときに非常に便利なサイトの項目 "
Symmetry and Symmetry Breaking" は,一度は熟読したいものである。
さて,Curie の原理の名で知られる Pierre Curie 氏が提唱した原理の原論文はフランス語で書かれているが,今や
web 上で公開されている。
英語で書かれた簡単な解説もあるが,そこでは関連の深い項目として Neumann's principle というものも紹介されている。
物理現象は偏微分方程式の解として記述されることが多いが,奇しくも1979年という同じ年に,2つの(たぶんかなり有名な)重要な論文が Communications in Mathematical Physics という論文誌に掲載された。
一つは第68号に掲載された
Gidas, Ni and Nirenberg, Symmetry and Related Properties via the Maximum Principle
であり,もう一つは第69号に掲載された
Palais, The Principle of Symmetric Criticality
である。これら2つの論文の名前は十年ほど前に先輩達の口からよく聞いていたが,ちゃんと読んだことはなかった。いい機会なので,時間を作って読んでみたい。
対称性を利用して方程式を解くということは物理では非常によく用いられる手法であるが,よく言及されるのは重力場の方程式に関する Weyl の解法らしい。
それは Weyl の『空間・時間・物質』という非常に有名な書物の第IV章に詳しい解説がある。
また,その内容に基づいた別の解説として,Pauli の相対性理論の解説がある。
どちらも内山龍雄氏の手になる翻訳がちくま学芸文庫として文庫化されており,以前購入したので,せっかくなので該当箇所くらいには目を通しておきたいところである。
当面の自分の研究テーマは流体の方程式なので,連続体の力学も本腰をすえて勉強しなければならない。
連続体の理論と相対性理論はテンソル解析という共通の数学を必要とするので,テンソルを勉強すれば一石二鳥である。
電磁気学も,ちゃんと学びたい分野のひとつであるが,これは連続体の理論を手本にして理論的に整備され,相対性理論を生み出す母体となった分野であるから,
連続体 → 電磁気学 → 相対性理論
という関係がある。
必要な数学はベクトル解析が中心であるので,しばらくの間,マイブームはベクトル解析,ないしはテンソル解析といったところにしようかなと思う。
物理学の観点に立った統一的な視点は,「場」である。場を扱う数学がベクトル解析である。
こういうモチベーションがあれば,興味を持って取り組めそうな気がしている。
幸い,高名な物理学者の手になる格好の参考書
高橋康,古典場から量子場への道―これから ’場' を学ぶ人のために
が手元にあるので,この本を励みにしつつ,ゆっくり,のんびり,マイペースにやっていこうと思う。