担当授業のこととか,なんかそういった話題。

主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

歌のルーツ。

2012-04-15 23:11:29 | Weblog
週末,ダラダラ過ごしていたら,何のやる気も起きなくて困ってしまった。

なんとなく思いついて民謡の歌詞を検索していたら,面白いホームページを見つけた。
その名も,ドナドナ研究室である。
「森のくまさん」と「むすんでひらいて」についてはざっと読んだ。興味深い話をいろいろ学べて楽しかった。

あと,これは備忘録としてメモっておくのだが,ロシア語の歌詞が載っているサイトも見つけた。著作権に配慮して,ちゃんと掲載してよいかどうかを吟味した上で載せているようだ。

こうしたクオリティーの高いサイトを見るにつけ,自分はまだまだだなという思いが強くなり,ますます落ち込んでしまうので,あんまり一度に見ない方がいいね。
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Klein の不等式。(証明編)

2012-04-15 17:54:27 | mathematics
「Klein の不等式。」と題した記事への補足。


David Ruelle 氏のテキスト "Statistical Mechanics: Rigorous Results" の26ページにある "2.5.2 A Convexity Inequality (O. Klein)" の証明をそのまま拝借して,有限次元 Hilbert 空間上の自己共役演算子(簡単に言うと,自己共役な行列)A,B に対して成り立つ Klein の不等式

Tr(AlogA-AlogB)≧Tr(A-B)

の証明を述べよう。

Ruelle 氏に倣い,より一般的に,凸関数 f に対して

Tr(f(A)-f(B)-(A-B)f ' (B))≧0

が成り立つことを示そう。ここで,具体的には f(t)=tlog(t) ととるつもりなので,f は2階微分可能であるという制限を設けても我々の目的には十分である。

まずは凸関数に関する基本的な不等式を導いておこう。
f が2階微分可能な凸関数であるなら,高校の数IIIでも習う(というか,定義として採用されているであろうか?)ように,f の2階導関数は正である。

したがって,f の1階導関数は単調増加である。

ゆえに,2つの実数 a,b に対し,a≧b ならば,a と b の間にあるどんな実数 c に対しても f ' (a)≧f ' (c)≧f ' (b) が成り立つ。

ところで,平均値の定理により,

f(a)-f(b)=f ' (c)(a-b)

が成り立つような c が a と b の間に取れる。

ここで,もし a-b≧0 ならば,f ' (c)≧f ' (b) であるから,

f(a)-f(b)≧f ' (b)(a-b)

となる。

あるいは,a<b ならば,a-b<0 であり,f ' (c)≦f ' (b) であるから,やはり f ' (c)(a-b)≧f ' (b)(a-b) となるので,

f(a)-f(b)≧f ' (b)(a-b)

が成り立つ。

※ よくよく見たら,凸関数に対する劣微分の定義 f(a)-f(b)≧(∂f(b),a-b) そのものなので,この不等式は凸関数の非常に有名な基本的な性質の一つであった。

これで下準備は終わったので,いよいよ演算子 A と B に関する話に移ろう。

A と B が自己共役であるとき,特に正規でもあるから,スペクトル分解ができる。
そこで,A の固有ベクトルからなる基底を (|φm>),B の固有ベクトルからなる基底を (|ψn>) と記し,cmn:=<φmn> とおこう。このとき,Σn |cmn|2=1 であることに注意する。
A の固有値を am,B の固有値を bn などとおけば,

f(A)=Σm f(am)|φm><φm|,

f(B)=Σn f(bn)|ψn><ψn|,

Bf ' (B)=Σn bnf ' (bn)|ψn><ψn|

であるから,ある番号 m につき,

m|f(A)φm>=Σn |cmn|2f(am),

m|f(B)φm>=Σn |cmn|2f(bn),

m|Bf ' (B)φm>=Σn |cmn|2bnf ' (bn)

となる。また,A が自己共役であることから,

m|Af ' (B)φm>=<Aφm|f ' (B)φm>
=amm|f ' (B)φm>
n|cmn|2amf ' (bn)

となる。よって,M:=f(A)-f(B)-(A-B)f ' (B) とおくと,

m|Mφm>=Σn |cmn|2[f(am)-f(bn)-(am-bn)f ' (bn)]

となるが,|cmn|2≧0 であり,f が凸関数であることから,先に示したように

f(am)-f(bn)-(am-bn)f ' (bn)≧0

でもある。ゆえに m|Mφm>≧0 である。左辺を m について足し合わせたものは TrM に等しいので,これで示したかった不等式が導けた。c.q.f.d.


さて,f(t)=tlogt のとき,f ' (t)=1+logt,f ' ' (t)=1/t で,t>0 において確かに f は凸関数である。このとき

f(A)-f(B)-(A-B)f ' (B)=AlogA-BlogB-(A-B)(I+logB)=AlogA-AlogB-(A-B)

であるから,トレースの線形性により,

Tr[AlogA-AlogB-(A-B)]≧0



Tr(AlogA-AlogB)≧Tr(A-B)

と同値である。

うう~む,きわめて初等的な証明であるが,実にエレガントである。


なお,O. Klein 氏の1931年の論文はまだ解読できていないが,それはどうやら Gibbs 氏の教科書 "Elementary Principles in Statistical Mechanics" (1902) の136ページ(Klein 氏が引用している1905年のドイツ語版 "Elementare Grundlagen der Statistische Mechanik" では138ページ)の議論を参考にしているらしい。それらもぜひ理解したいところだが,それはまたそのうち取り組むこととしよう。

合言葉は「先送り」である・・・。
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対称性と Curie の原理。

2012-04-15 16:56:13 | physics
物質や現象の対称性について,これまで僕は本格的に学んだことがないが,gk 氏から提起された問題をきっかけに,昔聞きかじったことを頼りに,情報を集めてみた。

まず,Stanford Encyclopedia of Philosophy という,物理学や科学哲学に関する用語や概念について知りたいときに非常に便利なサイトの項目 "Symmetry and Symmetry Breaking" は,一度は熟読したいものである。

さて,Curie の原理の名で知られる Pierre Curie 氏が提唱した原理の原論文はフランス語で書かれているが,今や web 上で公開されている

英語で書かれた簡単な解説もあるが,そこでは関連の深い項目として Neumann's principle というものも紹介されている。

物理現象は偏微分方程式の解として記述されることが多いが,奇しくも1979年という同じ年に,2つの(たぶんかなり有名な)重要な論文が Communications in Mathematical Physics という論文誌に掲載された。

一つは第68号に掲載された

Gidas, Ni and Nirenberg, Symmetry and Related Properties via the Maximum Principle

であり,もう一つは第69号に掲載された

Palais, The Principle of Symmetric Criticality

である。これら2つの論文の名前は十年ほど前に先輩達の口からよく聞いていたが,ちゃんと読んだことはなかった。いい機会なので,時間を作って読んでみたい。

対称性を利用して方程式を解くということは物理では非常によく用いられる手法であるが,よく言及されるのは重力場の方程式に関する Weyl の解法らしい。
それは Weyl の『空間・時間・物質』という非常に有名な書物の第IV章に詳しい解説がある。
また,その内容に基づいた別の解説として,Pauli の相対性理論の解説がある。
どちらも内山龍雄氏の手になる翻訳がちくま学芸文庫として文庫化されており,以前購入したので,せっかくなので該当箇所くらいには目を通しておきたいところである。

当面の自分の研究テーマは流体の方程式なので,連続体の力学も本腰をすえて勉強しなければならない。
連続体の理論と相対性理論はテンソル解析という共通の数学を必要とするので,テンソルを勉強すれば一石二鳥である。

電磁気学も,ちゃんと学びたい分野のひとつであるが,これは連続体の理論を手本にして理論的に整備され,相対性理論を生み出す母体となった分野であるから,

連続体 → 電磁気学 → 相対性理論

という関係がある。
必要な数学はベクトル解析が中心であるので,しばらくの間,マイブームはベクトル解析,ないしはテンソル解析といったところにしようかなと思う。

物理学の観点に立った統一的な視点は,「場」である。場を扱う数学がベクトル解析である。
こういうモチベーションがあれば,興味を持って取り組めそうな気がしている。

幸い,高名な物理学者の手になる格好の参考書

高橋康,古典場から量子場への道―これから ’場' を学ぶ人のために

が手元にあるので,この本を励みにしつつ,ゆっくり,のんびり,マイペースにやっていこうと思う。
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