「小児科医60年」。 これはドイツ語のクラスでいつもご一緒の I 医師の書かれた本である。それを昨夜一部頂いた。まだ全部を読んでいる訳ではないが、何でも60年も続けるとはさすがに敬服である。
これは I さんが松山市医師会報に書かれたエッセイとかその他の関係された雑誌や会報に書かれた文章を集めたものである。京都大学医学部の卒業生であるので、インテリとしてはこの上もない知性の方である。
アメリカ留学時の経験等を含めてなかなか他では知ることのできないような知識や情報満載である。それに文章が上手である。
私も一方ならず文章にうるさいほうだが、読んでいて引っかかるところがない。普通の人が書いた文章だとこれは表現がどうだろうかと思われるところがままあるものだが、それがない。こういうことは実は簡単なようでありながら、とても難しい。
私なども毎日ブログを書いているが、後で読み返すとこれはしまったと思う文章が多く、気がついたときには修正をいつもしている。
だが、自分が前の文章を見ることはなかなかないので、インターネットで検索されて読まれたブログをさてどういう文章を書いていたのだろうと、その検索された履歴から、自分で読み返すことを行い、文章がおかしければいつも修正をしている。
だから、私のブログは前に読んだ方がまたもう一度読み返されたときに前とは細かなところでは違っているかもしれない。それくらいなかなかちゃんとした文章を書けない。
I 医師の場合には、医師である、お嬢さんがかなり綿密に文章をチェックをされるらしいので、凡ミスはなくなっているのかもしれないが、いつも文章を何度も読み返してそれでもミスがなくならない経験をしている身としては、やはりこれは文を書かれたご本人の文章を書く能力が優れていることを示すものであろう。
文章を書くという趣味はなかなか誰でも真似のできる趣味ではないが、一人だけ存じ上げている。それは私の高校の同級生S君の父君のS. S.先生であった。このS. S.先生は今治市では誰でも知っている、有名な外科の医師であったが、彼は東京大学医学部の卒業生であり、若いときにはベルリンに留学されていた。
私が高校生の頃にS君宅を訪ねたときにNHKのドイツ語の講座のテキストが机の上にあり、その講座を聞かれていると、S君から聞いた。これはドイツ語の力が少しでも落ちないようにとの努力をされていたのに違いない。そのことを聞いてその当時、英語でさえもあくせくしている身としては、なんてすごい方が世の中には居られるものだろうと、まったく別世界の人と感じた。
S先生は一時、同期生のS君が出版社を経営していたこともあって、その今治医師会報等に書かれた文章を集めた本を出版されたが、妹がS先生から著書を頂いたので、それを借りて読んだことがあった。
30代の中ごろの私には文章を書くことを趣味するなどということは想像すらできなかった。