担当授業のこととか,なんかそういった話題。

主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

Karl Menger の試み。

2012-04-29 20:58:57 | mathematics
某大手ネット通販サイトで注文した本が届いた。

Karl Menger の "CALCULUS A Modern Approach" (Dover, paperback) である。

※ もしやと思って調べてみたら,無償で全文をオンラインで閲覧できたことが判明してしまった・・・。G○○gle さんが見つけてくれていれば・・・。(2012/4/30 付記)

3ページほどインクで汚れているので交換してもらいたい気もするのだが,交換してもらっても同じようなものしかこないかもしれないので,手放してしばらく読めないよりはと我慢することにした。
本文が読めないほどの汚れというわけでもないし・・・。

パラパラめくってみると,意外と重厚で,読み応えがありそうである。

あるサイトによると,Karl Menger は学部生に教えることを楽しんでいたらしい。彼はその経験が研究活動にも刺激を与えるという信条を抱いていたそうである。Feynman も同じような意見だったことを何か(「ご冗談でしょう,ファインマンさん」シリーズのどれか)で読んだことがある。第一級の研究者の中にはそういう意見の人が少なくないのかもしれない。

そのサイトで紹介されている "What is x?"(引用文献は Math. Gazzette の "What are x and y?" と題する論文らしいが)という高校生向けの講義の一端は,"CALCULUS" の付録で垣間見ることができるようだ。

本が届くまでの間に,"CALCULUS" よりも前に出版された "Algebra of Analysis" (1944) を web 上で見つけたので,少しページってみた。

中身はタイトルからほぼ想像された通りのものだったが,ある点では想像を超えていた。

タイトルから連想したのは,誰かが van der Waerden の言として引用していたのだったか,「初等微積分は極限の概念を使わず,完全に代数的な取り扱いが可能である」という主旨の言葉である。確かに,sin(x) を微分したら cos(x) になる,というような基本的な関数の導関数のリストと,和や積,合成に関する微分規則さえいったん認めてしまえば,導関数を求めたり,不定積分を求めるといった計算は,極限のことなどすっかり忘れて代数的に行うことができる。
そういう意見を知ったときは,そりゃそうだけど,極限概念を取り扱うのが微分積分の理論の真髄だからなぁ,と腑に落ちない気分がしたが,その後,基本的な関数の導関数のリストを「アトム」,和や積,合成関数の微分規則を「ルール」と名づけて,それらをきちんと身に付けさせるという方針を自ら編み出したのだが,それは微分計算の代数的取り扱いを前面に押し出す立場そのものだという気がしなくもない。

"Algebra of Analysis" では,2つの関数を組み合わせて新しい関数を生み出す演算として,和と積,そして合成の3種類を基本的な演算 (tri-operational algebra) として位置づけている。そこでは,関数の記号が,出力の数値と徹底して分離される。あくまでも関数に対する演算という姿勢が貫かれているのである。

その姿勢は "CALCULUS" で踏襲されている。Menger は本の写しを Einstein に送ったそうだが,Einstein はそれを絶賛したとのことである。とはいえ,手放しの賞賛というわけではなく,「ちょっとやり過ぎだと思うが」と懸念も表明したらしいが。

あまりにも斬新過ぎて Menger の試みは受け入れられずに終わってしまったそうだが,歴史の中に埋もれさせるには惜しいのではないかと思う。ちゃんと読んで,活かせるところは活かしたいと思う。

僕も関数を独立して取り扱おうと思ったことはあったが,Menger ほど徹底してその路線を追及したことはなかった。この本からは非常に多くのことを学べそうなので,わくわくしている。
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