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ベクトル場を決定するには。

2012-04-25 21:54:25 | mathematics
ベクトル場 A(r) を決定するにはどうしたらよいだろうか。

それにはどうやら ∇•A と ∇×A を定めればよいようだ。そのような式は偏微分方程式になる。したがって,境界条件も指定しなければ解の一意性が成り立たない可能性もでてきてしまう。とりあえず境界条件は適当に設定されているとしよう。

このような観点に立って真空中の Maxwell 方程式系を以下のように書き並べてみる。

∇•E=ρ/ε,

∇×E=-∂B/∂t,

∇•B=0,

∇×B=εμ∂E/∂t+μj.

そうすると,電場 E の発散は電荷分布によって定まり,また単磁荷が存在しないという仮説から磁場 B の発散も定まっていることがわかる。ただしこれらだけではまだ半分の情報が確定しただけである。あとは電場と磁場の回転が定まらないといけないが,それらはちょうど絡み合っていて,単独では解きようがない。したがって,連立方程式を解くときの基本に立ち返り,電場か磁場のいずれかを消去して,残った場についての方程式を導き,それを解くことになる。そうやって導き出された方程式が,電磁波の従ういわゆる波動方程式に他ならない。

ところで,回転の勾配はゼロベクトルになるわけだから,この方程式系がまともであるためには,∇×E=-∂B/∂t の右辺と ∇×B=εμ∂E/∂t+μj の右辺の発散がそれぞれ 0 にならなければまずい。

B/∂t の方は,空間変数に関する偏微分と時間変数に関する偏微分の計算順序が交換可能であるという仮定の下では,∇•B=0 から辻褄が合っていることが直ちに分かる。

それに対して,∇×B=εμ∂E/∂t+μj の方は事情はもっと複雑である。右辺の発散は

μ(∂/∂t)∇•E+μ∇•j

であるが,第一項は ∇•E=ρ/ε であることから μ∂ρ/∂t になる。したがって,右辺の発散が 0 になるためには

∂ρ/∂t+∇•j=0

であることが必要十分である。この,電荷密度 ρ と電流密度 j を結びつける偏微分方程式は電荷が生成も消滅もせずに保存するという,いわゆる電荷量のバランスを意味する連続の方程式と呼ばれるものである。

こういう風にして,それぞれの方程式が持つ物理的な意味は一旦おいて,数学的な観点から発散と回転に関する方程式だとわかる形に書き換えれば,これらの方程式をどう解けばよいかという方針が得やすかったり,電荷保存の法則を導けたりするので,いろいろな数学的操作を試みやすいといえよう。

なお,もし発散や回転をとる微分演算の逆演算が積分で表示できるのであれば,もっと解を求めやすくなると思うのだが,そういう公式があるかどうかについては,まだまだ勉強不足でよくわからない。

ただし,回転演算の逆演算と呼べるような代物はよく知られている。それは定常電流と静磁場の間に成り立つ Biot-Savart の法則

B=μ(∇×)-1j=(μ/4π)∫j(x)×(r-x)/|r-x|3dx

である。このような解の積分表示は,磁場の源は電流であるという考え方があって初めて思いつくものであろう。もちろん,電流の微小部分が作る磁場を重ね合わせることができるという,実験によって確立されている重ね合わせの原理があるからこそ,積分で書き表せるのである。

偏微分方程式の解は,このような畳み込み積分の形で書き表されるのが普通である。それは物理的には納得できることであるが,よく考えてみれば数学的には不思議なことのような気もしないではない。
例えば偏微分方程式の差分版を考えて,得られた式を数学的に解こうとしたら,必然的に畳み込みの和分になる,というようなことがわかれば,よりよく納得できるものなのかもしれない。このアイデアは今思いついたばかりなので,まだ全く試みていないので,うまく行くかどうかすらわからないが。また,発散に関しても同様の公式が知られているのかどうかも知らない。

ちなみに,Biot-Savart の法則の右辺の発散がちゃんと 0 になっているかどうかは形式計算でもよいから確認しなければならないが,それはベクトル解析の手ごろな演習問題のようにも思われる。もっとも,単に積分と微分の順序交換をした上で,実際にしなければならない計算は (r-x)/|r-x|3r に関する回転を求めるだけだから,それが r=x を除いてゼロベクトルになることを考慮すれば足りるのかもしれない。

あれ,けれども,r=x で生じる特異性はどう回避すればよいのだろうか・・・?たとえ形式的であっても,そこのところはきちんと考察すべきであろう。その際,定常電流の場合電流密度の発散が 0 であるという事実も,何らかの形で関与しても不思議ではないと思うのだが,そこのところはどうなのだろうか・・・?電磁気学の教科書などでこの計算を解説しているものもあるだろうから,調べてみることにしよう。

このように,積分核が特異性を持つ場合を特異積分というのだと思うのだが,古くからよく調べられている分野であるから,その手のテキストをちゃんと勉強しないといけないという気がしてきた。
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