西條敏美さんの「知っていますか? 西洋科学者ゆかりの地in Japan」という本を出版社から送って頂いた。
日本のいくつかの地で外国人科学者のゆかりの地があるというのは、普通には思いつかないアイディアであり、この書は西條さんの快心の書ではないだろうか。
その本格的な書評はいつかしたいと思うが、今回パスツールに関した話をしたい。パスツールは少年のときにさほど優秀と思われなかったそうだが、高等師範学校の出身というからいまから見れば、超エリートである。
日本で高等師範学校というと、東京高等師範学校とか広島高等師範学校を思いだして、その卒業生はエリートではあるが、超エリートの部類には入らないであろう(失礼、これらの学校の卒業生様)。
だが、フランスの高等師範学校はグランゼコールの一つであり、大学なんかよりも入るのが難しい学校であり、大学には高校(リセー)卒業後に受けるバカロレアに合格すれば、入試などないが、グランゼコールは特別の入試がある。
その入学成績の順位が気に入らないとかで、初めの年は入学をせず、次年度に再度入試を受けて4位だったので、納得して入学したというから、努力家である。1867年に、ソルボンヌ大学化学の教授となったとある。
パリのカルティエ・ラタンには確かにuniversit’e a la Sorbonneとファッサードに書かれた建物があり、フランスの事情に詳しい、詩人の西條八十氏などもソルボンヌ大学という語を使っているので、一般的な使い方かも知れない。
しかし、いまならパリ大学というべきではないのだろうか。鈴木信太郎監修の仏和辞典には1808年以来ソルボンヌとはパリ大学文学部と理学部だとある。
これなどはマリー・キュリーの卒業大学などもソルボンヌ大学といわれるが、これなどもuniversit’e a la Sorbonneの訳なのであろう。
もともとSorbonがパリに創設した神学大学をソルボンヌといったことから来ているらしい。
また、パスツールの像は東京大学の総合図書館にパスツールとユーゴーの像があり、その説明の中でDon de l'universit'e Paris,1933と書かれているとあった。
donという語を知らなかったので、donner(与える)と関係があるのだろうと見当をつけたが、仏和辞典を引いてみたら、贈物の意味だった。これはもちろん普通の日常生活で使う、プレゼントの意味で使う、cadeauとはちょっと重みが違う。
今朝、朝食の時にパスツーライズとは固有名詞が普通の動詞になった例だねといったら、妻が知らなかったので書くが、pasteurizeは英語の辞書によれば、「低温殺菌する、~にパスツール予防接種をする」こととある。名詞では低温殺菌法のことをpasteurizationという。