実数の理論というのは,例えば大学の微積の授業でまじめに取り扱おうとすると,そこそこボリュームのある理論なので,全容を説明するのにはかなりの時間を要する。しかも,小学校から高校までの算数・数学の典型的な取り扱いである「公式を当てはめて計算して終わり」というパターンとは全くといってよいほど異質な,計算よりも理屈に重点が置かれる内容のため,そのような思考の型に慣れるためには,かなりの修練と忍耐が必要となる。そういうわけで,理工系の大学生であってすら,実数論の体系を授業で展開されてはちんぷんかんぷんであろう。的確なたとえではないが,全自動洗濯機というのは衣服と洗剤を入れてスタートボタンをぽちっと押すものだという認識しか持たない人が,いきなり洗濯機を分解して各パーツの機能やそれらの連携についてとうとうと説明されるのと同じ種類の戸惑いと違和感が生じるのである。
真正面から実数論を講義するのは危険極まりない行為であるが,そうはいってもごく少数のエッセンスを選んでつまみ食いをさせるというのも,理論体系を無視し,知識をバラバラに提示するのであるから,実数論の概要を理解するどころではない。したがって,そういうやり方も望ましくない。
そこまで考えてふと思いついたアイデアは,「数の歴史」ともいうべき話を講話として紹介することである。いうなれば人類の数に対する認識の変遷をかいつまんで説明するのである。ただし,僕が持っている知識は少なすぎるし,断片的だし,ほとんど体系立っていないため,現時点ではとても1コマも話をもたせることはできない。そして,史実に反する間違った話をするわけにもいかないので,準備にはかなりの時間と労力が必要になる見込みである。
ただ,いつの時代から人類は「実数」というものを意識しだしたのか,という問い自体はとても魅力的なので,趣味として調べてみたいものである。また,そうして生まれた原始的な実数概念は微分積分学(というより,解析学というもっと広いカテゴリーでとらえるべきだろう)の発展によって19世紀あたりに大きな危機を迎え,「実数とは何か」という問いが数学の中心課題になった様子や,その危機を先人たちはどのように乗り越えたのか,という話は,うまく語ればなかなか面白いものになるに違いない。
19世紀の終わりごろに数学全体の危機が直面した危機は,フーリエ級数という,現在の科学技術を根幹で支えていると言っても過言ではないような理論がその発端となって生じた。そしてそれは一方で積分の理論の精密化を促した。その大きな流れの中で実数概念の見直しも行われたのである。
そのフーリエ級数の理論(実際には,フーリエ解析という名のより広大な理論)は,実は我々人間が耳で音を聞いたり,目で色を認識するといった知覚の機能と密接な関係がある。そんな話を切り口にすれば,純然たる数学の話をするだけよりも多くの人に興味を持ってもらいやすいかもしれない。
※ 上に述べた数学の発展史の概要や知覚の仕組みは,綿密に調べた上で書いているわけではなく,なんとなくそんなような話だったっけな~とうろ覚えの知識に基づいて書いているので,正確さに著しく欠けるかもしれないことをお断りしておく。
そんなことをつらつらと考えているとき,そういえば色覚は "color perception" というのだったかと,ちょうど一年ほど前に友人の gk 氏から教わったことを思い出した。
そして,関心は perception という単語の成り立ちへと移っていった。
percept という単語は,2つの見覚えのある単語 per + cept と分解できそうだなぁ。
per という接頭辞はどんな意味を持つのだろう? perplex という単語がすぐに思い浮かぶが,あれは確か複雑なとかこんがらがったという感じの意味ではなかっただろうか?
perplex の plex は,complex の plex と確か同じ意味ではなかったっけ?complex も複雑な胸の裡(うち)を表現するのに使われる語だったと思うのだが。そうすると,plex はそういう「こんがらがった」状態を指す語なのだろう。それに per がついたら,どんなニュアンスが付け加わるのだろうか。
plex の線は僕の知識ではこれ以上たどれそうにないので,自然と考えは cept に移っていった。
cept がつく語としては,accept,recept,intercept,concept などがすぐに思い浮かんだ。
accept は受け入れる,recept は reception という名詞からして,やはり何か受け入れるという感じの意味合いがある。そうすると concept はどうだろうか?con というのは一体どういう意味の語なのだろうか?ちょっとわからないな。intercept はどうか?これは球技でパスを途中でカットするくらいの意味しか知らないが,いわば邪魔するというわけだな。うーん,受け入れるという cept の本来の意味とは逆なようだが,inter は international などのように,つながりというか,連携を表すようなニュアンスを感じるのだが・・・。
このあたりが僕の限界だったので,帰宅してから internet でいろいろ検索してみた。そうすると,cept の意味は「受け入れる」という感じのものらしい。そして,代表的な複合語として except が例に挙げられていた。
なるほど!
except は完璧に見落としていた。ex は「除く」という感じがする。except は「受け入れ拒否」という感じなのだろうか。受容できる集団から外れたもの,つまり例外ということである。こう考えれば,十分に意味はつかめる。
さて,謎だった intercept も,inter というのは「間(あいだ)」という感じがするので,intercept は「間で受け取る」,つまりパスをやり取りしている二者の間に割り込んでパスを横取りするということなのだろう。
こういう,接頭辞や接尾辞と語幹の複合として単語の意味を読み解くという話は何も目新しいことではなく,言語教育においては基礎的な部類の話であろう。したがって,今回話題にしたような英単語についてたくさんの例を解説した書物は世の中にたくさん出回っていそうである。そういえば,英語の辞書の中には語源の解説も載せているものもあったことを思い出した。
そうした本の内容をよりよく身につけるには,知識として覚えるだけでなく,ちょっと思いついた単語についてあれこれ考えをめぐらせることが大事であろう。そういう本を手にする機会があったら,うすぼんやりしているときの暇つぶしが一つ増えることになりそうだ。それは楽しみである。
真正面から実数論を講義するのは危険極まりない行為であるが,そうはいってもごく少数のエッセンスを選んでつまみ食いをさせるというのも,理論体系を無視し,知識をバラバラに提示するのであるから,実数論の概要を理解するどころではない。したがって,そういうやり方も望ましくない。
そこまで考えてふと思いついたアイデアは,「数の歴史」ともいうべき話を講話として紹介することである。いうなれば人類の数に対する認識の変遷をかいつまんで説明するのである。ただし,僕が持っている知識は少なすぎるし,断片的だし,ほとんど体系立っていないため,現時点ではとても1コマも話をもたせることはできない。そして,史実に反する間違った話をするわけにもいかないので,準備にはかなりの時間と労力が必要になる見込みである。
ただ,いつの時代から人類は「実数」というものを意識しだしたのか,という問い自体はとても魅力的なので,趣味として調べてみたいものである。また,そうして生まれた原始的な実数概念は微分積分学(というより,解析学というもっと広いカテゴリーでとらえるべきだろう)の発展によって19世紀あたりに大きな危機を迎え,「実数とは何か」という問いが数学の中心課題になった様子や,その危機を先人たちはどのように乗り越えたのか,という話は,うまく語ればなかなか面白いものになるに違いない。
19世紀の終わりごろに数学全体の危機が直面した危機は,フーリエ級数という,現在の科学技術を根幹で支えていると言っても過言ではないような理論がその発端となって生じた。そしてそれは一方で積分の理論の精密化を促した。その大きな流れの中で実数概念の見直しも行われたのである。
そのフーリエ級数の理論(実際には,フーリエ解析という名のより広大な理論)は,実は我々人間が耳で音を聞いたり,目で色を認識するといった知覚の機能と密接な関係がある。そんな話を切り口にすれば,純然たる数学の話をするだけよりも多くの人に興味を持ってもらいやすいかもしれない。
※ 上に述べた数学の発展史の概要や知覚の仕組みは,綿密に調べた上で書いているわけではなく,なんとなくそんなような話だったっけな~とうろ覚えの知識に基づいて書いているので,正確さに著しく欠けるかもしれないことをお断りしておく。
そんなことをつらつらと考えているとき,そういえば色覚は "color perception" というのだったかと,ちょうど一年ほど前に友人の gk 氏から教わったことを思い出した。
そして,関心は perception という単語の成り立ちへと移っていった。
percept という単語は,2つの見覚えのある単語 per + cept と分解できそうだなぁ。
per という接頭辞はどんな意味を持つのだろう? perplex という単語がすぐに思い浮かぶが,あれは確か複雑なとかこんがらがったという感じの意味ではなかっただろうか?
perplex の plex は,complex の plex と確か同じ意味ではなかったっけ?complex も複雑な胸の裡(うち)を表現するのに使われる語だったと思うのだが。そうすると,plex はそういう「こんがらがった」状態を指す語なのだろう。それに per がついたら,どんなニュアンスが付け加わるのだろうか。
plex の線は僕の知識ではこれ以上たどれそうにないので,自然と考えは cept に移っていった。
cept がつく語としては,accept,recept,intercept,concept などがすぐに思い浮かんだ。
accept は受け入れる,recept は reception という名詞からして,やはり何か受け入れるという感じの意味合いがある。そうすると concept はどうだろうか?con というのは一体どういう意味の語なのだろうか?ちょっとわからないな。intercept はどうか?これは球技でパスを途中でカットするくらいの意味しか知らないが,いわば邪魔するというわけだな。うーん,受け入れるという cept の本来の意味とは逆なようだが,inter は international などのように,つながりというか,連携を表すようなニュアンスを感じるのだが・・・。
このあたりが僕の限界だったので,帰宅してから internet でいろいろ検索してみた。そうすると,cept の意味は「受け入れる」という感じのものらしい。そして,代表的な複合語として except が例に挙げられていた。
なるほど!
except は完璧に見落としていた。ex は「除く」という感じがする。except は「受け入れ拒否」という感じなのだろうか。受容できる集団から外れたもの,つまり例外ということである。こう考えれば,十分に意味はつかめる。
さて,謎だった intercept も,inter というのは「間(あいだ)」という感じがするので,intercept は「間で受け取る」,つまりパスをやり取りしている二者の間に割り込んでパスを横取りするということなのだろう。
こういう,接頭辞や接尾辞と語幹の複合として単語の意味を読み解くという話は何も目新しいことではなく,言語教育においては基礎的な部類の話であろう。したがって,今回話題にしたような英単語についてたくさんの例を解説した書物は世の中にたくさん出回っていそうである。そういえば,英語の辞書の中には語源の解説も載せているものもあったことを思い出した。
そうした本の内容をよりよく身につけるには,知識として覚えるだけでなく,ちょっと思いついた単語についてあれこれ考えをめぐらせることが大事であろう。そういう本を手にする機会があったら,うすぼんやりしているときの暇つぶしが一つ増えることになりそうだ。それは楽しみである。