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主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

【高校数学のツボ】 とある2次式の最大値。

2019-03-12 00:05:06 | mathematics
高校数学ではそれとなく2変数関数の最大最小問題が扱われる。例えば大学入試問題で次のような問題を見かける。



【問題】

x2+y2=1 を満たす実数 x, y について,

f(x,y)=15x2+10xy-9y2

の最大値を求めよ。



【指針】

点 (x,y) は xy 平面上の原点を中心とする単位円周上にあるので,x=cosθ, y=sinθ とおいて三角関数を利用するというのが,この手の問題に対する標準的なアプローチと言えよう。最大最小を考える目的関数が x と y の1次式であるときは図形的な解法が標準的であろうが,このように三角関数を持ち出す解法も有効である。

なお,現行の学習指導要領では高校数学の範囲から外されており,大学で初めて扱うことになっている行列の理論においては,上の問題は2次形式にかかわる対称行列の固有値を求めることに帰着され,そのような見方の方が標準的となる。あるいは,2変数関数の条件付き極値問題として Lagrange の未定乗数法を適用するという汎用性の高い解法も適用できる。

このように,今考えている問題は様々な取り扱いが可能であるが,ここでは少々マニアックとも思える解法を紹介しよう。



【解答例】

f(x,y)=15x2+10xy-9(1-x2)=24x2+10xy-9

※ 最右辺の x2 の係数を間違えていたので訂正した。(2020年5月21日)

厳密には相加平均と相乗平均の不等式とは言えないが,任意の実数 a, b について,それらの符号に関係なく

2ab≦a2+b2

という不等式が成り立つことを利用する。

これを利用すると

10xy=2x・5y≦x2+(5y)2=x2+25y2

が成り立つ。等号が成立するのは x=5y のときである。具体的には,x2+y2=1 であることと考え合わせると,

(x,y)=(±5/√26,±1/√26) (複号同順)

のときである。

さて,この不等式により

f(x,y)≦16(x2+y2)

となるが,x2+y2=1 であったから f(x,y)≦16 が成り立つことになる。そして先ほどの x, y の値のときに等号が成り立つので,f の最大値は 16 である。


【反省】

今回は2次の整式 f の係数がちょうど良かったからたまたまうまく行っただけかもしれない。どうもそんな気がしてならない行き当たりばったりの解法に思える。もっと他の場合にも使えるかどうかというと,例えば

f(x,y)=x2+2xy+3y2

であっても,2xy のばらし方は工夫しなければならないが,ともかく同じ手法で解くことが可能である。

この記事を書きながら調べてみたところ,b>0 であれば

f(x,y)=ax2+2bxy+cy2

の最大値と最小値を求めるのにこの手法は有効であることが確認できた。b<0 であれば,例えば

g(x,y)=f(-x,y)

とおいて 2bxy のところが 2(-b)xy に置き換わった整式 g の最大値と最小値を求めればよい。

では問題は b=0 のときであるが,その場合はこの方法の要である「xy のくずし」ができないため,適用範囲外となる。

苦肉の策としては,例えば u=(x+y)/√2,v=(x-y)/√2 という変換を行って,g(u,v)=f(x,y) とおき,この g の中に無理やり積 uv が現れることを期待するというものが考えられるが,そもそも xy をばらすという発想からしてみると,こんな変換に頼ろうというのは邪道中の邪道である。

というわけで,b=0 のときの

f(x,y)=ax2+cy2

という関数の問題は,

f(x,y)=((a+c)/2)(x2+y2)+((a-c)/2)(x2-y2)

と変形することで,

h(x,y)=x2-y2

という関数の最大・最小問題を別に解く必要があることまではわかった。

そして実はこの関数は,先ほど記した邪道の変数変換を用いると

u2+v2=1 の下で

h(u,v)=f(x,y)=f((u+v)/√2,(u-v)/√2)=2uv

の最大値と最小値を求めるという問題になり,

|2uv|≦u2+v2=1

なので「秒で」解決する。あとは a と c の大小関係(つまり a-c の符号)に注意すればよい。

どうにかオチが付いたところで切り上げることとしよう。
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酸化還元反応と正負の数の計算規則。

2019-03-02 00:51:45 | chemistry
歴史的な事情により,電気現象を担う実体である電子の電荷は負の数として扱われており,化学反応における電子のやりとりや電気回路における電子の流れを考える際に頭がこんがらがりそうになる。

ところで,酸化還元反応における原子の酸化数の変化を考えることは,負の数を引くことが正の数を加えることと同じ効果をもたらすという計算規則を実感する良い機会であるように思う。

例えば電解精錬などで銅でできた陽極が銅イオン (II) として水溶液中に溶解していくという,「電子を吸い取られる」酸化反応は

Cu → Cu2+ + 2e-

というイオン反応式で表せるが,銅原子の酸化数は「-1 の電荷をもつ電子を 2 個失ったので,0 から +2 に増加した」ということになり,これは

0 - (-2) = +2

という,日本では中学1年で習う大事な計算規則に対応する。

なお,電子を受け取って酸化数が減少する還元反応では,例えが高校化学で必修ともいえる,硫酸酸性の過マンガン酸カリウム水溶液におけるマンガン原子の酸化作用(マンガン Mn 自身は還元される)

MnO4- + 8H+ + 5e- → Mn2+ + 4H2O

における Mn 原子の酸化数の変化

(+7) + (-5) = +2

のように,正の数と負の数の和に関する計算規則が利用されている。


こんなわけで,酸化数の変化の計算は正負の数の加法・減法を理解する上でとても良い題材だと思うので中学1年の数学に取り入れてはどうかと思うのだが,どうかなぁ。
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