物理学会誌の最近号を見ていたら、小平治郎さんの訃報が載っていた。56歳だったという。まだ若い。
もう20年以上昔になるだろうか。牟田先生(広島大学学長)のグループに入れてもらって輻射補正の計算をしていたころ2週間に1度くらいの割りで広島大学に行っていた。その頃のグループ仲間の一人が小平さんだった。
訃報には摂動論的QCDの専門家という紹介がされていたが、その通りでいろいろなグラフの計算のときに疑問点があれば、小平さんに聞けばいいという感じがあった。いつか二通りの計算が一致しないので、聞いたことがあった。
その解決は結局自力で結果が違って見えるけれど同じものではないかという考えに至り、同じ結果を違った表現をしていたことを証明して終わったが、やはり小平さんは物理を深く理解しているという感じをもった。
いかにも研究者らしくいつも落ちついて見えた。昨年3月の愛媛大学の物理学会の素粒子論グループの総会で小平さんを見かけたのが最後となった。
このとき「KEKに今はいるのですね」と声をかけたらうなずかれた。優れた人は神に愛されて短命に終わることがあるようだ。
卒論を小平先生に担当して頂きました。南部さん関連の強い相互作用である漸近的自由性に関して指導して頂きました。
小平先生の思い出のエピソードですが。
講義の期末テストは教科書持ち込み可能で「暗記しても仕方無い、そんなの教科書見れば良いだけ、いかに使えるかが大事」と。研究室の噂ではお酒飲みながらセミナーしてたとか、大のお酒好き。これも噂ですが、風邪を拗らせて肺炎にかかったたけどお酒を飲みすぎて亡くなられたとか。小平先生が大学を去られる前に会話した印象に残った言葉が「これからはストリン(超紐理論)かな」と予言されてました。亡くなられた後、都内での物理学会に参加して、打上で大勢の研究者の方と食事会に行った時に、僕が小平先生に教わった事を伝えたら、皆が興味津津に質問してきて、また凄く羨ましがられました。小平先生ってスターで凄い有名人と言うか凄い人なんだなって思いました。ちなみに僕の高校の物理の恩師も大学院で小平先生に教わってた様です。温和でユーモアで熱心で人を惹きつける小平先生…生存してたらなと思います。
お酒が好きだとはまったく知りませんでした。
いつも冷静で落ち着いた方だなという印象しか持っていませんでした。今でいう電弱理論の摂動計算で二つの計算結果が違った結果になったので相談したのだったと思います。
そのときは小平さんを煩わすまでもなく、自力解決をしたのですが、なんでも本当に困ったら最後には小平さんに相談すれば、トラブルは解決するというような感じを持たせる方でしたね。
いい方に指導を受けましたね。思い出を大切にしておいてください。