コミュニケーション能力に優れていることが明日大統領に就任するオバマの特質であるという。どうもこういう話を聞くといつも恥ずかしくなる。というのは学生からの評価で話し方が下手だといつも書かれていたからである。
熱力学とか量子力学とかわかりやすくはない学問を教えてきたのだからそれは仕方がないとも言えるかもしれないが、そうとばかりは言い切れないところがある。確かに簡単なことでも説明が下手である。
授業はいつも考えに考え抜いて教えてきたのだが、相手のレベルに気を使わなかったかもしれない。しかし、これはカリキュラムのせいもある。学科では3年で教えたいことが軒並みにあるからという理由で本当は2年ではまだ数学的準備が十分ではない2年で量子力学を教えるようになったし、熱力学でも偏微分をどしどし使った。もっとも偏微分の説明はしたし、ごく少しだが演習もした。偏微分はそれほど難しいことではない。また、全微分の説明もしたが、これは自分にはわかっていても学生はあまりよくはわからなかった。
いまでも私の「基礎物理学」では偏微分こそ使わないが、べき関数の微分や積分はどしどし使う。そしてもちろんその説明もする。しかし、微分積分を習わなかった学生もいて、かなり不平が出る。微分積分を使わない、高校の物理の教え方は結局その微分積分の考え方を使っているだけで、微分積分の演算を使わないだけである。はじめにこの概念をマスターして、これらの演算をどしどし使った方が却ってすっきりしていることはいうまでもない。