ところが凡人の私たちには数学を理解するには「実例で考えなさい」と言われてもどういう風に考えたら実例が考えられるのかまったくわからない。
実例を考えられるためには数学そのものがわかっていなくては実例もかんがえられないという堂々めぐりとなる。
ただ、そういう風な指示はいつでも心にとめて数学の本を読むことを心掛けるしかない。そうすれば、いつかは自然にそういうことができるようになるかもしれないなどと頼りない期待にかけるしかないのだ。
そういえば、優れた数学者だった故池田峰夫(元京都大学教授)さんからポントリャーギンの『連続群論』(岩波書店)のセミナーを受けたときにも彼からいつでも「実例で考えなさい」との指示があったが、私を含めてセミナーを受けている学生は誰も実例で考えたりできているようではなかった。
そこが訓練された数学者と普通の学生との違いなのかもしれない。
そうだとすると数学を理解するということはやはり私たち凡人にとっては永遠のテーマなのかもしれない。
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